LL・クール・Jとは

LL・クール・J(エルエルクールジェイ)は、1968年1月14日生まれ、ニューヨーク州ウェストチェスター出身、クイーンズ区育ちのヒップホップアーティスト(ラッパー/MC)・俳優です。本名はジェームズ・トッド・スミス(James Todd Smith)で、芸名は「Ladies Love COOL James」に由来し、そこから略され名付けられました。ニックネームは「LL(エルエル)」。
苦労が絶えなかった少年時代
幼い頃から両親の間で喧嘩が絶えず、LL・クール・Jが4歳のときに両親が離婚するまで、父親からの虐待に耐えながら育ったという苦労人。しかし母親に引き取られ、母の実家があるニューヨーククイーンズ区に引っ越してからも劣悪な環境は変わらず、母の再婚相手からも再び虐待を受けるという過酷な生活は続くのです。
ですがLLは決して腐りませんでした。サッカーやボーイスカウト、教会の聖歌隊として活動するなど活発な少年でもあったからです。そんなLL少年がラップと出会ったのは9歳の頃。自作のデモテープをレコード会社へ送ったことがキッカケで、ビースティ・ボーイズのキング・アウト・ロックの目に留まり、彼が所属する「デフ・ジャム・レコード」から16歳という若さでデビューすることとなったのです。
アイドルラッパーからレジェンドになった男
自らの行動力でデビューのチャンスを掴んだLL・クール・Jは、その甘いマスクとチャーミングさも手伝ってラッパーでありながらアイドル的な人気を獲得し、ヒップホップ界に新風を巻き起こしました。ファーストアルバム『Radio』はデフ・ジャム・レコード初のプラチナディスクに輝く大成功を収め、そしてセカンドアルバム『Bigger and Deffer』からシングルカットされた「I Need Love」の大ヒットにより名実ともにラッパー界の頂点に君臨するのです。
同曲はヒップホップ・バラード初のビルボードR&Bチャート、ナンバーワンを獲得するという快挙を成し遂げ、ヒップホップの歴史に名を刻みました。しかしデビュー当初は圧倒的な女性ファンからの支持を受けるあまり、逆に男性からは嫉妬や批判の的になってしまったことも。
そんなLL・クール・Jも3枚目のアルバム「Walking With a Panther」では予想外の否定的な評価に打ちのめされたりもしました。しかしそこから奮起し4枚目のアルバム『Mama Said Knock You Out』では女性のみならず幅広いファン層拡大に成功するのです。その後も多数のプラチナアルバムや2度のグラミー賞受賞など目覚ましい活躍は続き、2021年には長年の功績が認められ、「ロックの殿堂入り」を果たしました。
ファッション・アイコンとして

LL・クール・Jスタイルの特徴は、身長187センチと大柄な体型に、鍛え上げられた筋骨隆々の肉体美、そこにどっしりと太く巻かれた「ゴールドチェーン」とお洒落な「ハット」がマストアイテムでしたよね。今でもファッションを含めヒップホップアーティストの先駆者として多くのラッパーたちに影響を与え続けているレジェンドです。
人気俳優LL・クール・J誕生!

そんなLL・クール・Jが俳優業に本格的に進出したのは1992年。名優ロビン・ウィリアムズが主演したファンタジー映画『トイズ』でした。ちなみにこの作品にはノークレジットながらティム・バートンもコンセプチュアル・アーティストとして参加しているほか、下積み時代のジェイミー・フォックスもチョイ役で出演しています。

「悲鳴の女王」ジェイミー・リー・カーティス主演のホラー映画『ハロウィンH20』(1998年)では、当時まだ若手俳優だったジョシュ・ハートネットやミシェル・ウィリアムズらと共演。この作品でLLはお調子者の警備員ロニー役を演じました。

太平洋上に建設された医学研究施設「アクアティカ」を舞台に、人類と同様の知能を持ってしまった巨大サメとの戦いを描いたSFアクションホラー映画『ディープ・ブルー』(1999年)では、アクアティカ専属の料理人シャーマン・ダドリー(プリーチャー)役で出演。

オリヴァー・ストーン監督がアメリカン・フットボールの世界を描いたスポーツ映画『エニイ・ギブン・サンデー』(1999年)では、名優アル・パチーノやキャメロン・ディアス、デニス・クエイド、ジェイミー・フォックスらと共演。この作品でLL・クール・Jは野心家のアメフト選手、ジュリアン・ワシントンを好演し印象を残しました。また本業であるヒップホップ・アーティストとしてサウンドトラックにも参加しています。

次々とメジャー作品に進出し俳優としても知名度を上げていったLL・クール・J。世界中で大ヒットを記録した映画『チャーリーズエンジェル』(2000年)では、チョイ役ながら印象的な出方をしていますよね。こうして順調にキャリアを重ねながら一歩ずつ人気俳優への階段を昇っていったのです。

映画『S.W.A.T.』(2003年)ではサミュエル・L・ジャクソン、コリン・ファレル、ミシェル・ロドリゲスらとともに、警察内部の特殊部隊「SWAT(スワット)」の一員として激しいアクションにも挑戦しました。この頃より主要キャラクターの1人としてキャスティングされる機会がグンと増えてきたという印象です。

そして2005年からは『Dr.HOUSE』へのゲスト出演を皮切りにテレビドラマ界にも活動の場を広げ2009年、長寿ドラマ『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』のスピンオフ作品である『NCIS:LA 〜極秘潜入捜査班』に主要キャストの1人としてレギュラーメンバー入りしました。主演は『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992年)でアル・パチーノと共演し、ゴールデングローブ賞最優秀助演男優賞にノミネートされたこともある実力派のクリス・オドネル。
この作品でLLは、海軍の対テロ特殊部隊SEAL・チーム6出身の元上級兵曹長で、今はスペシャル・プロジェクト・オフィス(通称:OSP)特別捜査官現場対応チーム上級捜査官を務めるサム・ハンナを演じています。現在アメリカでは13シリーズが終わり、2022年10月からはシーズン14の放送が開始される予定となっており、今年で14年目を迎える人気シリーズへと成長しました。日本でも「FOXチャンネル」をはじめケーブルテレビ各局にて絶賛放送中!
まさしくラッパーとしてだけでなく俳優としても一流のLL・クール・Jなのでした。そして年齢を重ねても、あの愛嬌のあるチャーミングなルックスは健在のようです。