スティーヴン・キング
モダン・ホラー小説好きにスティーヴン・キングを知らない人はいない。いや、モダン・ホラー小説が特別好きでなくとも「ホラーの帝王」の異名を持つスティーヴン・キングは日本でも広く知られていますよね。なんと言っても怖い!なんと言っても面白い!間違いなく楽しめる作品ばかりを発表している作家です。

スティーヴン・エドウィン・キング
デビュー当初こそ作家として目が出ずに苦労したようですが、それでも大学卒業から3年後に放った長篇1作目が大ヒットとなり、その後も売れに売れ続けて不動の人気作家となっています。
スティーヴン・キングの作品は題材の面白さもさることながら視覚的というのでしょうか、読んでいると情景が浮かんでくるんですよ。だからでしょうね、非常に映像化された作品が多いのです。
モダン・ホラー小説好きだけではなく、映画ファンをも虜にした初期の映画化されたスティーヴン・キング作品をご紹介します!
キャリー
1974年の長編「キャリー」がデビュー作です。デビュー作からしてこの完成度!既に個性を確立しているといって良いんじゃないでしょうか?!間違いなく面白いです。世界中で大ヒットしたのも頷けます。
ただ日本においては「キャリー」は小説よりも映画で知ったという人が大多数だったのではないかと思います。
映画化は小説発売から2年後の1976年。映画、インパクトありましたねぇ。

キャリー
映画は何といってもキャリー役のシシー・スペイセク、それに母親役のパイパー・ローリーが圧巻の演技を見せてくれます。
監督はブライアン・デ・パルマ。スティーヴン・キング同様にこの作品で彼を知ったという映画ファンは多かったのではないでしょうか?
嫌な男役でジョン・トラボルタが出演していますが、これが彼の映画デビュー作です。
既に「悪魔のシスター」「ファントム・オブ・パラダイス」「愛のメモリー」といった名作をものにしていたブライアン・デ・パルマでしたが、まだまだ当時はカルト的な人気に留まっていました。商業的な成功となると、やはり本作から。後にはケビン・コスナー主演の「アンタッチャブル」、トム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル」といった大作を監督し、大監督の仲間入りを果たしています。
シャイニング
長篇2作目は1975年に発表された「呪われた町」で、この作品は1979年にテレビ・ドラマ化されました。監督はなんと「悪魔のいけにえ」や「ポルターガイスト」で有名なトビー・フーパーです。
で、長篇3作品目となるのですが、これまた話題となった(まぁね、キングの場合、発表される作品は常に話題となってるのですが)名作「シャイニング」です。
映画は主演のジャック・ニコルソンの怪演によって怖い怖い!監督はブライアン・デ・パルマと違って当時既に名監督の評価を得ていたスタンリー・キューブリック。面白くないわけがない!のですが、この映画スティーヴン・キングは不満だったようです。

シャイニング
【ネタバレ解説】映画『シャイニング』主人公ジャックの正体、ラストシーンの意味を徹底考察 | FILMAGA(フィルマガ)
ホラー映画の中でも最も偉大で影響力のある作品の一つとされる「シャイニング」ですが、スティーヴン・キングはこの映画が気に食わなかった。
なぜ気に食わなかったのか?簡単に言うと、映画は原作と大きく違ってるからなんですね。いえ、大筋は同じです。が、受ける印象が大きく異なる。これ、解釈の違いってことで見る方にとってはどうでもいいように思いますが、スティーヴン・キングおよび、彼の熱烈なファンはそこんとこが許せなかったようです。面白いんだからいいじゃん!とはいかないようですね。
映画版「シャイニング」に不満を持っていた、いや怒りが収まらなかったスティーヴン・キングは映画公開から17年後の、1997年に自ら脚本を手掛けテレビ・ドラマ版「シャイニング」を制作しています。映画版の評価が高まれば高まるほどはらわたが煮えくり返ったみたいですね。それはそれでコワイ。怖すぎるぞスティーヴン・キング!
デッドゾーン
細菌兵器研究所から実験中のウイルスが流出し世界に洩れ出してしまうという、どことなくコロナ禍を思わせるスティーヴン・キングが1978年に発表した長篇4作目「ザ・スタンド」。映像化は1994年5月8日から5月12日までテレビドラマとして放映されています。
映画化となると1979年にアメリカ合衆国で出版された次作の「デッド・ゾーン」ですね。

