三國志を題材にした本格的RPG
今日紹介するのは、1991年にカプコンから発売されたファミコンソフト「天地を喰らうII 諸葛孔明伝」だ。
このソフトに懐かしさを覚えるオールドファンの方も多いのではないだろうか。
同名のアーケード版とは別のゲーム

「天地を喰らう」には同じ名前のアーケードゲームがあり、ファミコン版と同じくカプコンから提供されていた。
こちらは横スクロール型アクションゲームとなっていて、ファミコン版とは大きく異なるので気をつけよう。
三國志ゲーとしてはめずらしいRPG

三國志のゲームといえば、コーエーテクモゲームスから発売されているシミュレーションゲーム「三國志」シリーズや、「三國無双」などのアクションゲームを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
しかし、この「天地を喰らう」は三國志モノとしてはめずらしいRPGとなっている。
そのゲーム内容も、ダンジョン攻略やボス戦などのRPG要素がふんだんに盛り込まれた本格的な物だ。
原作は本宮ひろ志の「天地を喰らう」?

「天地を喰らう」は1983年から週刊少年ジャンプに連載された本宮ひろ志さんの漫画である。
画像を見ても、そのキャラクターは本宮ひろ志さんの絵柄そのものだ。
本宮ひろ志の漫画「天地を喰らう」とは

本宮ひろ志さんの「天地を喰らう」は、三國志を題材としながらも、魔界や天界、鬼などが登場するファンタジーな世界観だ。
劉備と孔明が天界へ行き、竜王の娘と交わって願いを叶えてもらうところから物語はスタートする。
竜王の娘と交わった人間はなんでも願いを叶えることができ、劉備は肝っ玉を、孔明は知識を手に入れることとなった。
しかし、もうひとり曹操孟徳が竜王の娘と交わっており、彼は天下を手に入れることを願ったのだ。
そして彼らは人間界で戦いを繰り広げ・・・・・・というストーリーなのだが、劉備たちの戦いが本格化する前に連載は終了してしまった。
ゲーム版では本格的な三國志が描かれる
ファミコン版の「天地を喰らう」は、本宮ひろ志さんの漫画と同じ名前のゲームではあるが、本作には天界や魔界などのオリジナル要素は一切登場せず、三国志演義を元にした本格的なストーリーが展開されていく。
「天地を喰らう」という名が付いてはいるが、本宮ひろ志さんにキャラクターデザインを依頼しただけの別物だと思った方がいいかもしれない。

独特のバトル要素

「天地を喰らうII 諸葛孔明伝」の大きな特徴のひとつに、独特のバトルシステムがある。
基本的な部分はドラゴンクエストをはじめとするターン制RPGのバトルと同じ要領だが、それ以外の違いについて見ていこう。
HPは兵士数

「天地を喰らう」では、バトルにおけるHPの役割を果たすのが兵士数だ。
武将がそれぞれ率いている兵士の数が武将のHP代わりとなっており、攻撃や回復などを駆使して相手の兵士数をゼロにすることを目指す。
気をつけたいのは、この兵士数は部隊の攻撃力にも大きな影響を与えるということ。
率いている兵士の数が多ければ多いほど一度の攻撃で大勢の敵兵士を倒せるし、兵士の数が少ないほど倒せる敵の数も少ないというわけである。
一般的なRPGなら敵の戦力を削ぐために各個撃破が基本戦術となるが、このゲームでは兵士数が多い武将をそのまま残しておくことは危険なので、従来とは違った戦略が求められるのだ。
軍師を含めて7人まで編成可能

本作のバトルでは、プレイヤーは最大7人のパーティを組み、戦闘に参加するのは5人までという形になっている。
7人の中から軍師を設定することができ、その能力に応じて使用できる策略(他のRPGでいう魔法)やSP(策略ポイントのことで、他のRPGでいうMP)などに違いができる。
つまり、パーティ内の誰を軍師に任命するのかがバトルにおける重要なポイントとなるのだ。
軍師は強制的に隊列の最後尾に配置されることになり、パーティが6人以上いる場合は戦闘に参加する5人からは外れることになる。
いくらパーティ内で知力が高くとも、武力なども高い万能型の武将を軍師にすると戦力ダウンになりかねないのが難しいところだ。
陣形を駆使して戦え!

今作では軍師の重要な役割のひとつに、陣形というものがある。
陣形には攻撃力を上げたり、策略の成功率を上げたりする効果があるため、この陣形の選び方次第で戦略も大きく変化するのだ。
任命した軍師によって選べる陣形が変わるため、軍師の重要性はいやが上にも増すこととなる。
劉備軍を率いて天下統一を目指せ

「天地を喰らうII 諸葛孔明伝」は董承の曹操暗殺計画の場面からスタートする。
劉備軍を天下統一に導くことが最終的な目的だ。
関羽の千里行や赤壁の戦いなどの有名なエピソードも満載だぞ。
基本的なストーリーラインは三国志演義

漫画版の「天地を喰らう」とは違い、本作のストーリーは三国志演義をベースにしている。
ただし、劉備軍が主人公として描かれているため、演義とは若干の違いが見られるのも特徴だ。
赤壁の戦いでは十万本の矢の調達や東南の風を起こすことに加え、主に周瑜の手柄だった蔡瑁の失脚も孔明たちが遂行することになる。
終盤は独自のストーリー展開

劉備軍を主人公にして三国志演義と同じ物語を辿ると、最後はバッドエンドになってしまうのが必然である。
そこで、この作品では劉備軍が曹操を討ち、司馬懿の謀叛を平定して天下統一を果たすという展開になっていく。
知る人ぞ知る「反三国志演義」を彷彿とさせるストーリー展開だ。
横山光輝「三国志」のパクリ?
本作は「天地を喰らう」という本宮ひろ志さんの漫画をタイトルとしておきながら、どういうわけか横山光輝さんの「三国志」と同じセリフが使われていたりする。
下の画像をご覧いただきたい。


なんと、全く同じ文章が使われているのだ!
このファミコン版「天地を喰らうII 諸葛孔明伝」は1991年に発売されたゲーム。
一方の横山光輝さんの「三国志」は1971年に始まり、1986年に連載終了した漫画だ。
超有名な2つの作品で同じ文章が使われているのに全く問題にならなかったあたり、おおらかだった当時の時代背景がうかがえる。
歴史に残る名作
当時、三國志のゲームといえば光栄のシミュレーションだった。
そして現在も、コーエーテクモゲームスのシミュレーションゲームやアクションゲームを第一に思い浮かべる人が多いだろう。
しかし、本格的RPGである「天地を喰らうII 諸葛孔明伝」は、プレイした人に間違いなく衝撃を残す作品だった。
これからも、RPG好きの三國志ファンにはぜひプレイしてもらいたいレトロゲームである。