『おもひでぽろぽろ』は、その背景美術において、細部にまでこだわってリアルに描き込まれていることが高い評価を得ました。
ところが男鹿さん自身は「描き込み過ぎた」と反省したそうです。
こうして常に妥協せず、次の高みを求めているところが「ジブリの絵職人」と呼ばれる所以なのかもしれません。
『もののけ姫』森を描く・空気を描く
1997年に公開された『もののけ姫』では、前代未聞の「5人の美術監督」が起用されました。
もちろん男鹿さんもそのひとりです。
鈴木プロデューサーによると、作中の舞台が北から西へ移動していくお話なので、「エミシの村」「たたらば」「シシ神の森」など、担当するところは美術監督の出身地で選んだのだそうです。
「自分の生まれた地域、育った地域の空気こそ、その人が一番表現できる」という理由でした。
秋田出身の男鹿さんが、ブナの原生林に覆われたエミシの里山を担当しました。
そしてそれを描くために、ひとり白神山地に取材に出かけたのだそうです。
白神山地
男鹿和雄の名言 厳選集|名言DB リーダーたちの名言集
朝霧の沸き立つ山々
男鹿さん自身の背景
ここまで男鹿さんの描く背景美術の世界を見てきましたが、最後に、男鹿さん自身の背景にふれる絵本について紹介したいと思います。
アニメーションの背景を手掛ける方はたくさんいますが、男鹿さんの描く絵にはなぜか、懐かしさややすらぎを覚え、惹かれるものがあります。
なぜなのでしょう。
それについて、日本美術史家で、東京大学・多摩美術大学名誉教授 辻 惟雄(つじ のぶお)さんがこう述べられています。
『秋田、遊びの風景』
カジカ釣り、タケノコ掘り、どじょうすくい、キノコ採り、田んぼの野球、模型飛行機。
運動会のお弁当、なべっこ遠足、夏の食卓、毛鉤釣り、川遊び、干し餅。
その内容は多岐にわたっていて、読んでいると本当に気持ちが温かくなってきます。
男鹿和雄出版記念 秋田、遊びの風景展