【INXS】世界的成功をおさめたカリスマロックバンドの光と影

【INXS】世界的成功をおさめたカリスマロックバンドの光と影

アルバム『Kick(キック)』で世界のミュージックシーンに躍り出た、オーストラリア出身のカリスマロックバンドINXS(インエクセス)。彼らの成功までの道のりとバンドを襲った悲劇を振り返ります。


INXS誕生

1977年、後にオーストラリアから世界に羽ばたいたカリスマロックバンドINXSが誕生しました。結成当時はThe Farriss Borthers(ザ・ファリス・ブラザーズ)として、シドニーのライブハウスを拠点に音楽活動を開始しました。



メンバー

バンド結成当時のメンバーは、ベーシストのGarry Beers(ゲイリー・ビアーズ)・キーボードと作曲を担当するAndrew (アンドリュー)・ドラマーのJon(ジョン)・ギタリストのTim(ティム)のFarriss(ファリス)兄弟・ギターとサックス担当のKirk Pengilly(カーク・ペンギリ)そしてリードシンガーのMichael Huchence(マイケル・ハッチェンス)の6人。



ファリス兄弟とその友人たちで構成されたバンドは、78年にアンドリューとマイケルの二人がハイスクールを卒業すると、プロのミュージシャン目指してデモテープの制作にとりかかりました。



Midnight Oil(ミッドナイト・オイル)との出会い

デモテープの制作とパブやライブハウスでのギグに明け暮れる彼らに、チャンスが訪れました。パプ「Narrabeen Antler(ナラビーン・アントラー)」でのギグを終えた彼らに一人の男が声をかけてきました。男の名前はGary Morris(ゲイリー・モリス)。ゲイリーは、当時オーストラリア国内で人気急上昇中だったロックバンドMidnight Oil(ミッドナイト・オイル)のマネージャーでした。



この出会いを機に、彼らはMidnight Oilの前座としてステージに立つようになりました。INXSというバンド名は、Midnight Oilのメンバーからの提案だったといいます。



Chris Maurphy(クリス・マーフィー)

INXSとしてパブでのギグを精力的に行っていた彼らは、Chris Murphyをバンドマネージャーとして迎え入れます。卓越したビジネスセンスを持つクリスは、INXSにシドニーベースのインディペンデントレーベルDeluxe Records(デラックス・レコーズ)との契約という一大事をもたらしました。



82年になると、クリスは方向性の違いを理由にレコード会社を移籍し、INXSの海外進出に向けて準備を開始しました。翌83年、INXS4枚目のシングルとなる『The One Thing(ザ・ワン・シング)』は、日本・北米・ヨーロッパ・東南アジアでリリースされ、INXSは、Stray Cats(ストレイ・キャッツ)やHall&Oats(ホール・アンド・オーツ)といったトップ・アーティストの前座としてステージに立つチャンスを得ました。



ロックバンドINXS

アメリカを中心に活動するようになったINXSに新たな転機が訪れました。当時大ヒットしていたDavid Bowie(デビッド・ボウイ)の『Let‘s Dance(レッツ・ダンス)』をはじめ、数々のヒット曲を生み出した、売れっ子プロデューサーNile Rogers(ナイル・ロジャース)が彼らに興味を示しました。ナイルがプロデュースしたシングル『Original Sin(オリジナル・シン)』は、バンド初となる全豪チャートNo.1を記録、音楽評論家の間でも高く評価される楽曲となりました。



ロックバンドへの転換を目指していたINXSは、次作のプロデューサーとして、Sex Pistols(セックス・ピストルズ)やPink Floyd(ピンク・フロイド)といった名だたるロックバンドのプロデュースを手掛けた、Chris Thomas(クリス・トーマス)を迎えました。1985年にクリスのプロデュースで製作された、INXSの5thアルバム『Listenn Like Thieves(リッスン・ライク・シーヴス)』がリリースされ、シングルカットされた『What You Need(ワット・ユー・ニード)』が全米チャート5位を記録する大ヒット。INXSは世界のミュージックシーンに躍り出ました。

