ジャッキー・チェン初期の人気作『スネーキーモンキー 蛇拳』は、カンフー・アクションだけの映画じゃないのだ!

ジャッキー・チェン初期の人気作『スネーキーモンキー 蛇拳』は、カンフー・アクションだけの映画じゃないのだ!

日本がジャッキー・チェン・フィーバーに沸いていたのは、僕らの時代である80年代。『ロードショー』誌の「好きな俳優」投票で6年連続1位を獲得するなど、まさに僕らのスーパー・ヒーローだった。そのジャッキー・チェン初期の人気作といえば、『スネーキーモンキー 蛇拳』。カンフー・アクション満載の作品だが、人気の秘密はそれだけじゃないのだ!


ジャッキー・チェンという新しいヒーロー

 ジャッキー・チェンの『ドランクモンキー 酔拳』を初めて観たときの衝撃は今だに忘れられない。反プロレス系格闘技好きの僕にとってのヒーローは、大山倍達であり、ブルース・リーだった。空手やカンフーが世界最強だと思っていた。よくプロレスファンと口喧嘩になったものだ。そこに、ジャッキー・チェンが現れた。カンフーなんだろうけど、なんかブルース・リーとは違う感じ。はっきりいって男前じゃない。おまけに映画の始めのほうはあまり強くない。でも、それから運命的な師匠との出会いでどんどん強くなる。
 ブルース・リーのように始めから強いのもいいけど、段々と強くなっていく感じが新鮮で、映画が進んでいくと何か自分も一緒に強くなっていくように思えたのだった。
 そして、ジャッキー・チェンは、すぐに僕の、僕たちの新しいヒーローとなった。

劇中で強くなっていくジャッキーは、
僕たちの新しいヒーローとなった。

『スネーキーモンキー 蛇拳』がもつ変身願望を満たすカタルシス

 『スネーキーモンキー 蛇拳』の主人公は弱い。でも、そこが『ドランクモンキー 酔拳』よりも余計に面白いのだ。弱いものが強くなって悪い強者に勝つという筋書きは、少年のキラキラした変身願望、青年や大人たちの成功願望や勧進帳悪のカタルシスのようなものを満たしてくれたのだろう。そうして、多くの人がジャッキー・チェンのトリコになったのだ。
 『スネーキーモンキー 蛇拳』は、日本ではジャッキーの2作目の扱いである。劇場公開は、1979年12月1日。『ドランクモンキー 酔拳』の公開が、1979年7月21日。ちなみに、『スネーキーモンキー 蛇拳』の同時上映は松田優作の『処刑遊戯』。『ドランクモンキー 酔拳』の場合は、菅原文太の『トラック野郎・熱風5000キロ』。作品タイトルを見ると、ため息が出るくらい昔のように思える。まあ、実際、同時上映の主演である昭和の名優2人はすでに亡くなっているのだから、そう思えても仕方がない。

<物語>

 舞台は、清朝時代の中国。蛇形派、鷹爪派という拳法の二大流派が勢力争いを繰り返すなか、鷹爪派の凄腕拳士、上官(ウォン・チェンリー)は、蛇形派の拳士を次々と討ち取っていく。

 主人公の簡福(ジャッキー・チェン)は大道場の下男として働くが、師範代(ディ-ン・セキ)にこき使われ、稽古の殴られ役をやらされ、みじめな毎日を送っていた。

ジャーキー映画でお馴染みのディ-ン・セキ。
イヤーな役をかげんのいい感じに演じてくれている。

 そんなある日、簡福は町で老人を助ける。その老人は蛇形派の長老、白長天(ユエン・シャオティエン)だった。白は、簡福の散々な生活に同情し、蛇形拳を伝授する。

この師弟コンビがいい。
ユエン・シャオティエンは、『ドランクモンキー 酔拳』でも師匠役だった。

厳しい修行の中、
簡福はメキメキと上達していく。
修行シーンは、ジャッキー・カンフー映画の
見どころのひとつだった。

 簡福は、白に伝授された蛇形拳をマスター。そんな折、大道場の本当の大先生が帰ってくる。そして、道場破りで門下生を横取りした他の道場に、その大先生とともに乗り込む。大先生、筋肉モリモリの男は倒したものの、蟷螂拳の使い手には返り討ちにされてしまう。そこで簡福が登場。なんと簡福は蛇形拳のその使い手を打ち負かしてしまう。一躍、大道場のヒーローになる簡福だった。

 ところが、鷹爪派の凄腕拳士、上官にその姿を見られた簡福は、あっさりと負けてしまう。失意の中、自分の小屋に帰ってくると、猫がなぜかコブラに襲われている。しかし、猫は強く、コブラを一蹴。そこにヒントを得て、猫の動きを蛇拳に加え、オリジナルの拳法を体得する。

 そして、ラスト・ファイト・・・。

『ドランクモンキー 酔拳』同様、冷徹な悪役を好演しているウォン・チェンリー。なかなか憎らしい顔だ。

ここでいきなりコブラの存在も驚きだが、猫がこんなに強いことにもっと驚くが・・・。

「猫爪拳」研究中!

<キャスト&スタッフ>
簡福(チエンフー)・・・ジャッキー・チェン {石丸博也}
白長天(パイ・チャンティエン)・・・ユエン・シャオティエン {小松方正}
上官逸雲(シャンカンイーユン)・・・ウォン・チェンリー {津嘉山正種}
師範代・・・ディーン・セキ ・・・石天 {及川ヒロオ}
{ }内は、ゴールデン洋画劇場1982年4月10日放送制作版声優

製作 ウー・スーユエン 呉思遠
監督 ユエン・ウーピン 袁和平

『スネーキーモンキー 蛇拳』は、ジャッキーのカンフーだけでなく、ストーリー展開もなかなか!

 香港のカンフー映画というと、見ものはカンフー・シーンだけなんて言う人もいると思うけど、『スネーキーモンキー 蛇拳』は、意外とストーリーもよくできている(と思う)。意外というのは失礼だが、ジャッキー・チェンのキャラクターやカンフー・アクションだけでなく、ストーリーの面白さもあって、初期のジャッキー映画は人気があったのだと言えるかもしれない。
 もちろん、突然の猫とコブラの闘いなど、ツッコミどころとはあるにしても、タイプの違ういろいろなキャラを登場させ、飽きさせないストーリー展開があり(僕が飽きないのは好きだから?)、いちおう最後にどんでん返し的なものも用意し、作り手の意欲と誠実さ(褒め過ぎか)を感じるのだ。
 まあ、そんなの基本的なこと、と言われればそれまでだが、今回久しぶりに見直してそう感じた。とにかく、素直に楽しめたのだ。
 とはいえ、主人公簡福の天才ぶりはすごい。短期間でどんだけ上達、進化したんだよ! という無駄なツッコミをしたくなるほどだ。まあ、どの世界でも、本物の天才とはこういうものなのかもしれないが・・・(と凡人はため息をつく)。

この助っ人外国人の存在も意外と好き。
しかし、最後のやられ方はなかなか悲惨。

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