白人ラッパー【エミネム】を覚えていますか?

白人ラッパー【エミネム】を覚えていますか?

90年代後半から2000年代前半にかけて世界中を熱狂させたヒップホップ界のスーパースター、エミネム。しかし近年はあまり目立った活動が聞こえてきません。そこで今回は音楽業界に旋風を巻き起こした彼の”これまでの歩み”と”現在”にスポットを当ててみました。


2004年に発売されたのが4枚目のアルバム『アンコール』。前作から約2年ぶりのリリースとなりましたが、相変わらずその毒舌ぶりは健在でマイケル・ジャクソンの整形疑惑を揶揄した先行シングル「ジャスト・ルーズ・イット」やこの年のアメリカ大統領選挙を前にし反ブッシュの意思を表明した「モッシュ」などが収録されています。しかし愛娘ヘイリーに宛てた名曲「モッキンバード」では娘を不安から守る献身的な父親の顔も覗かせ、同曲の哀愁溢れるミュージックビデオに涙した人も多いのではないでしょうか。まさに彼が持つ陰と陽の二面性に私たちは強く共感するからこそ、その存在に心惹かれていくのかもしれませんね。

トラブル山積みの私生活とプロデュース業

私生活

デビュー以前からトラブル続きの人生だったエミネムですが、デビュー後も富と名声は得たものの、相変わらずトラブルの絶えない私生活が付きまとっていました。特に学生時代からの付き合いで娘ヘイリーの母親でもあるキムとは相変わらずくっついたり別れたりを繰り返し、2006年には離婚した彼女ともう一度再婚し、キムと他の男性との間に生まれた子供とも養子縁組。しかし数ヶ月で再び離婚しています。そして実の母親デビーの存在もまた彼のダークな一面をより一層輝かせる。でも上手くいかないこのもどかしさこそが、エミネムが描く詩の世界観に深みをもたらしているのですから皮肉なものですね。

そんなエミネムの精神に限界がきたのは2005年頃から。当初はプロデュース業に専念するため、ツアーはこれが最後になるだろうと発表していましたが、疲労や精神の不安定さ、そして睡眠薬の過度服用及び依存症の治療を行なうために入院生活へ。そのためそれまで怒涛の勢いで行なってきたワールドツアーはキャンセルとなり、薬物治療はその後2009年まで続くこととなります。

D-12、50Cent、G-ユニット...

2001年頃より自身のアルバム制作以外にもデビュー前から地元デトロイトの仲間と共に結成し、参加していた6人組ヒップホップユニットD-12(ディー・トゥエルブ)のデビューをエミネムが創設したレコード会社「シェイディ・レコード」で後押し。ヒット曲「My Band」は日本でも若者を中心に流行りましたよね。しかし大親友でD-12のメンバーであったプルーフがナイトクラブで口論の末、銃弾を受け死亡。悲しみの中、残りのメンバーで活動を続けましたが2018年に解散しました。

そしてエミネムがプロデュースし最も大成功を収めたのが、50Cent(フィフティー・セント)。デビュー前、9発もの銃弾を被弾するも生き延びたという圧倒的なインパクトをあえてセールスポイントとし、かつてこの事件がきっかけとなりアメリカのレコード会社のブラックリストに載った50Centが、満を持して2003年にリリースしたファーストアルバム『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』で1100万枚もの売り上げを記録し、アメリカンドリームを掴んだのです。

中でも収録曲「イン・ダ・クラブ」や「21クエスチョンズ feat. ネイト・ドッグ」「P.I.M.P. 」は今でも彼の代表曲。その他、オリヴィアを客演に迎えた「キャンディーショップ」や50Centを中心にロイド・バンクス、トニー・イエイヨーらで結成されたヒップホップユニット・G-Unit(ジーユニット)などもヒップホップ界を大いに盛り上げました。

ヒップホップ界のスーパースター☆エミネムの今!

実はここ10年のエミネムのアーティスト活動は活発そのもの。
事実上の復帰作となったのが2009年に発売されたアルバム『リラプス』です。そこからコンスタントにアルバムを出し続け、「ノット・アフレイド」やリアーナとコラボした「ラヴ・ザ・ウェイ・ユー・ライ」などのヒット曲も生み出しています。また2013年に発売されたアルバム『ザ・マーシャル・マザーズ・LP2』では「ラップ・ゴッド」という楽曲で超人的なラップスキルを披露し話題を呼びました。

しかしあの頃から全米アルバムチャート1位を取り続け、比較的安定したアルバムの売り上げを保っていながらも、世界的に見れば以前と比べて、あの人は今感がぬぐえないのは、彼が絶頂期にプロデューサー業に専念したこと。また私生活でのゴタゴタや親友の死、そして自身の薬物治療といった様々な要因が重なり、久しくワールドツアーなどの世界的なプロモーションを行なってこなかったことも原因の1つとなっているのではないでしょうか。来日公演も2001年と2003年の絶頂期以降は2012年のみ。薬物中毒を克服し、アーティストとして復帰してからは、アルバムを引っさげての大規模なツアーはまだあまり行われていないといいます。

最新作は『ミュージック・トゥ・ビー・マーダード・バイ』

そんなエミネムの最新アルバム『ミュージック・トゥ・ビー・マーダード・バイ』が2020年1月に発売され、同年2月には17年越しに当時は「「ルーズ・ユアセルフ」で歌曲賞を受賞しながらも式典を欠席したアカデミー賞の舞台へリベンジ&サプライズ登場を果たし、会場を沸かせました。しかし熱狂的なエミネム世代と、それを知らない若者との間で盛り上がりの温度差が生まれていたこともまた事実。なぜノミネートされていない今だったのかという疑問の声も上がる中、もしかするとアルバムを盛り上げるべく久々に大々的なプロモーションに打って出たのではないかと深読みしたくなりますね。ちなみに日本版は2020年3月4日に発売されています。

まとめ

爆発的な人気から早20年以上。一時は引退説まで飛び出したエミネムですが、心身ともに健康を取り戻した今、彼がこれからどんなことを仕掛けてくるのか!ヒップホップ界が生んだスーパースターの今後からもまだまだ目が離せません。また日本にも来て欲しいですね。

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