実話を基に作られた映画『フェイク』
1997年に公開された映画『フェイク』(原題:Donnie Brasco)。
監督はマイク・ニューウェル。脚本はポール・アタナシオ。
同作は実話を映画化している。連邦捜査局(FBI)の特別捜査官が、マフィアのボナンノ一家に“ドニー・ブラスコ”の変名で6年間潜入。それにより彼らの大量摘発に貢献したジョー・ピストーネの実録手記に基づいて製作された。

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50代後半にさしかかったアル・パチーノと、30代を迎え、渋みが増してきた頃のジョニー・デップが共演。
冴えないチンピラ稼業を続けるしがないマフィアをアル・パチーノが好演。また、そのマフィアに正体を隠し、捜査を続ける若手捜査官をジョニー・デップが演じている。
この捜査官が罪悪感や家族への想いに苦しみながらも、なんとか平静を保ち、内部事情を収集していく様子が非常に切なくもあり、同作の見どころでもあった。

同作でアル・パチーノが演じたマフィアの“レフティー”ベンジャミン・ルッジェーロ(左)

口髭姿とリーゼントが決まってたジョニー・デップ
≪あらすじ≫裏社会で活躍する捜査官と冴えないマフィア

潜入捜査官のドニー・ブラスコ(ジョニー・デップ、左)と”万年下っ端”の冴えない中年マフィアの“レフティー”ベンジャミン・ルッジェーロ(アル・パチーノ、右)

街中を 肩で風を切って歩くレフティ。彼の後をついていくドニー
フェイク (映画) - フレッシュアイペディア

マフィアの面々

ドニーはフロリダでナイトクラブの経営をレフティーに持ちかける。

ドニーの妻マギー(アン・ヘッシュ)

ドニーは事ある毎に家に電話を入れる

レフティーの麻薬中毒のバカ息子が入院した際も、フロリダから駆け付けたドニー
マフィアの日常は危険と隣合わせである。やがてドニーもレフティーから身内のために殺しを依頼される。この頃、FBIはドニーの状況や追い詰められた精神状態を考慮し、潜入捜査を中断することを促す。しかし、依頼を無視し、組織に背を向ければ、兄貴分であるレフティーが”掟”により、消されることが分かっているドニー。切羽詰まったドニーは、レフティーにマフィアの世界から洗ってやり直して欲しいと頼むが、聞く耳を持ってもらえない。

捕らえる者と捕らわれる者。またそれを知る者と知らない者。
そして、殺しの依頼を遂行すべく、二人は夜の港でクルーザーでくつろぐ男に忍び寄る。レフティーに銃で仕留めるようせかされるが、なかなか撃たず時間を稼ぐドニー。すると、数多くのFBIが現場に現れ、二人は逮捕される。この時、囮役の捜査官であるドニーの仕事は終わった。6年に及ぶドニーとレフティーの生活にピリオドが打たれたのである。
その後、釈放され、家のソファに座るレフティー。電気もつけず、ひとりで暗い表情のレフティー。そして、何か覚悟を決めたようにレフティーは、妻に「彼に伝えてくれ。お前だから許せる」と告げ、家を出ていく。
その頃、ドニーを長年演じたジョー・ピストーネは、潜入捜査の功績をFBIから表彰されるが、浮かない顔。空虚感を漂わせるが、以降ドニーとレフティーの人生は交わることはなかった。

6年もの歳月、命懸けで捜査したドニー
男同士の信頼関係を感じさせる名言

全幅の信頼を得ていたドニー。その存在感が分かるシーン

妻に「彼に伝えてくれ。お前だから許せる」と告げるシーン
作品データ
監督 マイク・ニューウェル
脚本 ポール・アタナシオ
公開 1997年
配給 コロンビア映画、東宝東和
時間 127分
出演 アル・パチーノ、ジョニー・デップ、マイケル・マドセン、アン・ヘッシュなど

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「フェイク」というタイトルが全てを言い当てている。
二人の男に紡がれる決して許されない友情。仁義。愛。
かけがえのない人を失う喪失感が見事に表現された名作だった。