『おれ、夕子』とは?
『おれ、夕子』
『おれ、夕子』は、藤子-F-不二雄さんによるSF短編マンガ。
1975年に週刊少年サンデーに掲載され、1984年には、てんとう虫コミック『藤子不二雄少年SF短編集』の第2巻に収録されました。1990年代にはオリジナルビデオとしてアニメ化も実現しています。
OVA版『おれ、夕子』
当時、発売されたVHSビデオには『ポストの中の明日』も同時収録されていて、お得感のある商品となっています。今回の記事では、こちらのOVA版『おれ、夕子』の内容を中心に振り返っていきたいと思います。
OVA版『おれ、夕子』の本編動画・ストーリー
OVA版『おれ、夕子』の魅力とは?
作品タイトルからは、男子・女子高生の魂が入れ替わるような物語を想像させますよね。代表的なものを挙げるとするなら…
2016年に公開されたアニメ映画で、当時は世界での歴代興行成績で2位にランクインした名作です。『おれ、夕子』『君の名は。』、どちらも自分自身の名前を表すような作品タイトルで近いテイストを感じますよね。
しかし、OVA版『おれ、夕子』のフタを開けてみると、『君の名は。』や男女の意思が入れ替わる内容とは一線を画すもので驚かされます。物語冒頭から女子高生・夕子が亡くなってしまい、想いを寄せていた主人公・弘和の身体を変革させて復活を遂げるというもの。
その時点で、内容的には良い意味での裏切り・意外性があり、ユーザーを本編に惹き込んでしまうような魅力があります。
夕子の復活を画策したのは、愛娘を亡くして悲しみに暮れていた夕子の父親。彼には有能な研究者・科学者としての一面があり、自ら遺伝子操作する薬品を開発することで、弘和の身体を用いて、一時的に夕子を復活させることに成功します。
思いつくところで技術的なツッコミをすると、遺伝子を操作できたとしても、その人物の性格・記憶といったものまで再現できるとは思えません。そして、どれだけ薬品の開発が進められたとしても、注射ひとつで人体全ての細胞の遺伝子情報が書き換えられるわけもありません。
薬ひとつで大人になったり、赤ちゃんにもなれる…
『おれ、夕子』は、こちらの世界観にも似た空想科学テイストを感じさせますよね。
現在では遺伝子操作の知識は一般的にも普及していて、『おれ、夕子』の内容には無理があることを理解できるユーザーは多いと思います。しかし、原作となる漫画が生み出されたのは1970年代で、OVA版が発売されたのは1990年代初期のこと。この時期の知識・情報のみで想像を膨らませながら、藤子-F-不二雄さんがストーリーや設定・展開を組み立てたのだと考えてみるのも面白いです。
OVA版『おれ、夕子』のまとめ
男女の魂が入れ替わるストーリーなのかと思えば、展開に意外性があり、良い意味でその思い込みを裏切るOVA版『おれ、夕子』。遺伝子といった当時の最先端の科学・医学要素を取り入れつつ、どこか現実味を帯びないところも愛嬌を感じて面白いです。
生きることの意味、命の大切さなどのテーマが根底にあり、藤子-F-不二雄さんがこの作品に込めたメッセージ性には深みが感じられます。ストーリー結末も謎に包まれている部分があって、余韻を残すものとなっているところも個人的には好きです。
記事内には本編動画を掲載していますので、この機会にぜひご覧になって、その面白さをご自身の目で確かめてみてくださいね。本編時間は30分ほどの短編OVAですが、単純にそう思えないほどの余韻を感じられて楽しんでもらえると思いますよ。