作品紹介
1990年6月公開。川中島の合戦を描いた角川春樹監督映画。
原作は海音寺潮五郎。主に歴史上の人物を取り上げた作品が多い。
今までの川中島の合戦を描いた作品は、武田信玄側からの視点で描いたものがほとんどですが、海音寺の「天と地と」は上杉謙信側から描いた珍しい作品となっています。
原作では、謙信の生涯を描いています。
映画は、上杉側の兵士を「黒」、武田側の兵士を「赤」色に統一するというアイデアで、「赤と黒のエクスタシー」のキャッチコピーで一躍有名となりました。
また、巨額(50億円以上)の制作費を使用したこと、6万人以上のエキストラを投入したことでも大きな話題になりました。

天と地と | Movie Walker
川中島の合戦見取り図

女武者 八重討ち死に
越後の龍《謙信》対 甲斐の虎《信玄》


赤と黒のエクスタシー


小室哲哉
この映画の音楽を担当したのが小室哲哉。
当時も人気があったのですが、これ以降の1990年代、「小室ファミリー」が歌謡界を席巻していきます。
風林火山と毘沙門天
信玄の軍旗 風林火山

謙信の軍旗 毘沙門天

豪華な出演者たち
榎木孝明(上杉謙信)

津川雅彦(武田信玄)

夏八木勲(山本勘助)

津川・信玄とのツーショット
渡瀬恒彦(宇佐美定行)

浅野温子(乃美)

その他にも、財前直見、室田日出男、伊武雅刀、風間杜夫、岸田今日子など豪華俳優陣が脇を固めて、見ごたえのある役どころを演じています。
主役の移り変わり
実はこの映画の主役、上杉謙信役は、当初、渡辺謙が演じて実際に撮影がスタートしたのです。しかし、1989年カナダでの撮影中に白血病を患い降板、角川氏がオファーした故松田優作もスケジュールが合わず断念。急きょオーディションを行い、榎木孝明に決定したといういきさつがあります。(松田優作さんはこの年に亡くなりました)
渡辺 謙

莫大な制作費
制作費50億円という金額は、純邦画での場合トップに位置する額です。
日米合作での「クライシス2050」や「ファイナルファンタジー」、3部作の20世紀少年を除くと「敦煌」(1988年公開)とほぼ同額首位となります。
どちらもバブルの時代に制作されてますねぇ。やはりバブルの金力なのでしょうか。
作品の批評
制作費やエキストラ動員数等々公開前から話題になっただけに人々の期待が大きかったのでしょうか、公開後、意外と厳しい批評が相次ぎました。
「意味不明なシーンが多く、ストーリー性がない」
「人物描写が薄く、感極まらない」
「ラストシーンの上杉軍に対する武田軍の動きは不自然すぎる」等々
大量エキストラを導入した合戦シーンも様々な意見が飛び交い、評価の分かれる作品となったのです。
裏話 配給会社の変更
当初の配給会社は東宝の予定だったのですが、直前になって東映に変更されました。配給会社の変更はあり得る話なのですが、東宝は夏に向けてのラインアップ調整を余儀なくされます。わずか半年の期間でフジテレビとタイアップして急遽作ったのが「タスマニア物語」。
フジテレビの積極的なPRも功を奏し、これが大ヒットとなりました。
タナボタとはこのことですね。
18年の時を経て蘇る甲冑

川中島古戦場の信玄と謙信
1969年に川中島古戦場・八幡原史跡公園に建立されました。
馬上から刀で斬りかかる謙信、床几(しょうぎ)に腰かけたまま軍配団扇(ぐんばいうちわ)で受け止める信玄、今にも動き出しそうな躍動感がヒシヒシと伝わってきます。
