「田村正和」二枚目俳優の歩みと時代を作ったドラマ

田村正和が大原麗子と初めて共演したのは、1971年TBSで放送された木下恵介・人間の歌シリーズ第4作「冬の雲」だったと思う。ドラマは印象的なナレーション「愛とは、…」で始まるり、裕福な家庭の秘密を中心に人間愛の苦悩を描いていく。

キャストは、父、二谷英明、継母、久我美子、長男の茂役が田村正和。そして次男は仲雅美、友達は近藤正臣という2枚目俳優が名を連ねた。ドラマ挿入歌のロシア民謡「ポーリュシカ・ポーレ」を仲雅美がカバーして歌いヒットした。

茂の恋人は大原麗子。若き日の田村正和ほど愛の苦悩という言葉が似合う男はいない。
そして、複雑な家庭環境の中で父の連れ子である彼は継母から名前を”さん”付けで呼ばれる。
上品な口調で放つ言葉「茂さん」この非日常的な響きが田村正和に輝きを添えた。

劇中で白いセーター着用していた彼は美しかった。セーターが似合う男、田村正和を印象付けた。

1977年に田村と大原は再び共演する。日本テレビで放送されたドラマ「悲曲 禁じられた愛」は北海道函館を舞台にした耕治と遙子の悲恋の物語で田村正和と大原麗子は美しい不倫を演じた。この時の大原は、渡瀬恒彦と結婚中、プライベートでも人妻だった。
田村正和はこのドラマで黒いタートルネックのセーターを着用していて、かっこよかった。

1977年にフジテレビ系列でドラマ化された松本清張の「砂の器」に出演した。ある殺人事件を追う刑事の執念の捜査が描れている。ベテラン刑事を演じる仲代達矢と犯人の和賀英良演じる田村正和。ナイーブな天才音楽家青年の光と影が印象深い。
この作品で田村正和のニヒルでナイーブなキャラが確定した。

1980年TBS系木曜22:00から放映されたテレビドラマ「離婚ともだち」では大学講師の健を演じた田村正和とファッションビルの宣伝プロデューサー夏子を演じる大原麗子。離婚者どうしのふたりは都会のマンションで同棲しているが、別々の部屋を持ち夜はどちらかの部屋で過ごす。当時の流行の発信地だった渋谷に住むキャリアウーマンの革新的な生き方は衝撃的だった。
ドラマでは藤竜也演じるプロダクション経営者の海原が登場して健は振られてしまうのだが、キザな役を演じた田村正和、最高にカッコよかった。

挿入歌は中村晃子が歌った不倫の歌「恋の綱わたり」はヒットした
♪しがみつけば 綱わたりは終ります♪窓の外に あなたが幻(み)たのはだれ?

40歳にさしかかった田村正和の渋さが増してきた。1983年夏～秋に放送されたTBSドラマ「夏に恋する女たち」は都会に住むシングルの男女６人の生活を描いた群像劇だ。当時の日本はバブル期だった。六本木の高級マンションの最上階に住むという今ではありえない設定のライフスタイルが都会的でおしゃれに感じた。カメラマン倉橋光男を演じる田村正和がマンションの最上階から六本木の街を見下ろせば、もう、それだけで絵になるシーンなのだ。

984年春～初夏にTBSで放送された金曜ドラマ「くれない族の反乱」当時の流行語になった「～してくれない」症候群の主婦（大原麗子）が夫の単身赴任中にパート先の上司（田村正和）と仲良くなる。よくある話だが郊外のおしゃれな住宅地を舞台に美男美女が演じることで大人のラブストーリーに仕上がっている。二枚目役を演じてきた田村正和のコミカルな面を引き出すことで不倫というテーマの暗さを払拭、不倫することへの垣根を低くした。
そして不倫はブームになった。