孤高の天才キース・エマーソンはエリック・クラプトンと同い年。2016年の春、非業の死を迎えた

孤高の天才キース・エマーソンはエリック・クラプトンと同い年。2016年の春、非業の死を迎えた

ポスト・ビートルズの座を名実ともに獲得した:エマーソン・レイク・アンド・パーマー。結成後5年間をめまぐるしく疾走し、次々とロック史の記録を塗り替え、世界マーケットで人気の座を欲しいままに。活動後期は、レコード会社のマーケティングミスのお蔭で失速。活動停止、解散を繰り返すなかで、各々ソロ活動や新たなバンドで活躍。


この曲は、2012年NHK大河ドラマ=平清盛の主題曲として採用された

ELPセカンドアルバム=タルカス

1971年明け早々、ELPはセカンドアルバム:「タルカス」の録音準備に入る。一方、各地でコンサートを行ない、ムソルグスキーの「展覧会の絵」のライブ録音にも勤しむ。問題はどちらを先にリリースするかであったが、タルカスを5月から6月にかけて英米でリリース。このタルカスは、メロディメーカー誌で前年首位をキープしていたレッド・ツェッペリンを抜いて、首位に君臨。ELPの音楽性が世間で認められることとなった。そこで、問題になるのは「展覧会の絵」。タルカスのリリースによって宙に浮いていたが、本物録音盤をさしおいて、海賊版(ブートレッグ)が次々と出回り関係者は困惑。同年11月に正式リリース版が出ることに。この「展覧会の絵」の最後にはチャイコフスキーのくるみ割り人形が収録され、大ヒットした。

原曲は、ロシアの作曲家ムソルグスキーのピアノ曲。管弦楽曲版は後にラベルが編曲。ELPはこれをベースにしたか。

展覧会の絵

感極まってか、狂気の沙汰かキーボードをぶっ壊すステージライブ

狂気のライブ・パフォーマンス

1972年になると早速3作目のスタジオ録音に着手。6月には「トリロジー」としてリリースされる。7月に入って初来日。後楽園(現東京ドーム)や甲子園などで野外コンサートに。折しも台風の影響で、大雨の中の圧巻ライブ。電子機械のシンセサイザーの調子も悪く、キース・エマーソンは激昂して、鉢巻をして、キーボードに膝蹴り、馬乗りしたあげく、短剣や日本刀を突き立て、斧でぶち壊す挙に出た。キースがキーボード界のジミヘンドリックスといわれる所以である。これで、観客がのらない訳はない、というところで、興奮した観客がステージの雪崩出し、あえなくライブは中止に。同じ年の米国ロックバンドのGFK:グランド・ファンク・レイルロードの「後楽園」雨のライブは、テープを回しまくって、メンバーは口パクをやっていたというから、英米彼我の差が出たと言えよう。それをアジア人を舐めたアメリカンバンドの差別的行為かどうかは定かでない。ELPはキースの破天荒の行為により、聴衆の喝采を浴びた。アッパレというしかない。

燃えるフェンダーのストラトキャスター

演奏中に、自分のギターに火をつけ燃やすジミ・ヘンドリックス

忍び寄る疲労の影;難解路線に転向か

忍び寄る暗黒のコンセプト、転がる石のように

観音開きのジャケットで、開くと神秘的な女性が現れる

アルバム=恐怖の頭脳改革

1973年に入ると、メンバーの超多忙の裏の疲労も垣間見えた。衝撃的な題名である「恐怖の頭脳改革」という観音開きジャケットのアルバムを出すが、米メロディ・メーカー誌の人気投票では、前年のトップを同業プログレッシブ・ロックのイエスに譲り、キーボード部門のトップも、キース・エマーソンからイエスのリック。ウェイクマンにとって代わられた。何となく忍び寄る黒い影を感ぜずにはいかなくなる年。筆者も大学受験の準備に負われ、ELPをひとたび忘れてしまった。

活動停止の裏に

ディープパープルとの確執とマーケティング上の問題

「トリ」はどっちだ、ELPかDPか

翌1974年には、ディープ・パープルなどの台頭により、徐々に人気に陰りが認められるエピソードもある。同年3月の米「カルフォルニア・ジャム」でヘッドライナー(主役)をどちらが取るかで揉め、最終的にはELPとなったが、ディープ・パープルの意図的な長時間演奏の影響で、「トリ」のELPの演奏時間は極端に短くせざるを得なくなったという。この頃からメンバーの活動疲れに反して大作主義が打ち出される。3枚組の「レディス・アンド・ジェントルマン」のリリースである。これまで筆者も全てアルバムを所有しているが、さすがに3枚組となると普通小遣いでは買えなくなる。バンドもこのアルバムを最後に、活動停止に追い込まれる。

