念のためゲームブックのあらましをざっくり説明すると、文章の途中に選択肢があり、 選んで読み進むとストーリーが変わっていく本を読み進んで遊ぶゲームのこと。 本のクセして、サイコロ振ったり、メモをとったりすることでより遊びこめるようにした本格化も多々あり、 お子様層を中心に、80年代大ブームを巻き起こしたもんだった。あの頃は、他にあまり手頃な遊び道具もなかったしねえ。
ところで最近、このゲームブックについての話を、ネット世界を中心にしばしば目にしないだろうか。 時代が一巡して、ゲームブックがささやかながら注目されだしている様子なのだ。 新作まで出版されていたりするのだから、タダ事じゃない。
そこで、そのスジの関係者にご登場頂き、懐かしのゲームブックを振り返ってみたしだいである。 ちなみにオレも、80年代からゲームブック作りにずっと関わっている中のヒトだったりもする。 そのあたりをかわれて書いているんですよ。
コレクター登場


*今回紹介した本のリストは、コラムの一番最後にあります。
懐かしのゲームブック名作14選
火吹山の魔法使い
・ご存じ、日本でのゲームブックブームを牽引した、スティーブ・ジャクソン、イアン・リビングストンの2氏による記念的作品。初版はサイコロ付きだった。

・いい意味で汚らしい、生活感のあるファンタジーにカルチャーショックを受けたものが多い。
・難易度は高くないが、最後の宝箱を開けるところでカギが足りずにむせび泣いたプレイヤー多数。
・後年扶桑社版から、表紙を変えて、文章もちょっとだけ修正したものが再発売された。部数が少ないのでプレミアがついている。

・ゲームブックの始祖みたいな扱いをされている。ブームの火付け役だし、あるい意味始祖なんだけど、ゲームブックそのものはこれ以前にも存在していた(コラム後半参照)。
ドルアーガの塔
・いまだに大人気の国産ゲームブックの金字塔。1階1階マッピングができる。当時、マッピングは面倒ではなく楽しい行為だった。

・少しずつ強くなっている、RPG的な楽しさがある。
・ゲームブックオリジナルの魅力的な仲間が登場し、そのスピンオフが作られた。(「パンタクル」)
・創土社から復刊したバージョンでは、第3巻は約50パラグラフの加筆があり、とあるフロアはまるまる違う構造になっている。
ソーサリー!
・1巻で張られた伏線が4巻で回収されるなど、全4巻の壮大なストーリー。各巻ごとに趣向が凝らされており、飽きさせない作りになっている。

・1巻は丘を越えて町を目指す。自然が舞台。
・2巻はスラムよりタチが悪い、凶悪な町を探索する。
・3巻は平野を通過する自然が舞台。敵の間諜(7匹の大蛇)を倒す必要があり、緊張感を加味。
・4巻は砦が舞台で。ラストダンジョンらしく、ワナや危険なモンスターが満載。
・読者自身が魔法を暗記していないと、ゲーム中でも使えない、独自の魔法システム。
(魔法を覚えなくていい戦士ルートもあるが、実はそっちのほうが難しい)

・創土社から復刊もされた。オトナ風味の表紙はこれはこれでアリ。
ルパン三世
・「ルパン三世」をゲームブック化した人気シリーズ。19冊続いた。これとは別に、小説も出ていた。

・自分はルパンなものもあれば、ルパンを欺こうとする主人公を操作するものもある。
・当時のゲームブックは往々にしてそうだが、版権物なのに残酷な死に様も多い。
・「暁の第三帝国」「黄金のデッド・チェイス」「密林の追撃」の3冊だけ、電子書籍化している。
展覧会の絵
・他と一線を画す、叙情的なストーリ重視のゲームブック。

・ムソルグスキーの名曲「展覧会の絵」をモチーフにゲームにしたもの。1枚1枚、異なる絵の中を冒険し、主人公が鳥になることもある。
・感動的なラストも相まって、「ウォーロック(当時国内で刊行されていたゲームブック専門誌)」の人気ランキングでは1位にとどまり続けた。
・ちなみに作者森山安雄こと平田真夫氏はシミルボンでも活動中。
死のワナの地下迷宮

・領主が、冒険者を殺すために作った娯楽のダンジョンを攻略するダークな世界観。
・まともに遊んだらクリアできないくらい高い難易度。
・他の挑戦者が敵になったり味方になる、ただダンジョンを攻略するだけではないストーリー性。

・後年、ホビージャパンから、ゲームブックを知らない人向けのラノベ版も発売された。
イラストがラノベ調なだけでなく、1部の男性を女性化するなどのアレンジがされている。ただし、難易度はそのまま。
ドラゴンファンタジー
・読者に語りかける独特の口調、しゃべる剣と冒険するバディーもの、ブリティッシュジョーク、これらが軽快に混ざりあっている。

・真面目に遊ぶのがバカバカしいくらいテキトーな難易度。なのでよく死ぬ。死すらも楽しい。ゲームブックのモンティー・パイソンと言われることも。
・死を意味する14(へ行け)はこの本が元ネタ。必ず死ぬととばされるセクションナンバーなのだ。

・ちなみに、この本のイラスト(日本語版)はオレ、HUGOが描きましたよ。いまだに外人だと思われていることがありますよ。スマンことですよ。
・こちらも創土社から「グレイルクエスト」という原作タイトル通りに名を変え復刊された。けれどオトナの事情で中断中。
グーニーズ
・人気映画のゲームブック化。公開前に台本ベースで制作が開始しており、決定稿にはないイベントが再現されている。
・一部の時間制限があり、緊迫した展開が楽しめる。
・折紙とかギミックてんこ盛り。