アルバム「Kick』がもたらしたもの

『What You Need』の大ヒットを受け、次のアルバムもロック色の強いものにするべく、再度クリス・トーマスをプロデューサーとして迎えました。「収録曲全てがチャートインするようなアルバム」を目指して製作されたというアルバム『Kick』は、1987年にリリースされて以来、現在までに2,000万枚を超えるセールスを記録。INXSを、そして時代を彩る一枚となりました。



『Kick』からは、全米チャートNo.1に輝いた『Need You Tonight(ニード・ユー・トゥナイト)』を含む5曲がリリースされ、どの楽曲も全米・全英・全豪チャートなどで上位にランクイン。INXSは世界のトップアーティストの仲間入りを果たし、アルバムのヒットを受けて敢行したワールドツアーでは、どの会場にも隙間なく埋め尽くしたファンの歓声が響き渡りました。



その後もINXSの快進撃は続き、90年に発売されたアルバム『X(エックス)』も世界のメジャーチャートのトップにランクインし。INXSの人気を不動のものにしました。特にリードボーカルのマイケルは、「世界で最もセクシーな男」と称されるようになり、数々のセレブレティーとのロマンスが大きくメディアで取り上げられるようになりました。

マイケルとの別れ

カリスマロックバンドと呼ばれるようになったINXSは、92年に『Welcome to Wherever You Are(ウェルカム・トゥ・ウェアエヴァー・ユー・アー)』、93年に『Full Moon,Dirty Hearts(フル・ムーン,ダーティー・ハーツ』を、そして97年に『Elegantly Wasted(エレガントリー・ウェイステッド)』の3枚のアルバムをリリースしましたが、『Kick』や『X』のような成果をおさめるには至りませんでした。バンドとしての活動に翳りが見えはじめても、マイケルの「セクシーなスター」というイメージは変わることはありませんでした。

『Eleganntly Wasted』の制作を前に、マイケルに彼の人生を大きく左右することになる新たな出会いが訪れました。イギリスのテレビプレゼンターとして活躍していたPaula Yates(ポーラ・イェーツ)との出会いでした。ポーラが司会を務めたインタビュー番組にゲストとして出演したマイケルに、ポーラが一目惚れしたといいます。ポーラは当時エチオピアの飢餓救済プロジェクトBand Aid(バンド・エイド)を立ち上げたことで、一躍時の人となったBob Geldof(ボブ・ゲルドフ)の妻であり、ボブとの間に生まれた3人の娘たちの母としても知られていました。しかし妻であり、母であったはずのポーラはボブの元を去り、マイケルと生きる道を選択。マイケル・ポーラ・ボブの三角関係は、メディアで大きく取り上げられました。

マイケルとの暮らしが始まり、ポーラはボブとの離婚を希望しました。しかし子供達の親権を巡ってポーラとボブは壮絶な争いを繰り広げ、マイケルも矢面に立たされるようになっていきました。

ポーラの離婚が成立したのと時を同じくして、マイケルはポーラの体に自分の子供が宿ったことを知りました。96年、二人は生まれてきた女の子にHeavenly Hiraani Tiger Lily Hutchence (ヘヴンリー・ヒラーニ・タイガー・リリー・ハッチェンス)と名付けました。マイケルはタイガーの誕生を心から喜び、彼女を愛したといいます。

愛娘タイガーが生まれてからわずか1年足らずで、マイケルはポーラもタイガーもいない世界に一人旅立ちました。97年11月22日、マイケルは滞在していたシドニーのホテルで遺体となって発見されました。死因は薬物の過剰摂取による自殺。ポーラはマイケルの死を受け入れられず、自らも自殺を図ったといいます。そしてこれがきっかけとなり、ボブとの3人の子供達の親権はボブに委ねられ、失意のどん底にいたポーラはどんどん薬物に依存していきました。そして2000年、ポーラもまた薬物の過剰摂取により逝去。彼女の死は事故だったとされています。両親亡き後タイガーは、なんとボブが養子として他の3人の子供達と一緒に育てることになりました。

