映画『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の主題歌&劇中歌
『愛・おぼえていますか』は、アニメ映画『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の主題歌であり劇中歌でもある。
『超時空要塞マクロス』でリン・ミンメイ役を務めた飯島真理が歌った。
マクロスファン以外にも広く支持され、オリコンチャート最高7位、6週連続トップ10入りを果たす。
第7回アニメグランプリアニメソング部門・女性歌手部門、第2回日本アニメ大賞主題歌賞を受賞。
1984年の売上げは約27万枚。
劇場版マクロスの劇中でリン・ミンメイが歌い、重要な役割を持つ
『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』
劇中歌『愛・おぼえていますか』がストーリー上で果たす役割
宇宙で抗争を続ける巨人族の二大勢力、男のゼントラーディと女のメルトランディによって地球は壊滅的な被害を受ける。
巨大宇宙戦艦マクロスに避難した5万8千人は地球を離れ、マクロスの広大な艦内に市街地を建設し生活を営んでいた。
艦内に敵部隊の侵入を許してしまい、敵に捕らえたミンメイを可変戦闘機バルキリー隊のパイロット一条輝が救い出す。
芸能生活に疲れたミンメイを元気づけるため、二人で土星の輪の遊覧飛行を楽しむ。
一条の優しさにミンメイは心惹かれていく。
その後、一条とその上官であるマクロス航空管制主任の早瀬未沙は、人類が死に絶えた地上を1カ月間放浪することになった。
そして寂しさをともに分かちあい、愛を確かめ合う。
二人は太古に滅びたプロトカルチャー文明の遺跡にて刻まれていた歌を発見する。
未沙はそれを解読し、地球人の現代語に翻訳。
この歌こそが『愛・おぼえていますか』である。
地球に帰還したマクロス艦内で、一条・ミンメイ・未沙は再会を果たす。
ミンメイは一条へ想いを告げるが、一条は憧れのアイドルよりも未沙への愛を貫く。
ゼントラーディ軍とメルトランディ軍が激しく戦っているなか、一条はマクロス市街地のなかで探し出したミンメイに、未沙が解読した歌を歌ってほしいと頼む。
ミンメイは拒絶し、失意の反動から「あなたとわたし以外、みんな死んじゃえばいいのに!」と身勝手な言葉を口にして一条に頬を打たれる。
一条の言葉を聞きながら、ミンメイはすべての人のために歌を歌うというみずからの使命をさとる。
ミンメイは失恋に傷つきながらも、歌手としての誇りを胸にステージに立つ。
ミンメイが歌う『愛・おぼえていますか』が戦場に響き渡ると、男と女の巨人たちは秘めたるカールチューン(文化因子)を呼び起こされ、再び文化を取り戻すために団結していく。
太古の昔に流行したラブソング『愛・おぼえていますか』は、愛のシンボルとして時空を超えて平和をもたらすのだった。
映画の制作中、この歌に合わせて決戦シーンが展開されるラストパートのシナリオは、曲が出来上がるまで保留されていた。
共同監督の河森正治は「既にイメージしていたシーンのアイデアを作曲サイドに伝え、作画の意図から間奏の長さも指定した。完成した曲を聴いて、『ああ、この映画はこれで出来たな』と思ったのを覚えています」、「あの曲とは違うものが上がってきた場合は、まったく違う展開になっていたでしょうね」と語っている。
『飯島真理=リン・ミンメイ』というイメージへの抵抗、そして邂逅。
声優は歌手デビュー前の度胸試しだった。
飯島真理(いいじま まり)
飯島真理はリン・ミンメイ役を見事に演じていたことから声優出身の歌手だと思われることが多いが、元々シンガーソングライターとデビューが決まっており、声優はデビュー前の度胸試しであった。
国立音楽大学音楽学部ピアノ科在学中に、自作の曲の中から厳選した10曲のデモテープをレコード会社(ビクター)に持ち込み、気に入られ契約を結ぶことなった。
ビクターのディレクターと打ち合わせしていた際に、マクロスの声優オーディション参加をと勧められて、「歌手になる前のいい経験になる」と翌日オーディションを受けてみた。
自作曲を弾き語りしたところ、石黒昇チーフプロデューサーの「歌手の役だから歌える人がいい」という一言でリン・ミンメイ役に抜擢された。
『リン・ミンメイ』の存在が大きくなりすぎ、次第に葛藤するように…。
声優もアニメのこともよく知らなかったが、架空のアイドル『リン・ミンメイ』を初々しく演じ、『私の彼はパイロット』『愛は流れる』などの作中歌を歌い、振り付けも自ら考案。
