【ふしぎの海のナディア】 エヴァンゲリオンの庵野秀明監督版「天空の城ラピュタ」!?

【ふしぎの海のナディア】 エヴァンゲリオンの庵野秀明監督版「天空の城ラピュタ」!?

『ふしぎの海のナディア』は、庵野秀明、樋口真嗣、貞本義行、鷺巣詩郎等が制作に参加。こののち、1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』で集まる顔ぶれによる作品です。


ふしぎの海のナディア

『ふしぎの海のナディア』は、1990年にNHK総合にて放送されたテレビアニメ。

ジュール・ヴェルヌによるSF小説『海底二万里』及び『神秘の島』を原案とし、総監督は『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明、監督は『ガメラ』特技監督の樋口真嗣、キャラクターデザインは『サマーウォーズ』の貞本義行で、音楽を鷺洲詩郎が担当。こののち、1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』で集まる顔ぶれによる作品です。

ふしぎの海のナディア

【あらすじ】
時は、1889年。花の都パリでは、万国博覧会が華やかに開催されていた。

世界中の科学や文化の粋が集まったそのイベントに、人々は来たるべき20世紀、科学万能の時代の到来を予感し、夢見ていた…。そんな科学の進歩は地球を急激に狭くしつつあったが、まだまだ未知なるロマンと冒険があふれた時代でもあった。

そんな中、世界中の海で謎の巨大生物“海獣”が出没し人々を恐怖に陥れていた。その海獣によって父親が行方不明になってしまった発明好きの少年・ジャンは、万国博覧会の会場で謎の少女・ナディアに出会う。

ナディアに一目ぼれしたジャンは、ひょんなことからナディアとともに冒険へと旅立つことに――。

彼らを待うける運命とはいったい?

宮崎駿監督作品『天空の城ラピュタ』と同じ原案

天空の城ラピュタ

この作品は、宮崎駿監督作品の天空の城ラピュタと同じ原案を下敷きとしています。

元々は、1980年代初頭に宮崎駿がNHKでのTVシリーズ作品として準備した“未来少年コナン2”といった位置付けの『海底世界一周』という企画でしたが、この企画は実現せず、宮崎駿は後にスタジオジブリで『天空の城ラピュタ』として作品化しました。

一方、元の企画そのものはNHKに残され、1980年代後半、様々な会社を通じて『新世紀エヴァンゲリオン』でお馴染みのアニメ制作会社「ガイナックス」が請け負うことになり、ガイナックス側スタッフが『海底世界一周』企画案をベースに様々なアイディアを追加していった結果、『ふしぎの海のナディア』が生まれたのです。

そのため、“謎の青い石”や“超古代文明の設定”、第1話のナディアが追われるシーンなど「ラピュタ」に類似したストーリー展開があります。

ナディアの持つ青い宝石「ブルーウォーター」

シータの持つ青い石「飛行石」

【制作秘話!】放送打ち切りの危機を湾岸戦争が救う!

■安すぎた制作費

『ふしぎの海のナディア』の制作は、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』で驚異的なクオリティを見せたガイナックス。

まだ『新世紀エヴァンゲリオン』を制作する以前の1988年、ガイナックスの経営状態は大変な危機に瀕していました。(同社が初めて手掛けた大作アニメ『王立宇宙軍 オネアミスの翼』は、内容的には一定の評価を得たものの、興行的に苦戦を強いられ、巨額の赤字を出しました。何とかこの赤字を解消しようとSFロボットアニメ『トップをねらえ!』を制作しますが、ますます赤字が膨らんでいたのです。)

「このままでは会社がつぶれてしまう!」と焦ったプロデューサーが、ある日大きな仕事を取って来ます。それが、天下のNHKが放映する連続テレビシリーズ『海底世界一周』(後の『ふしぎの海のナディア』)の企画で、有り得ないほど安いギャラで仕事を請けてしまいました。提示された金額を検証した結果、全39話のアニメなのに、なんと26話分の予算しかありませんでした。

悩んだ庵野監督は、「思い切って真ん中の13話分を捨てよう!」と決断。物語で重要なパートとなる前半と後半に上手いアニメーターを集結させ、中盤は海外(韓国)に丸投げし“一切社内では手を出さない”と決めました。

■韓国の酷すぎる作画クオリティ

どんなに酷い作画が上がってきても目をつぶる、と決心したものの、いざ現物が上がってくると、想像を絶する完成度の低さにスタッフ一堂顔面蒼白。悲惨な状況を見るに見かねたアニメーター達が自主的に修正を申し出るものの、多少の手直しでは全く追い付くはずもなく現場は大混乱。中でも、第27話と28話の劣悪ぶりはいまだに語り草になっているほどの凄まじさで、庵野監督自身も「これを全国放送で流して良いものか…?」と真剣に悩んだという。

韓国の作画

日本の作画

そして、ついに第34話「いとしのナディア」に至っては、作画が目も当てられないほどメチャクチャな出来映えだったため、ストーリーの大半をPV風の挿入歌で埋め尽くすという、テレビアニメ史上空前絶後の斬新すぎる構成に。

視聴者はもちろん業界関係者も茫然自失の第34回は、本名を出すのが嫌だったのか、別名義でのスタッフクレジットが散見されました。

・作画監督「空母そ・そ・そ・そ」(庵野秀明の別名義)
・演出「岡本悲八」(編集の薩川昭夫の別名義)

■限界を超えたスケジュールを湾岸戦争が救う

韓国からの酷い作画を修正するため、現場では慢性的な作業遅延が起き、放送不能寸前の状態にまで追い込まれていました。

放映日が目前に迫り、誰もが諦めかけたその時、イラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸戦争が勃発。臨時ニュース番組の影響で放送が一ヶ月休止されるという異常事態が起きましたが、この放送中断のおかげで巻き返しに成功しました。

後に、ガイナックスの社長だった岡田斗司夫は当時を振り返り語っています。

「もしもあの時戦争が起きなければ、“ナディア”を完結させることはできなかったでしょう。」と。

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