「ラスト・エンペラー」とは
「ラスト・エンペラー」のあらすじ
映画の始まりは終戦後のハルビン駅
1950年のハルビン駅の洗面所で、自殺を図った溥儀は、監視人により命を助けられました。意識が遠くなる中で、皇帝として即位する直前の幼いころを思い出していました。
西太后に皇帝に指名され、3歳で母親から離され紫禁城に連れてこられた溥儀は、家臣たちにかしずかれながらも、しきたりと地位に縛られ、許されたこと以外は何一つ思い通りにすることができずに育っていきます。

西太后が溥儀を皇帝に指名する場面
ベルナルド・ベルトルッチ監督「ラスト・エンペラー」(The Last Emperor)|シネマの万華鏡
成長した溥儀と周囲の変化
紫禁城の外では辛亥革命により清朝は終わり、共和制国家の中華民国に変わっていましたが、政府の温情により紫禁城の中だけはそのままの生活が許されていました。紫禁城の中には多くの先帝の妃たちや宦官など、宮廷の中でしか生きられない人々がいました。
溥儀は紫禁城にやってきた弟の溥傑と会い、共に過ごすようになります。皇帝だけが着ることのできる黄色の衣装を弟が着ているのを見て、兄弟げんかになりますが、弟から他に洋服を着た皇帝がいると告げられ、初めて自分の立場を理解したのでした。

成長した溥儀
あの人は今・・・J.L:かおり箱:So-netブログ
紫禁城ではしきたりどおりのお妃選びが行われ、皇后と側室の2人が選ばれました。家庭教師だったイギリス人のレジナルド・ジョンストンから、紫禁城の外の世界の知識や常識を教えられ、信頼関係を築いていきますが、政変により紫禁城を追放されることになります。

紫禁城を出される溥儀と皇后、側室の3人
09年2月29日 「ラストエンペラー / ベルナルド・ベルトルッチ」(DVD) ( 映画祭 ) - 東京散歩研究 - Yahoo!ブログ
大日本帝国との接近
家庭教師のジョンストンは英国大使館に溥儀らの庇護を求めますが、応じたのは大日本帝国だけでした。日本との急接近を皇后は危惧しますが、溥儀は清朝復活の夢を捨てきれませんでした。
日本により建国された満州国の皇帝として即位しますが、第二次世界大戦の終結と日本軍の敗戦により、ソビエト軍の捕虜となった溥儀と溥傑は、シベリアに抑留されてしまいます。

満州国の皇帝に即位した溥儀
ベルナルド・ベルトルッチ監督「ラスト・エンペラー」(The Last Emperor)|シネマの万華鏡
終戦後の抑留と政治犯収容所の日々
シベリアの抑留を解かれ、共産主義国になった中国に送還された溥儀は、政治犯の収容所に入れられ、自己批判を強いられます。何年もの収容所生活の後、特赦により収容所を出所した溥儀は、庭師として植物園で働いていました。文化大革命のなか、収容所の所長が紅衛兵に罪人として引き回されているのを見つけ、かばおうとしますが、助けることはできませんでした。その後、溥儀は入場券を購入して、かつて暮らした紫禁城に入場します。

政治犯収容所で尋問を受ける溥儀と収容所の所長
★★★★☆[映画] ラストエンペラー – The Last Emperor (レビュー・感想・解説・ネタバレ)
「ラスト・エンペラー」の登場人物
愛新覚羅溥儀

溥儀を演じるジョン・ローン
ラストエンペラーのジョンローン | ガールズちゃんねる - Girls Channel -
皇后 婉容

婉容を演じるジョアン・チェン
フォトギャラリー - ラストエンペラー - 作品 - Yahoo!映画
家庭教師 レジナルド・ジョンストン

レジナルド・ジョンストンを演じるピーター・オトゥール
ラストエンペラー(1987年) ( 俳優、女優 ) - ペンペンな日々 - Yahoo!ブログ
大日本帝国陸軍大尉 甘粕正彦