マイケル・ハッチェンス 享年37歳。マイケルの死は、あまりにも早く、そして突然訪れました。

マイケルのいないINXS

マイケルの突然の訃報を耳にした多くのファンや音楽関係者は「マイケルのいないINXSに存在価値はあるのか」と、考えたのではないでしょうか。

マイケルの死後、1年に及びINXSはバンド活動を停止し、その後の2年間は、オーストラリアの人気ロックシンガーJimmy Barnes(ジミー・バーンズ)やアメリカのポップアーティストTerence Trent D'Arby(テレンス・トレント・ダービー)をリードシンガーに迎えて、単発のコンサートには出演しました。そして2000年、Jon Stevens(ジョン・スティーヴンス)をリードシンガーとして迎え、INXSは本格的に音楽活動を再開。2005年にはJD Fortune(JD・フォーチュン)、2011年にはCiarann Gribbinn(キアラン・グリッビン)がリードシンガーを務めて活動を続けていたものの、2012年にINXSは活動中止を発表しました。

INXSというバンドにとって、マイケルは唯一無二のリードシンガーだったのではないでしょうか。

まとめ

マイケルの死後12年が経った2019年、マイケルの人生を綴ったドキュメンタリー『Mystify: A Musical Journey with Michael Hutchence(ミスティファイ:ア・ミュージカル・ジャーニー・ウィズ・マイケル・ハッチェンス』がリリースされ話題になりました。生前マイケルと親交のあったスターたちのマイケルとの思い出話が詰まっているといいます。

関連するキーワード


バンド ロック

関連する投稿


【訃報】英ロック歌手、オジー・オズボーンさん死去。ロックバンド「ブラック・サバス」など

【訃報】英ロック歌手、オジー・オズボーンさん死去。ロックバンド「ブラック・サバス」など

イギリスのヘヴィメタル・ミュージシャンとして知られるオジー・オズボーンさんが22日、亡くなっていたことが家族によって明らかとなりました。76歳でした。


ブルース・クリエイション『悪魔と11人の子供達』など、伝説的な日本のロックアルバム5タイトルがレコードで復刻!!

ブルース・クリエイション『悪魔と11人の子供達』など、伝説的な日本のロックアルバム5タイトルがレコードで復刻!!

日本コロムビアのカタログからカッティング・エッジな作品を世界に発信する再発プロジェクト「J-DIGS reissues」より、ブルース・クリエイション『悪魔と11人の子供達』などカルトな人気を誇る伝説的な日本のロック5タイトルがアナログ・レコードでリイシューされます。


英ロックバンド「オアシス」唯一の公式インタビュー本『スーパーソニック 完全、公式、ノーカット・インタビュー』が発売!!

英ロックバンド「オアシス」唯一の公式インタビュー本『スーパーソニック 完全、公式、ノーカット・インタビュー』が発売!!

光文社より、イギリスのロックバンド「oasis(オアシス)」の公式インタビュー集「Supersonic: The Complete, Authorised and Uncut Interviews」の翻訳書籍『スーパーソニック 完全、公式、ノーカット・インタビュー』の発売が決定しました。


奥田民生の還暦バースデー記念ライブ「UNICORN 奥田民生60祭『Let’s チリチリタミー』」の生中継が決定!!

奥田民生の還暦バースデー記念ライブ「UNICORN 奥田民生60祭『Let’s チリチリタミー』」の生中継が決定!!

フジテレビTWO ドラマ・アニメにて、奥田民生が還暦を迎える誕生日に東京ガーデンシアターで開催されるユニコーンのライブ「UNICORN 奥田民生60祭『Let’s チリチリタミー』」が独占生中継されます。


織田哲郎が語る「西城秀樹」というロックとは?「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」が放送決定!!

