第56回アカデミー賞
第56回アカデミー賞は1984年4月9日に行われたアカデミー賞発表・授賞式である。

会場となったドロシー・チャンドラー・パビリオン
第56回目のアカデミー賞授賞式は、 例年通りドロシー・チャンドラー・パビリオンで行われた。
結果は、ジェームズ・L・ブルックスが母娘の絆を描いた『愛と追憶の日々』が、作品賞、監督賞、主演女優賞を含む5部門を受賞した。
作品賞『愛と追憶の日々』(Terms of Endearment)
原作はラリー・マクマートリーによる同名小説。
未亡人のオーロラと娘エマは仲の良い親子だったが、エマの結婚相手にオーロラは納得がいかず、二人は反目しあう。エマが家を出て一人になったオーロラは、隣に引っ越してきた元宇宙飛行士のギャレットにしだいに惹かれていく。そんなある日、エマに深刻な事態が発生するというストーリー。
第41回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞も受賞している。
1996年には、その後の後日談を描いた続編『夕べの星』が発表された。

愛と追憶の日々
作品賞のその他の候補作は以下の通り。
再会の時
ドレッサー
ライトスタッフ
テンダー・マーシー
監督賞:ジェームズ・L・ブルックス『愛と追憶の日々』
『愛と追憶の日々』でジェームズ・L・ブルックスは作品賞と監督賞と脚色賞を受賞。
ブルックスはプロデューサー、脚本家としての顔もあり、テレビではCBSやABCで『メアリー・タイラー・ムーア・ショー』や『ザ・シンプソンズ』、『トレイシー・ウルマン・ショー』などの人気シリーズを手がけている。これまでにアメリカのテレビ業界に送られる賞であるエミー賞を19回受賞した。

ジェームズ・L・ブルックス(James L. Brooks)
他の監督賞ノミネートと作品は以下の通り。
ピーター・イエーツ(ドレッサー)
イングマール・ベルイマン(ファニーとアレクサンデル)
マイク・ニコルズ(シルクウッド)
ブルース・ベレスフォード(テンダー・マーシー)
主演男優賞:ロバート・デュヴァル『テンダー・マーシー』
『テンダー・マーシー』は、落ちぶれたカントリーシンガーの再生を描いた作品。日本では劇場未公開。
ロバート・デュヴァルはカントリー歌手のマック・スレッジ役を演じての受賞。劇中では歌唱も披露している。
デュヴァルはアカデミー賞に7回ノミネートされていて、アカデミー助演男優賞最年長ノミネート記録保持者である。

ロバート・デュヴァル(Robert Duvall)
主演男優賞のノミネートは以下の通り。
マイケル・ケイン(リタと大学教授)
トム・コンティ(Reuben, Reuben)
トム・コートネイ(ドレッサー)
アルバート・フィニー(ドレッサー)
主演女優賞:シャーリー・マクレーン『愛と追憶の日々』
主役である未亡人のオーロラ・グリーンウェイを演じて受賞した。
本作でゴールデングローブ賞 主演女優賞 (ドラマ部門)も獲得。
シャーリー・マクレーンは自身の神秘体験の著作を多数発表しており、ニューエイジの第一人者としても知られる。
1959年の『恋の売込み作戦』や1960年の『アパートの鍵貸します』など4つの映画で、ヴェネツィア国際映画祭やベルリン国際映画祭の女優賞を受賞した。

シャーリー・マクレーン(Shirley MacLaine)
他に主演女優賞にノミネートされた方は以下の通り。
ジェーン・アレクサンダー(テスタメント)
メリル・ストリープ(シルクウッド)
ジュリー・ウォルターズ(リタと大学教授)
デブラ・ウィンガー(愛と追憶の日々)
助演男優賞:ジャック・ニコルソン『愛と追憶の日々』
主人公の隣の家に引っ越してくる元宇宙飛行士のギャレット・ブリードラヴ役で出演した。
ジャック・ニコルソンは男優として最多のアカデミー賞ノミネート記録をもち、その数は12回(主演8回、助演4回)。受賞は3回(主演2回、助演1回)している。
1989年の『バットマン』で二代目のジョーカー役を演じたことで有名。

ジャック・ニコルソン(Jack Nicholson)
助演男優賞のノミネートは以下の通り。
チャールズ・ダーニング(メル・ブルックスの大脱走)
ジョン・リスゴー(愛と追憶の日々)
サム・シェパード(ライトスタッフ)
リップ・トーン(クロスクリーク)
助演女優賞:リンダ・ハント『危険な年』
『危険な年』は、1965年の動乱期のジャカルタに派遣されたオーストラリア放送の特派員を描いた作品。
リンダ・ハントは、主人公の特派員ガイとコンビを組む中国系オーストラリア人の男性カメラマンであるビリーを演じた。女性が男性を演じてアカデミー賞を獲ったのはこれが最初である。
ハントはアニメーションやテレビゲームなどで声優としても活躍している。

リンダ・ハント(Linda Hunt)
他に助演女優賞にノミネートされた方は以下の通り。
シェール (シルクウッド)
グレン・クローズ(再会の時)
エイミー・アーヴィング(愛のイエントル)
アルフレ・ウッダード(クロスクリーク)