
石森「リュウ三部作」最終作
「番長惑星」は石森章太郎(のちに石ノ森章太郎)の、誰が呼んだか(いや、石森氏とか編集とか送り手だと思いますけどね、、f^^;)「リュウ三部作」。「リュウの道」(69年)、「原始少年リュウ」(71年)に続く、最後を飾る作品です。
リュウ三部作はいずれも「リュウ」という名の少年を主人公とする以外はとくに共通点は、、主人公リュウが新たな世界へ新たな(別な)「人類」と邂逅する物語とはいえましょうか。
リュウの道は未来を、原始少年リュウは太古を、今作「番長惑星」は現代を舞台(の端緒)としています。
単行本は全5巻。75年から翌76年に刊行されています。
少しの違いが大違い、平行世界(パラレルワールド)の物語
物語の舞台は、いま私たちが暮らしてる宇宙、地球の日本の、平行世界(パラレルワールド)です。
平行世界とは、世界(宇宙)は私たちが生きるこの世界ひとつではなく、ほんの少しづつ異なった世界が、ふつうは交わることなくまるで平行にあるかのように無数に存在している、という考えです。
たとえば、この世界の交わらないほんの“隣り”には、この世界では男性の私が女性である以外はすべて同様の世界があるかも知れない、という訳です。そしてその隣りには隣りからほんの少し異なった隣りの隣りの世界が、その隣りには、、という具合です。
“二人力”の少年リュウ
主人公リュウ(等々力竜)は、大勢を相手にも怯まず存分に闘える腕っ節をもともと持っていた中学生ですが、平行世界に入り込んで帰れなくなり、しかも、こちらの世界のリュウとあちらの世界のリュウがひとつになったために、超人的パワーを手に入れた存在となるのでした。
番長惑星:石ノ森WEBサイト ~変身!~






マリッペ

ハカセ(左巻ツトム)
「世界」を変える仲間 その1
最初に出会う仲間〜 バクダン
平行世界をハカセと社会見学していたリュウは、警察に追われる少年と出会います。
伴太郎、通称バクダン。仕事でわずかに出歩くことを禁止された「夜間」に入ってしまった父を撃ち殺され、ダイナマイトでパトカーを爆破して“復讐”したということでロボット警官に追われていたのです。捕まれば犯罪者として射殺。それがこの世界での法律なのです。
「たったそれだけのことで!?/—気にくわねえ!!」。リュウはバクダンを守ることを誓います。

バクダン(伴太郎)
追ってきたロボット警官をリュウが返り討ちに。連絡がいって、警視庁のブラックリストにリュウたちが載らないように、仲間の警官とパトカーをバクダンが爆破します。
ハカセは考えました—リュウの力と行動力、そして自分の頭脳があれば、この世界を変えられるのではないかと。
三番目の仲間〜 ツギハギ
この世界はどの国も割り振られた数の核ミサイルを持ち、そのバランスのもとに“平和”が保たれているとしています。日本の、「日本軍衛隊」もです。
ところで、男に襲われていると勘違いしたリュウは、ミヤコという女の子と知り合います。

ミヤコ(五井都)
リュウに袖にされたミヤコは逆恨みして兄の四狼を嗾けます。四狼はミヤコの嘘に態と乗って、リュウに対峙します。強い相手と闘いたがっているのです。

ツギハギ(五井四狼)
しかし、リュウに一閃のもとに両腕を捥がれツギハギは敗れます。はじめて他人に負けたツギハギもリュウの仲間になることに。
情報屋、ネズミ

ネズミ
闇からの支配者
夜を歩くリュウとツギハギ。夜間外出禁止令に疑問を抱いて取材を行い、ロボット警官に追われるジャーナリスト風祭一に出会います。禁止令の裏で夜を支配するものは昼の世界も支配している。
悪魔鳥(サタン・バード)が飛び、一つ目の巨人が町を伸し歩き、宇宙人のような連中がリュウたちを襲います。彼らにはツギハギのマシンガンも効かない。と、助けが。闇からの支配者“影(シャドウ)”と闘うゲリラたちです。
リュウは、さらに仲間を集め、影と闘うことを決意するのでした。

「世界」を変える仲間 その2

カタメ
シャドウに操られたチンピラ学生たちに囲まれたリュウたちは、ゲリラ“サンシャイン”に身を投じた風祭らに助けられます。サンシャインと手を結ぶことにしたリュウは、拠点のために後ろ暗い会社を乗っ取り、本格的にシャドウの謎に迫ろうとします。だが、リュウの家が爆破され、両親は死んでしまいます。リュウたちも命を狙われ、チンピラ学生に襲われた際にネズミの左手、哲の両足も奪われてしまいます(サンシャインによって、ネズミの左手は盗聴装置付きの義手に、哲の両足はジェット噴射で飛行できる義足になります)。
リュウがいたあちらの世界とこちらの世界の歴史を比較し、ハカセは16世紀に「あちらの世界」では忽然と消え、「こちらの世界」では突然現れた、マヤ族がシャドウの正体だという考えに至ります。彼らは次元を越えてあちらの世界とこちらの世界、平行世界を行き来する術を手に入れているのだと。

ポルノ(秋津久美)

ハカセたち仲間を人質に取られて“招待”を受けたリュウは、ポルノとともに信州に向かいます。待ち受けていたのはロボットの一団。彼らは、シャドウとは、第五惑星人という“宇宙人”であることを明かします。行き過ぎた文明のために自らの星を滅ぼしてしまった彼らが、使役するためにつくりだしたのが彼らロボットたちであり、そして人類も彼ら第五惑星人がつくりだした人造人間だったのです。
彼らはシャドウに立ち向かいリュウたちと共闘を求めます。

アーマゲドン
マヤ族の声に導かれたリュウは、エジプトのピラミッドに向かい、そこでさらなる力(パワー)を得ます。
シャドウの正体は、流刑人—はるか古代にこの世界に追放された流刑人たちの子孫だったのです。
彼らの数は決して多くはなく、自分たちの世界へ帰るために、シャドウとしてリュウのいた世界とこちらの世界を裏から操っていたのですが、帰還するための「力」を、自分たちがつくりだした人造人間である人類—リュウに手に入れられてしまったのでした。
マヤ族、ロボット族とともに、リュウはシャドウの基地へと向かい、最後の闘いを挑みます。しかしその一部が、リュウが元居たあちらの世界へ逃走。リュウも彼らを追って元の世界へ帰り、いよいよ彼らに止めを刺すべく—

—いかがだったでしょうか「番長惑星」。手に取られる機会がありましたら、ぜひご一読を。
力がすべてを支配する物騒な弱肉強食の世界、、どこかの世界に似てないでしょうか?どうかこのような世界になりませんよう、、