織田哲郎が語る「西城秀樹」というロックとは?「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」が放送決定!!

全国無料放送のBS12 トゥエルビで毎週木曜よる9時から放送中の「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」4月10日放送分にて、「昭和のスーパースター西城秀樹 誰も知らない素顔(後編)」が特集されます。


最新の投稿


プロレス四天王・小橋建太&田上明、博多大吉と豪華共演!トークイベント「Talkin' Dream」開催決定!

プロレス四天王・小橋建太&田上明、博多大吉と豪華共演!トークイベント「Talkin' Dream」開催決定!

プロレス界の黄金期を築いた「全日本プロレス四天王」の小橋建太氏、田上明氏と、"プロレス博士"として知られる博多大吉さんが集結するトークイベント「Talkin' Dream」が、2025年11月16日にLOFT9 Shibuyaで開催されます。夢の豪華スリーショットが実現!貴重な裏話や思い出話が聞けるチャンスです。


祝!放送55周年『サザエさん』が初のアーケードゲーム化!KONAMIから「まちがいさがし」が2026年春登場

祝!放送55周年『サザエさん』が初のアーケードゲーム化!KONAMIから「まちがいさがし」が2026年春登場

放送開始から55周年を迎えた国民的アニメ『サザエさん』が、コナミアーケードゲームスより初のアーケードゲーム化!タッチパネルで楽しむ「まちがいさがし」が2026年春に稼働予定です。アニメ本編の画像を使った問題や、2人対戦モードなど充実の内容で、小さなお子様からシニア層まで幅広い世代が楽しめる期待の新作です。


【懸賞金10万円】クレーンゲームの原点!国産初「クラウン602」全国大捜索プロジェクト始動

【懸賞金10万円】クレーンゲームの原点!国産初「クラウン602」全国大捜索プロジェクト始動

今年で誕生60周年を迎える国産初のクレーンゲーム機「クラウン602」の実機と情報を、タイトーが全国で大募集する「#クラウン602を探せ!」プロジェクトを開始。高度経済成長期に夢を与えた幻の筐体を次世代に継承するため、実機情報提供者には賞金10万円、思い出エピソードの提供者には抽選で最新ゲームソフトが贈呈されます。募集期間は2025年10月24日から2026年1月16日までです。


特撮愛あふれる「永遠のスケッチ」金谷裕~特撮画展が台場で開催!初代ウルトラマン・古谷敏氏も来場

特撮愛あふれる「永遠のスケッチ」金谷裕~特撮画展が台場で開催!初代ウルトラマン・古谷敏氏も来場

漫画家・金谷裕氏のイラスト画集『オール・ウルトラマン・スケッチ・ギャラリー』の刊行を記念し、「特撮画展~Hiroshi Kanatani TOKUSATSU SKETCH GALLERY~」がグランドニッコー東京 台場にて開催されます。円谷プロのウルトラマン・怪獣に加え、東宝など5社の特撮キャラクターのイラスト全235枚を展示。会期中の11月29日には初代ウルトラマンスーツアクターの古谷敏氏のサイン会も実施されます。


赤塚不二夫が生誕90周年!RIP SLYME、氣志團ら豪華出演陣が渋谷に集結する記念音楽フェス詳細発表

赤塚不二夫が生誕90周年!RIP SLYME、氣志團ら豪華出演陣が渋谷に集結する記念音楽フェス詳細発表

漫画家・赤塚不二夫の生誕90周年を記念したミュージックフェスティバル「コニャニャチハのコンバンハ!」の詳細が解禁されました。2025年12月5日・6日にLINE CUBE SHIBUYAで開催。RIP SLYME、氣志團、小泉今日子らが赤塚スピリッツ溢れるステージを披露します。チケット先行抽選は10月20日(月)からスタート!