セルシオ誕生の背景
セルシオは元々アメリカ市場で、『レクサスLS400』として1989年初頭に先行販売された、トヨタの誇る最高級セダンです。
きっかけは急激な円高でした。1980年代のアメリカ市場では、安くて性能のいい日本車の人気が高まり販売も好調だったのですが、1985年のプラザ合意により、それまで1ドル250円前後だった円が急激に高騰し、1986年には160円に、1988年には120円にまでなり、輸出企業は大きな打撃を受けました。

レクサスLS400
トヨタも今までと同じやり方ではなく、利益率の向上を図る必要に迫られます。そこで目指したのが、ある程度の高値を設定でき、高い利益率も期待できる高級車市場への参入です。
そのためにはサイズもエンジンも今までの日本車にはない車の開発が必要でした。
クラウンは日本国内仕様なので、より大きく、よりパワフルな車の開発を始めました。そして欧州の高級車に負けないような高品質、完璧なほどの無振動と静粛性、ライバル他社に比べて低価格な、本物の高級車を目指して、トヨタの50年の技術の総力をあげて作られたのがこの車です。

レクサスLS400=日本名セルシオ
しかし当時アメリカでは、トヨタは安い大衆車というイメージのブランドでした。そこで《レクサス》という新しいブランドを立ち上げて、メルセデスやBMWに立ち向かうべく、高級車市場に挑んだのです。こうして『レクサスLS400』は誕生しました。

日本では、レクサスブランドを展開する事なくトヨタからの販売になり、『セルシオ』と名付けられて1989年10月に発売になりました。
初代セルシオ(F10型)

1989年、セルシオは「いつかはクラウン」を越える、個人で持つ最高の車として発売されました。ボディサイズはクラウントとセンチュリーの間で、センチュリーが主役が後部座席に乗るショファードリブンであるのに対し、セルシオは高級車でありながら運転をする人も楽しめる車というコンセプトのもと、ゆとりがあって力強く、スムースな走りを実現できる車になっています。
セルシオにはABCの3つのグレードがありますが、それぞれスプリングの違う、3種類のサスペンションがラインナップされています。そしてセルシオの走りで特筆すべきなのが静粛性。ヨーロッパのライバル社達が驚き、この車を買い求めて研究を重ねたそうです。
日本でもバブル景気の中、驚きと喜びをもって広く受け入れられ、発売直後から注文が殺到し、納車が1年待ちという事態になるほどの大人気となりました。
日本の高級車の歴史が書き換えられた瞬間ですね。
初代セルシオのスペック
C仕様Fパッケージ 6,200,000円
型式 E-UCF11
全長×全幅×全高 4,995×1,820×1,400mm
エンジン型式 1UZ-FE
最高出力 260ps/5,400rpm
最大トルク 36.0kg・m/4,600rpm
種類 V型8気筒DOHC32バルブ
総排気量 3,968cc
車両重量 1,790kg
10モード/10・15モード燃費 6.7km/L
1989年10月カタログより

2代目セルシオ(F20系)

2代目のセルシオは1994年に発売になりました。
円高がますます進み、93年には110円台を割りこみ、94年にはついに100円を割ってしまいました。そこでどうしても値上げが必要になり、フルモデルチェンジしたのです。
外観は初代とほとんど変わりがなく、素人目には違いが判らないほどです。エンジンも初代の1UZ-FEを引き継ぎますが、馬力とトルクは若干アップしています。ホイールベースが35mm伸びましたが、最小回転半径は20cmほど小回りが利くようになり、車重も初代の後期型よりも100kgほど軽量化されています。
初代の好評だったコンセプトを守りつつ、性能の向上を図ったモデルとなっています。

2代目セルシオのスペック
C仕様Fパッケージ 6,700,000円
型式 E-UCF21
全長×全幅×全高 4,995×1,830×1,415mm
エンジン型式 1UZ-FE
最高出力 280ps/6,000rpm
最大トルク 41.0kg・m/4,000rpm
種類 V型8気筒DOHC
総排気量 3,968cc
車両重量 1,800kg
10モード/10・15モード燃費 8.2km/L
1997年7月カタログより

3代目セルシオ(F30型)

2000年大幅にフォルムが変更となった3代目セルシオが登場します。今までのモデルから角が取れ、曲線の多い、流れるようなスタイルに変わりました。その結果CD値が、市販車として世界一の0.25を実現した、空力面でも名実共に世界最高の車となりました。
エンジンは4.3Lの3UZ-FEに変更され、パワー面での充実も図られています。それでいて環境性能も大幅に向上しています。
そしてこの3代目モデルが、セルシオとしては最終モデルになってしまいます。

3代目セルシオのスペック
C仕様Fパッケージ 7,500,000円
型式 UA-UCF31
全長×全幅×全高 5,015×1,830×1,470mm
エンジン型式 3UZ-FE
最高出力 280ps/5,600rpm
最大トルク 43.8kg・m/3,400rpm
種類 V型8気筒DOHC
総排気量 4,292cc
車両重量 1,870kg
10モード/10・15モード燃費 8.9km/L
2003年8月カタログより

セルシオの終焉と昇華
2005年トヨタは『レクサス』販売店の日本での展開を開始し、2006年5月セルシオは販売終了となり、『レクサス・LS』に移行しました。

日本車の歴史を変えるという意気込みで誕生したセルシオ/レクサスは、現在では高級車を選ぶ際、当たり前のように、BMWやメルセデス、ジャガーなどの中に選択肢として入ってます。

「最高という名のセルシオ」という名前は、レクサスブランドの中に飲み込まれてしまいましたが、レクサス・LSは今なお世界の高級車の基軸として君臨し続けてます。