デッドゾーン
監督は待ってましたのデヴィッド・クローネンバーグ。当時、既に「スキャナーズ」「ヴィデオドローム 」といった話題作を放っていましたからね、「デッドゾーン」の監督と聞いた日には期待が高まったものです!
実際、今日では映画化されたスティーヴン・キング作品の中では高い評価を得ています。
因みにこの作品、2002年にはテレビドラマとして新たに製作され放送されています。
クジョー
1980年9月に発表した長篇6作目の「ファイアスターター (Firestarter) 」も当然のように映画化されています。邦題は「炎の少女チャーリー」。何故そのようなタイトルになったのかと言いますと、当時「ストリート・オブ・ファイヤー」が公開されており、混同を避けるためにこうなったのだとか。
で、長篇7作目が「クジョー」で、1981年の発表。映画化は1983年です。

クジョー
クジョー - Wikipedia
低予算ではありますが、よくできた映画です。制作陣は頑張ったと思います。が、アメリカではそこそこの成功を収めたにもかかわらず、なんと日本では一週間で上映打ち切りという結果に!惨いなぁ。
この作品、原作と映画では内容が異なるんです。特に大きな違いはラストで、小説は主人公の子供が死んでしまうのですが、映画では助かります。そう、ハッピーエンドになっているんです。このことによって趣旨が大きく変わるわけですが、「シャイニング」の時とは違ってスティーヴン・キングはこの変更を喜んだそうです。どうやら小説の悲劇的な結末をそもそも変えたかったというのが納得した理由のようですね。
クリスティーン
長篇8作目として書き始められた「ダークタワー」もまた映画化されたのですが、なんせ第一巻「ガンスリンガー」の発表が1982年で、最終第七巻「暗黒の塔」の発表は2004年。長篇とはいえ、なんと完成までに22年という歳月をかけているんですよ。本人がライフワークと言うだけあって何もかもスケールがデカい!なもんで映画化も2018年1月27日の公開となりました。
「ダークタワー」がそんな状態なので、完成された作品ということで1983年の「クリスティーン」を長篇8作目といっても良いのかもしれませんね。勿論「クリスティーン」は早々に映画化されました。
実は「炎の少女チャーリー」の監督は当初ジョン・カーペンターが、脚本はビル・フィリップスが予定されていたのだそうです。しかし、脚本が原作と大きく異なっていたとか、特撮の費用が多額であったからとかといった理由によってこの話は流れたのですが、この二人「クリスティーン」でそのポジションをモノにします。
ジョン・カーペンター監督といえば、「ハロウィン」「ザ・フォッグ」「遊星からの物体X」など怖いもの撮らせたら間違いなしの名監督ですから期待するなと言うのは無理ってなものです。

クリスティーン
「クリスティーン」 CHRISTINE 映画 あらすじ | おうち映画
狂犬病の次は車。よくもまぁ天才とはいえ次から次に新しいテーマを考え付くものですね。
「クジョー」「デッドゾーン」「クリスティーン」と、1983年はキング原作の映画が実に3本も封切られてるんですよぉ。これを売れっ子作家と言わずしてなんと言えってんですか?!てなもんです。
更に驚異的なことに、この後もスティーヴン・キング作品は今日に至るまでほとんど途切れることなくバンバン映画化されているんですよ。「スタンド・バイ・ミー 」「ペット・セマタリー」「ミザリー」「グリーンマイル」「IT/イット」などなど映画化された作品は数え上げたらきりがないほどです。