映画「レインマン」の概要
サヴァン症候群とは
「レインマン」のあらすじの前に、映画の中で重要な位置を占める、サヴァン症候群について理解していると、より映画の内容が分かりやすくなります。
ダスティン・ホフマン演じるレイモンドは、このサヴァン症患者で自閉症の障害があります。トム・クルーズ演じる弟のチャーリーは、兄の後見人になり、遺産の半分を自分のものにしようとして、恋人にも去られてしまいます。

兄レイモンドと弟チャーリー
「レインマン」のあらすじ
高級車のディーラーをしているチャーリーのもとに、家を飛び出してから音信不通だった父の訃報が届きます。経営が思わしくないチャーリーは、遺産を当てにして父の葬儀に出かけますが、古い車とバラの木だけが遺され、他の遺産は全て信託預金として誰かのものになっていました。
納得のいかないチャーリーが調べていくと、遺産の相続人はレイモンドという男性でした。

経営がうまくいかず、破産寸前のチャーリー
レインマン(1988年/アメリカ) : 映画の感想を綴るブログ
レイモンドは、チャーリーが会ったことのない兄でした。自分にも遺産を受け取る権利があると考えたチャーリーは、レイモンドの後見者になろうと、レイモンドを誘拐同然に施設から連れ出すのでした。
その姿を見たチャーリーの恋人スザンナは愛想を尽かして一人で帰ってしまい、チャーリーとレイモンドの2人旅が始まります。

2人で旅を始めたチャーリーとレイモンド
フォトギャラリー - レインマン - 作品 - Yahoo!映画
レイモンドが飛行機を怖がるため、自動車での移動をすることになりますが、泊まったホテルの部屋がいつもの自分の部屋と違うことで、パニックを起こして暴れだしてしまいます。毎日決まったことを、決まった手順で行うことで、落ち着きを保てるのです。エレベーターなどの狭い場所も、人に触れられることも、パニックの原因になってしまいます。そんなレイモンドに、最初は戸惑うばかりのチャーリーでしたが、朝食をとるために入ったレストランで、レイモンドの記憶力や数字の強さなどに気付きます。そして幼いころのことも思い出していました。

徐々に心が通い合っていくチャーリーとレイモンド
他人同然に生きてきた兄弟――自閉症の兄と自由奔放な弟の出会いによって変化する人生「レインマン」 Addict allcinema おすすめ映画レビュー
チャーリーが幼いころ、雨が降るとレインマンが来て歌を歌ってくれると、楽しみにしていたことがありました。レインマンとは、幼すぎたチャーリーには言えなかった、レイモンドのことでした。レイモンドがパニックを起こしてチャーリーを傷つけることのないように、父がレイモンドを施設に預けることにしたのでした。
幼いころに大好きだったレインマンとレイモンドが同一人物だったことと、愛情を受けたことがないと思っていた父の、自分に対する愛情を知り、チャーリーの気持ちは少しずつ変わっていきます。

戸惑いながら旅をするチャーリーとレイモンド
映画をつなげて観るブログ : 『レインマン』への道
途中ラスベガスについたチャーリーとレイモンドは、レイモンドの才能を活かして、カジノで大儲けをします。レイモンドはカジノで出会った娼婦のアリスに一目ぼれをして、デートの約束をします。デートのために、チャーリーはレイモンドにダンスを教えます。人に触れられることが苦手なレイモンドも、アリスのために必死でダンスを覚えますが、約束の時間にアリスは現れませんでした。
チャーリーのもとに戻ってきたスザンナは、事情を知りレイモンドを慰め、レイモンドとダンスを踊ります。

ダンスの練習をするチャーリーとレイモンド
レインマン (1988) ( 映画レビュー ) - 365日映画Days - Yahoo!ブログ
チャーリーの暮らすロサンゼルスに到着した2人を待っていたのは、父の管財人のウォルター医師でした。レイモンドを勝手に連れ出したチャーリーは、審問会にかけられます。遺産目当てで連れ出したものの、今は純粋にレイモンドと暮らしたいと言うチャーリーに、レイモンドも一緒に暮らしたいと話しますが、レイモンドが一番安心する場所は、施設の自分の部屋でした。お互いに心が通いながらも、別の道を歩くことになるチャーリーとレイモンドでした。

心が通い合うチャーリーとレイモンド
トム・クルーズ : 晴れたらいいね〜
「レインマン」の登場人物
レイモンド・バビット

レイモンドを演じるダスティン・ホフマン
映画『レインマン』を見てきました。 ( 映画レビュー ) - Blog版こころフォーラム - Yahoo!ブログ
チャーリー・バビット

チャーリーを演じるトム・クルーズ
映画『レインマン』フォトギャラリー - シネマトゥデイ
スザンナ

スザンナを演じるヴァレリア・ゴリノ
レインマン 自閉症兄との交流 評価A': nozawa22
ウォルター・ブルーム

ウォルター医師を演じるジェリー・モレン
レインマン 自閉症兄との交流 評価A': nozawa22
「レインマン」の日本版予告動画
「レインマン」の原作
作家のバリー・モローが、キム・ピークという人物の能力に驚き、小説を書き上げました。テレビの打ち合わせで面会した際にインスピレーションを受け、キム・ピークや、彼以外のサヴァン症候群患者のエピソードが、レイモンドの人物設定に盛り込まれました。チャーリー役のオファーを受け、脚本を読んだダスティン・ホフマンは、チャーリーではなく、兄のレイモンドの役を希望し、弟のチャーリーの成長をメインとしたストーリーができあがりました。
「レインマン」のモデル、キム・ピーク
「レインマン」のモデルとなったのは、実在の人物キム・ピークです。テレビに出演し、その驚異的な記憶力を披露しました。

キム・ピーク親子とダスティン・ホフマン
動画で見るサヴァン症候群
「レインマン」の公開までは、人と接することを苦手としていましたが、大勢の人の前で講演をしたり、話しかけたりすることもできるようになりました。
ダスティン・ホフマンも、役作りのために、キム・ピークやほかのサヴァン症候群の患者の何人かと面会しています。
「レインマン」のモデルとして有名になっても、キムの生活は変わらず、毎日図書館であらゆる本を読み、記憶していく生活を続けました。

テレビで放送された際のキム・ピーク親子
「レインマン」の映画は、専門家が監修し、サヴァン症候群患者の特徴が、比較的忠実に描かれています。
「レインマン」の舞台化
日本での舞台化
2006年、世界で初めて日本で舞台として上演されました。
チャーリーは椎名桔平、レイモンドを橋詰功が演じ、2007年に再演されました。

2006年初演時のポスター
today200602

2007年再演時のポスター
Get Lifted:nomovienolife - livedoor Blog(ブログ)
イギリスでの舞台化
2008年アポロシアターで舞台化されました。
チャーリーをジョシュ・ハートネット、レイモンドはアダム・ゴッドリーが演じました。
脚本:ダン・ゴードン、演出:デイヴィッド・グリンドリー
「レインマン」のテーマ
トム・クルーズの映画と言えば、アクションや派手な演出というイメージですが、日常の小さな事件を積み重ねて、愛に飢えていたチャーリーが再生していく様子を淡々と描いている「レインマン」も、トム・クルーズの代表作と言えるでしょう。
現在は日本でも自閉症や発達障害について、ようやく少しずつ知られるようになりましたが、20年以上前に専門家の監修のもとに、自閉症やサヴァン症候群の人物を描いた作品が出来ていたということに、驚きを感じます。障害があるかどうかではなく、一人の人間としての人と人との関わりというものを考えさせられた映画です。