「逃亡者」(アリス・1979年4月5日)
アリスがオリコン1位を獲得した「チャンピオン」に続いて、1979年4月にリリースしたシングル「夢去りし街角」のB面に収録された曲。
筆者は子供ながらにこれを聴いて「女はメキシコ」「酒ならテキーラ」を強烈に意識したものである。
「逃亡者(3分19秒)」
作詞:谷村新司/作曲:矢沢透/編曲:石川鷹彦
「夢去りし街角」のB面が「逃亡者」
こちらには「逃亡者」の貴重なライブ音源
知っている人も知らなかった人も、まずはこの陽気な一曲を聴いていただきたい。
西部劇の痛快な悪党どもを思わせる「逃亡者」
曲の冒頭、テンション高鳴るメロディーからの冒頭句は、この歌の世界を一発で明確にしてくれる。

アメリカ⇒メキシコへの逃亡がテーマの曲「逃亡者」
冒頭の「たどり着いたぜ」、続く二の句の「オサラバ」。
これらの歌詞は、この歌の主役が実に陽気な西部劇の悪党ではないかと、聴く者にイメージを与えてくれる。
まるで「明日に向かって撃て!」のブッチとサンダンスのようなノリ。
西部劇の名作「明日に向かって撃て!」
以降の歌詞にも「浴びるほどの酒」「酒場女とバカ騒ぎ」とノリノリな悪党どもの笑顔が浮かんでくるようだ。
最高に明るいサビ、そしてシェリト・リンドとは
”女はやっぱりメキシコ♪ 酒ならやっぱりテキーラ♪”
シェリト・リンド (Cielito Lindo)はメキシコで古くから親しまれている歌。
1882年にキリノ・メンドーサ・イ・コルテス (Quirino Mendoza y Cortés)により作られたとされる。
メキシコを象徴する歌であるとされ、特に国外においてメキシコ人が集まるとこの歌を歌って同郷である事を確認することがよくある。FIFAワールドカップなどの国際的なスポーツイベントの際には、メキシコチームを応援する曲として歌われる。ただし、多くのメキシコ人はコーラスの部分と最初の2小節ないし4小節分しか歌詞を覚えていない。
がしかし、曲が進むにつれて状況が明らかに・・・
ここで冒頭部の歌詞が意味を成してくる。
「あと1マイル」、、、そう、まだ逃げ切れてはいないのである。
聴く者に散々陽気な世界をイメージさせておきながら、ここからの歌詞は灼熱の砂漠を命からがら逃げきろうとする悪党の姿を映し出す。
「地獄のララバイ」「Hell Angels」など、次々と飛び出す不吉なキーワード。
こっちからすれば、もう逃げ切ってしまえと願う一心だが、ここで「逃げ切れない」などと弱音を吐く主人公。
しまいには
おい、あと1マイルなんだから死ぬ気で走れよ!
女と酒が待ってるんだろ!!
そんな気持ちで聴いてしまう後半の歌詞。恐るべし、「逃亡者」である。

まるで「明日に向かって撃て!」のラストシーンのように・・・
ちなみに、この曲のどこにも主人公が「悪党」である明確な記述はないことを申し添えておくとしよう。