マクロスのヒット共に、歌手デビュー前にはファンクラブが発足するなどアイドル的な人気を博し、lさらに『愛・おぼえていますか』の大ヒットで人気は決定的なものとなった。
劇場版マクロスの共同監督河森正治は「声を当てたのが飯島さんじゃなかったら、ミンメイは物語の中であれほどのアイドルにはなってなかったかも。あれは飯島さんの人気の盛り上がりに触発されたところがあるもの」と述べている。
ファンは飯島にリン・ミンメイ像を投射し「ミンメイちゃん」と呼ぶようになり、シンガーソングライターとしてのデビュー後もレコードはアイドルのセクションに置かれ、マスコミにも取材で「飯島さんて自分でも曲書かれていたんですか?」と言われることが多かった。
自分の中身と、一人歩きした自分のイメージとのギャップに飯島は戸惑うようになる。
この時期のことを振り返り、「どうしてアニメ(マクロス)の曲を歌わないのか、と指摘されることもあった。ある時、“アニメには興味がありません”と言い切ってしまったことがあり、ひんしゅくを買ったこともあった」と飯島は語っている。
『愛・おぼえていますか』は飯島自作の曲ではない。
『愛・おぼえていますか』は、作詞は安井かずみ、作曲加藤和彦という音楽界の大物夫婦の作品である。
シンガーソングライターとして活動したい飯島はヒットの裏で「私は自分で作って歌えるのに、どうして人が作った曲を歌わなければならないの」という葛藤は消えなかった。
映画の挿入歌となった自作の曲「天使の絵の具」をB面に入れたのは、せめて自分を納得させるためと飯島のささやかな自己主張だったという。
『愛・おぼえていますか』の作詞・作曲を手掛けた安井・加藤夫妻
アメリカでマクロスの凄さを実感、リン・ミンメイを愛せるように。
「リン・ミンメイ」という名前から逃れたいという気持ちもあり、飯島は1989年に渡米。
だが、アメリカで活動を始めると、マクロスの知名度が高いことに驚かされた。
また、海外のファンが役とのジレンマを理解して接してくれたことで、改めてすごい作品に出演していたのだと実感できるようになった。
そして、1990年代半ばからマクロス関連イベントやゲーム制作に関わり、現地のアニメコンベンションにもゲスト出演するようになった。
2002年には、セルフカヴァーアルバム『Mari Iijima sings Lynn Minmay』を発表。ミンメイの心境を思い描いた新曲『Why?』を加えた。
2006年、米国で発売開始された英語吹替版DVD『Super Dimension Fortress MACROSS』では、英語吹き替えで22年ぶりにリン・ミンメイの声当てを担当。
日本原作アニメの声優が、海外版で同一キャラクターを演じるのは史上初の試みであり、アメリカ在住歴が長く英語が堪能な飯島ならではの仕事といえる。
一時は顔も見たくないと思ったリン・ミンメイだったが、録音スタジオで久しぶりに対面した時には涙が溢れ、心の中で「あなたのことは一生私が面倒を見るからね」と約束したという。
今では「マクロスとの出会いは私のたどる運命のひとつ。愛でいっぱい、抱きしめます。」と語っている。
後のアニメ界に大きな影響を与えた『愛・おぼえていますか』
マクロスの『愛・おぼえていますか』は作品内で「歌手 or アイドル」として登場するキャラクターの歌がストーリーに重要な役割を果たす意味で、ロボットアニメながら“音楽アニメの先駆け”となった。
マクロスリーズにおいても、その流れは踏襲され、『マクロス7』(1994~1995)は、主人公である熱気バサラ率いる劇中のバンドFIRE BOMBER自身が主題歌を担当するなど、実際に多くの曲が制作された。
FIRE BOMBERのCDアルバムとして発売された『LET'S FIRE!!』はオリコン初登場4位を獲得し、売り上げもこの年だけで40万枚を突破。
1995年日本ゴールドディスク大賞アルバム・オブ・ザ・イヤーアニメ部門を受賞するなど、アニメソングとしては異例の高セールスを記録した。
「マクロスF」(2008年)ではヒロインの歌唱を務めたMay’n、中島愛らがアニメ終了後もアーティスト活動を継続し、作品に留まらない活躍を見せている。
さらに、2016年4月より放送されている『マクロスΔ』(読み:マクロスデルタ)においても、作中に登場する、銀河系最強の戦術音楽ユニット“ワルキューレ”のデビューシングル「一度だけの恋なら/ルンがピカッと光ったら」がリリースと同時に主要音楽配信サイトで、軒並み首位を記録するなど音楽チャートを席巻している。