・おまけで2人用のボードゲームも収録されている。2枚のボードを使って地下と地上を行き来する、無駄に豪華な趣向。
・作者は外人名がついているけど日本人で、これまたHUGO……ま、いいや。
バック・トゥ・ザ・フューチャー
・グーニーズと同時期に出た人気映画を国産ゲームブック化。あのときこんな選択をしたら、どう展開が変わるのか、映画を見たら知りたくなるifを具現化。正当派ともいうべきオーソドックスな作り

・現代に無事戻ってきたときに兄弟が増えているエンディングは語り草になっている。(主人公が、過去に若い母とゴニョゴニョとかまで!)
シャーロック・ホームズ 10の怪事件

・当時の新聞を読んだり、当時のイギリスを再現した町で情報収集したりして、犯人を推理するミステリー。圧倒的な情報量とコンポーネントの楽しさは他に類を見ない。

・海外ではボックスで、ボードゲームとして売られていたが、日本ではゲームブックの体裁になっている。ドイツゲーム大賞受賞作でもある。
・値段もそれなりなったので、ゲームブック好きより、大人のミステリー好きなどに好まれ、日本シャーロックホームズ協会でも賞を授与された。
・3巻まで発売され、番外編的に簡易ゲームブック付きのボードゲーム「切り裂きジャックを捕まえろ」なんてのも発売された。
機動戦士ガンダム 最期の赤い彗星

・人気アニメ「機動戦士ガンダム」のゲームブック。原作が終了した直後の、永遠のライバル・シャアを主人公にしている。
・原作アニメは打ち切られたので、カットされたシナリオやモビルスーツ(メカ)があるが、この作品は、登場できなかったモビルスーツにスポットが当たっており、いまでいうスピンオフのような体裁になっている。
・シャアがいちいちポエムを語るのでムダにカッコいい。
・ラスボスはアニメにも登場した、意外な人物です。
・新書版がケイブンシャ、文庫版がバンダイ出版から出たもの。ゲームブックブーム中に権利が移った珍しいケース。
縄文伝説

・縄文時代を舞台にしたゲームブック。こんなのもあったんだよねえ。
・縄文土器の作り方や、当時の様子が学べるという、知育的な面がある。
・冒険を通じてサバイバルの知識を学ぶこともできる。
・ゲームとしても面白く、ちゃんと攻略ルートを確立し、必要なアイテムを入手しないとクリアできない。
清里ペンション村妖精狩り

・ブーム当時にわずかにあったエロ枠の1つ。
・清里のペンションは、ナウなヤングにとってバカウケだった。
・もちろん、ナンパが目的のゲームで、色々な女の子とにゃんにゃんできる。
・選択によって、同じ女の子でも男性経験の豊富さが変わるのなど、意外な展開が楽しめる。
・昭和のエロス漂う表紙が今となってはぐっとくるが、これに限らずエロゲームブックは実用的ではない。
きみならどうする?
・世界で最初のゲームブックといわれているシリーズのひとつ。

・分岐小説といえるスタイルで、攻略ではなく、シナリオの多変性を楽しむ。
・日本では6冊しかでなかったが、海外ではいまでも新作が作られ、なんと、映画化も予定されている。(続報がないんだけど)
ほかにも。こちらもシミルボンに参加なさっている思緒雄二氏が手がけた、 和歌などの和の要素が詰まった稀有な和ファンタジー「送り雛は瑠璃色の」や、 乱歩賞作家・鳥井加奈子氏の「悪夢」シリーズ3部作等々、ファミコン系のゲームブックもいっぱいあったぜ、 なんてツッコミたい部分もいろいろあるとは思う。はい十二分にわかっております。 懐かしさのとっかかりとでも考えてください。
なお、今回の選者ドロシー!氏は、シミルボンでゲームブックのレビューも載せているので、 興味が出た方はそちら方もどうぞ。
紹介した本のリスト
書籍タイトル名 | 著者 | 出版社 |
火吹山の魔法使い | スティーブ・ジャクソン 他 | 社会思想社 |
魔宮の勇者たち | 鈴木直人 | 創土社 |
ルパン3世 戦慄のサブウエイ | 草野直樹(著)/スタジオ・ハード (編集) | 双葉社 |
展覧会の絵 | 森山安雄 (著)/伊藤弥生 (イラスト) | 創土社 |
死のワナの地下迷宮 | I・リビングストン(著)/喜多元子(著) | 社会思想社 |
デストラップ・ダンジョン | I・リビングストン(著)/空中幼彩(イラスト)/あっと(イラスト) | ホビージャパン |
暗黒城の魔術師 | ハービー・ブレナン(著)/フーゴ・ハル (イラスト, 翻訳) | 創土社 |
グーニーズ―アドベンチャー・ゲームブック | ハリー・リンド (著) | 二見書房 |
バック・トゥ・ザ・フューチャー | 安田 均 (著)/ TTG (著) | 東京創元社 |
シャーロック・ホームズ 10の怪事件 | ゲイリー・グレイディ (著)/各務三郎 (翻訳) | 二見書房 |
機動戦士ガンダム 最期の赤い彗星 | スタジオ・ハード (編集)/ 山口 宏 | 勁文社 |
縄文伝説―アドベンチャー・ゲームブック | 小林秀敏 (著) | 光文社 |
清里ペンション村妖精狩り | 水谷翼(著) | 成美堂出版 |
大宇宙の冒険―きみならどうする? | モントゴメリー(著) | 学習研究社 |