甘粕正彦を演じる坂本龍一
09年2月29日 「ラストエンペラー / ベルナルド・ベルトルッチ」(DVD) ( 映画祭 ) - 東京散歩研究 - Yahoo!ブログ
この他にも、日本軍関係者や医師の役で、日本人俳優が出演しています。
監督ベルナルド・ベルトルッチ

監督のベルナルド・ベルトルッチ
ベルナルド・ベルトルッチ - Wikipedia
「革命前夜」、「ラストタンゴ・イン・パリ」など、さまざまな意味での問題作を多く制作しています。「ラストエンペラー」での紫禁城での即位式の場面は、映画史に残る名シーンとも言われています。

溥儀の即位式のシーン
ラストエンペラー NO.1:1からの英会話
日本版の劇場予告動画
テーマ音楽は坂本龍一が担当

テーマ音楽担当の坂本龍一
坂本龍一 - Wikipedia
「教授」という愛称でおなじみですが、多くの映画音楽も担当しています。他のアーティストへの楽曲提供も多くあります。最近体調不良のため、活動を休止していましたが、2015年に山田洋次監督の「母と暮らせば」で活動を再開しました。
「ラストエンペラー」の原作
溥儀の自伝である「わが半生」を原作として、監督のベルトルッチが脚本も担当しましたが、史実に忠実というよりは、ベルトルッチ監督の独自の解釈やイメージを重視して制作されたようです。溥儀は日本に滞在したこともあり、弟の溥傑の妻は日本人です。イギリス、イタリア、中国の共同制作という事もあったのか、映画の中では日本は徹底的に悪者として描かれています。より、ドラマチックに、溥儀の孤独が描かれているということになるでしょう。

婚礼の日の溥儀と婉容
09年2月29日 「ラストエンペラー / ベルナルド・ベルトルッチ」(DVD) ( 映画祭 ) - 東京散歩研究 - Yahoo!ブログ
溥儀の家庭教師レジナルド・ジョンストンの著書「紫禁城の黄昏」は、映画にも登場しますが、家庭教師としてついていた当時の、紫禁城の様子を描いたものです。イギリス人ジョンストンの目から見た中国や紫禁城ですが、政治犯収容所での尋問の際にも使われたようです。

家庭教師のジョンストンと溥儀
★★★★☆[映画] ラストエンペラー – The Last Emperor (レビュー・感想・解説・ネタバレ)
「ラストエンペラー」の実在の主人公

愛新覚羅溥儀本人の写真
写真で見るラストエンペラー・溥儀 - 北京生活日記
皇帝として即位してから、紫禁城を出るまでは、外界と隔絶された生活の中、家庭教師のジョンストンの存在が唯一外の世界を教えてくれる存在でした。
皇帝として即位し、皇帝として教育されて育った溥儀にとっては、日本軍の傀儡と言われても、皇帝となるのは当然のことだったのかもしれません。自分の理想とする国を作る夢は果たせませんでしたが、一国民として見る紫禁城は、どう映っていたのでしょうか。
「翻弄される対象としての人間。」ラストエンペラー Noriさんの映画レビュー(感想・評価) - 映画.com
舞台となった紫禁城の現在の様子

即位式のシーンが撮影された太和殿
気分はラスト・エンペラー、皇帝が暮らした「紫禁城」は凄まじいスケールだった(画像集)

天安門広場
気分はラスト・エンペラー、皇帝が暮らした「紫禁城」は凄まじいスケールだった(画像集)
溥儀は、300年以上続く清朝の最後の皇帝でしたが、秦の始皇帝から始まる2000年以上続く専制政治の最後の皇帝でした。
映画の中の中国人が、英語で話すことに違和感を感じる方も多いようです。史実とは違う部分もあり、西洋人の中の和服のイメージなど、細かい部分は突っ込みたくなる部分もありますが、それを抜きにしても見る価値のある映像だと思います。