ジム・ジャームッシュ監督、ジョニー・デップ主演の映画『デッドマン』
「ミステリートレイン」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「ナイト・オン・ザ・プラネット」のジム・ジャームッシュ監督が、相変わらずの独特なオフビートタッチで描いた西部劇。
主人公がいつの間にか死に向かうというタイトル通り(デッドマン)の不思議な一作。森を舞台にしたロードムービー。
映画のためにジャームッシュが設立したと言われている「12ゲージ・プロ」が製作。
音楽は米国を代表するロック・アーティスト、ニール・ヤングが担当している。

映画『デッドマン』
主人公・ウィリアム・ブレイクを演じるのは俳優としてステップアップしていく過程にいた頃のジョニー・デップ。
本作ではインディアンが登場するが、彼自身が親族の出自(彼の母方の曾祖母は純血のチェロキー族であり、父も同じくチェロキー族の血を引く)からインディアンの問題に関心を持ち、1997年にはマーロン・ブランドを招聘し映画「ブレイブ」を監督していることもあってか、本作ではインディアンとの掛け合いの芝居が妙にマッチしており、好演している。

日本版のパンフレット
また、本作は18世紀イギリスの詩人であるウィリアム・ブレイクの詩と思想に対するオマージュ作品であり、登場人物たちの名前や多くの台詞がブレイクの作品に由来している。
主人公の名がウィリアム・ブレイクということからも想像が容易である。

詩人ウィリアム・ブレイク
映画『デッドマン』 作品データ
【監督】 ジム・ジャームッシュ
【脚本】 ジム・ジャームッシュ
【製作】 ディミートラ・J・マクブライド
【撮影】 ロビー・ミューラー
【音楽】 ニール・ヤング
【配給】 ミラマックス
【出演】 ジョニー・デップ、ゲイリー・ファーマー、ランス・ヘンリクセン
【時間】121分
【公開】1995年
映画『デッドマン』に関する動画
あらすじ

”死人とは旅をせぬほうがよい アンリ・ミショー”

汽車に乗り、遠路はるばる就職の面接にやってきたウィリアム・ブレイク(もしくはビル・ブレイク。役者はジョニー・デップ )。

序盤は冴えない男として描かれたウィリアム・ブレイク。

セル(ミリ・アヴィタル)の部屋に御呼ばれするウィリアム・ブレイク。

銃の扱いもままならないながらも、なんとか命からがら逃げだす。

ノーボディ(ゲイリー・ファーマー)は倒れて意識のないウィリアム・ブレイクを介抱する。

ノーボディは、先住民のはぐれ者で、白人の教育を受け育った。文学に精通している。

殺し屋を雇い、ウィリアム・ブレイクを追わせるディキンソン(ロバート・ミッチャム、奥の白髪男性)

自分が”お尋ね者”になっている張り紙を見つける。

インディアンの様相を呈してきたウィリアム・ブレイク

森を彷徨い、文明的な生活、意識から遠のいていく。

拳銃の腕前が飛躍的に向上し、殺しもいとわない。
デッドマン - 作品情報・映画レビュー -KINENOTE(キネノート)

河を下っていくカヌー。

段々と死期が近づいてきている。

さも現世との別れかの様に、大地から離れていく印象的なラストだった。

モノクロの映像が、生と死が入り組んだ世界観を象徴的に演出していた本作。
物語冒頭、汽車のシーンで白人たちがバッファロー狩りをする。
それはかつて実際に行われていたそうで、本作に出演しているインディアン・ノーバディ役のゲイリー・ファーマー(実際にネイティブアメリカン)が同作のパンフレット内で「白人たちがバッファローを撃つシーンは、バッファローは当時のインディアンの食糧を奪うために、実際、バッファロー狩りの乱獲と言うより殺戮があった」と述べている。
そうした史実を踏まえて本作を見直すと、より劇中のインディアンの死生観が際立って見えるかも知れない。
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