活動再開とレコード会社の焦り、無謀な大作主義に

Works四部作のマーケティング失敗

4部作 Works

1977年の復活版「ELP4部作」は何と4枚組。普通のロックフリークが買える価格ではない。1974年の3枚組といい、1977年4部作といい、完全にマーケティングを間違えた所産である。ELPとしての多忙な活動に嫌気がさした各人がソロアルバム志向に走り、4枚のうち各々のソロ・アルバムにバンドとしての収録をオーケストラ入りで追加するという安易な企画であった。このオーケストラ入りのきかくでライブツアーも企図されたが、散々な結果となり失敗に終わる。さらに「ELP4部作の続編である「作品2番」がリリースされるが、12曲中の大半が、古い録音曲で構成されている、という。ここまで来ると、結成時以来のファンをとても大事にしているとは言えない。音楽マーケティングの崩壊といわれても否定できないだろう。

関連する投稿


高校時代に嗚咽涙した「エピタフ」は、キングクリムゾンのデビューアルバムから

高校時代に嗚咽涙した「エピタフ」は、キングクリムゾンのデビューアルバムから

キング・クリムゾンは、ELPやイエス、ピンク・フロイドとならんで「プログレッシブ四天王」の一角を形成。 結成から半世紀が経とうとしているが一貫してオリジナルメンバーはギタリストのロバート・フィリップただ一人。 つまり実は、ロバート・フィリップがオーナーの前衛ロック・セッション・バンドが正体ではないか。


最新の投稿


プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

新日本プロレスの“100年に一人の逸材”棚橋弘至氏による著書『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』が2025年12月18日にKADOKAWAより発売されます。引退が迫る棚橋氏が、26年の現役生活で培った視点から、プロレスの魅力、技の奥義、名勝負の裏側を徹底解説。ビギナーの素朴な疑問にも明快に答え、プロレス観戦をさらに面白くする「令和の観戦バイブル」です。


ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

小学館クリエイティブは、ウルトラマンシリーズ60周年、『小学一年生』100周年の節目に『学年誌 ウルトラふろく大全』を11月28日に発売しました。『ウルトラQ』から『ウルトラマン80』までの学年誌・幼児誌のウルトラふろく200点以上を網羅的に掲載。組み立て済み写真や当時の記事も収録し、ふろく全盛時代の熱気を再現します。特典として、1970年の人気ふろく「ウルトラかいじゅう大パノラマ」を復刻し同梱。


伝説のプロレス団体 UWF40周年記念イベント“無限大記念日”開催!

伝説のプロレス団体 UWF40周年記念イベント“無限大記念日”開催!

伝説のプロレス団体『UWF(ユニバーサル・レスリング・フェデレーション)』が、設立40周年を記念し、特別イベント「無限大記念日」を書泉ブックタワー(東京・秋葉原)にて開催します(2025年12月24日~2026年1月12日)。第1次UWFの貴重な試合映像や控室、オフショットなど、4,000枚以上のアーカイブから厳選された写真が展示されます。復刻グッズや開催記念商品も販売され、当時の熱狂が蘇ります。


グラニフ×『幽☆遊☆白書』初コラボ実現!幽助、蔵馬、飛影など全21アイテム登場

グラニフ×『幽☆遊☆白書』初コラボ実現!幽助、蔵馬、飛影など全21アイテム登場

株式会社グラニフは、TVアニメ『幽☆遊☆白書』との初コラボレーションアイテム全21種類を、2025年12月2日(火)より国内店舗および公式オンラインストアで販売開始します。主人公の浦飯幽助をはじめ、桑原、蔵馬、飛影のメインキャラクターに加え、戸愚呂、コエンマなど欠かせないキャラクターをデザイン。11月26日より先行予約も開始され、ファン必見のラインナップです。


全長20cmの迫力!1/18スケール『国産名車コレクション』創刊

全長20cmの迫力!1/18スケール『国産名車コレクション』創刊

アシェット・コレクションズ・ジャパンは、隔週刊『1/18 エクストラスケール 国産名車コレクション』を2026年1月7日に創刊します。全長約20cm、1/18スケールのダイキャスト製で、日本の自動車史を彩る名車を精巧に再現。ボディラインやエンジンルーム、インパネなどの細部ディテールにこだわった「エクストラ」なコレクション体験を提供し、マガジンでは名車の開発秘話や技術を深掘りします。