ガゼールってどんな車?
1965年から発売されている日産シルビアが、1979年に3代目となるモデルチェンジをした際に誕生した、シルビアの姉妹車です。
シルビアは当時の日産サニー店、ガゼールは日産モーター店で販売されました。

名前の由来はカモシカの一種「ガゼル」から。エンブレムの形からもその様子が窺えますね。販売期間は1979年から1986年の7年間。あまり人気車とは言えなかったため、現在ではその姿をまず見ることはありません。

初代ガゼール S110型

1979年に3代目シルビアの姉妹車として誕生したガゼールは、1800ccと2000ccの2ドアハードトップとハッチバックで、6種類のタイプが発売されました。
いずれもシルビアとは外観的には大きな相違はなく、フロントグリルとテールライトが少し違う程度。内装ではハンドブレーキレバーに本革を使用してあります。
当時の車として日本で初めてドライブコンピューターを搭載しています。トリップメーターやストップウォッチ、ナビメーター、計算機が付いていて、走行距離や所要時間などを計算できるようです。

また、車内の設計と同時に開発された専用のオーディオコンポや、夜の車内を彩るトータルイルミネーションシステムなど、居心地の良い、ガゼールのドライブを楽しむためのシステムが豊富に搭載されています。
当時の若者向けのデートカーを意識した造りなのかもしれませんね。
テレビドラマでの活躍

初代ガゼールを語る上で忘れてはならないのが伝説のドラマ「西部警察」。石原裕次郎さん扮する小暮課長の愛車のオープンカーとして有名ですね。
残念ながらあのオープンタイプは販売されておらず特注品となりますが、裕次郎さんが颯爽とガゼールに飛び乗る姿に憧れを抱いた方も多くいるのではないでしょうか。


初代ガゼールのスペック
ハードトップ 2000XE-Ⅱ
全長×全幅×全高 4,400×1,680×1,310mm
エンジン型式 Z20E
最高出力 120ps/5,600rpm
最大トルク 17.0kg・m/3,600rpm
種類 OHC水冷直列4気筒
総排気量 1,952cc
車両重量 1,105kg

2代目ガゼール S12型
2代目ガゼールは1983年、シルビアが4代目にモデルチェンジすると同時に発売されました。ボディタイプは2ドアクーペと3ドアハッチバックの2種類、エンジンは1800ccと2000cc。

シルビアとの違いは初代と同程度で、フロントグリル、テールランプの他、ボディカラーがそれぞれ独自のものがあったり、一部のグレード(2000ccのN/A)がガゼールでは採用されなかったりすることで、差別化が図られました。
当時流行のリラクタブルヘッドライトを取り入れ、しかも日本初のヘッドライトにワイパーがついているという凝った造りに。また先代に引き続いてエレクトロニクスの装備やオーディオも充実し、ガゼールならではのドライブを楽しむというコンセプトは継続しています。
特筆すべきなのは、日本初のキーレスエントリー。当時のキーレスと現在のではだいぶ様子は違うものではありますが、今当たり前のように使われているこの技術の始まりが、日産ガゼールからだったというのは、正直驚きを禁じえません。
DOHCターボエンジン搭載

S12型の特徴は何と言ってもDOHCターボエンジンですね。
軽量なボディーに190馬力ものハイパワーターボを搭載したガゼールは、当時の日本車のなかでも、もっとも速い車のひとつでしたが、FJ20のエンジンを搭載する際に、薄いシェイプのボンネットにエンジンが収まりきれずに、結局ボンネットに穴を開けて、フードバルジ型のボンネットにするという荒技で、この局面を乗りきりました。

搭載するエンジンによって、車の顔たるボンネットの形状が違うというのも斬新ですが、このフードバルジ型のフォルムが、よりガゼールらしいという印象を与えることになりました。
2代目ガゼールのスペック
クーペターボ RS-X
全長×全幅×全高 4,430×1,660×1,330mm
エンジン型式 FJ20ET
最高出力 190ps/6,400rpm
最大トルク 23.0kg・m/4,800rpm
種類 DOHC水冷直列4気筒ターボ
総排気量 1,990cc
車両重量 1,170kg
10モード燃費 10.2km/L

生まれた時代とタイミング
1986年の4代目シルビアのマイナーチェンジの時に、ガゼールの販売は終了してしまいます。そして1988年、S13型5代目シルビアが誕生すると、空前のヒット作になるのです。

何ということでしょう。同じく販売が低迷していた姉妹車シルビアが、ガゼールがいなくなった途端、日本を代表するスポーツカーになったというのは皮肉な話です。
以降シルビアの姉妹車は、ガゼールではなく180SXに取って代わられる事になります。

軽量ボディーにDOHCターボ搭載だけではなく、車体設計の段階で組み込まれたオーディオシステム、車内ライトのイルミネーション、キーレスエントリーなど、最新のテクノロジーの粋を詰め込んでいたガゼール。

スポーティーでワイルドな運転を楽しむだけでは飽き足らない、優雅な居住性をも追及したガゼールは、少しばかり誕生するのが早すぎたのかもしれませんね。
現在日産では、ミドルタイプのスポーツカーと呼べる車が長らく販売されておらず、寂しい限りですが、もしも街中でガゼールに出逢う機会があったら、その勇姿を眼に焼き付けておいてくださいね。
