【没後30年】手塚治虫の未完の遺作は3つ。本当の最期の作品は何?

【没後30年】手塚治虫の未完の遺作は3つ。本当の最期の作品は何?

平成が始まって間もない1989年2月9日、「マンガの神様」と呼ばれた手塚治虫が、スキルス胃癌により亡くなりました。終戦後、日本の漫画・アニメ文化の発展に大きく貢献した手塚治虫。本稿では、彼が晩年に描いた漫画・アニメ作品で、絶筆により未完のまま遺作となってしまった作品を取り上げます。


手塚治虫の「未完の遺作」は?アニメ作品として最期の作品も

生前より「マンガの神様」として日本の漫画界に絶大な影響力を誇った「手塚治虫」。1946年のデビュー以来、「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」など、昭和を代表する漫画・アニメ作品を数多く世に送り出してきました。そんな手塚ですが晩年はスキルス胃癌を患い、平成が始まって間もない1989年2月9日、この世を去りました。

手塚が亡くなった際、絶筆により未完のまま終了となった作品がいくつか存在します。死に際の状態であるにもかかわらず「頼むから仕事をさせてくれ」と語り、最期まで漫画家であり続けた手塚が遺した未完作品とはどんな漫画なのか、この記事でご紹介したいと思います。

音楽漫画『ルードウィヒ・B』

1987年から1989年にかけて「コミックトム」で連載されていた音楽漫画『ルードウィヒ・B』。ルードウィヒ・ヴァン・ベートーヴェンを主人公とした漫画であり、「ブッダ」に続く手塚が手掛けた伝記漫画としても有名です。

手塚は元々ベートーヴェンを好きな音楽家として挙げており、例えば「三つ目がとおる」では「雲名(うんめい)警部」というキャラクターを、「七色いんこ」では「エロイカ警部」というキャラクターをそれぞれ登場させています。そんな折、当時「エロイカ」を執筆していた池田理代子と対談し、その作品にベートーヴェンは登場するか否かを尋ねたというエピソードもあります。

こちらは池田理代子の「エロイカ」。

手塚の病状悪化により最後は駆け足気味に物語が進んだ『ルードウィヒ・B』ですが、完結まで辿り着くことなく「コミックトム」1989年2月号を以って絶筆となりました。しかし没後25年が経過した2014年、『ルードウィヒ・B』は舞台で蘇ります。この舞台には里見浩太郎、浅野温子らが出演し、ストーリーは未完ではなく完結まで描かれました。

社会派サスペンス『グリンゴ』

1987年から1989年にかけて「ビッグコミック」にて連載されていた『グリンゴ』。ブラジル日系人社会を舞台としており、主人公である商社マンを通じて「日本人とは何か」を問う社会派サスペンス漫画です。

この漫画は1986年に発生した実在の誘拐事件がモデルとなっており、ストーリー上の謎の多さから未完であることが悔やまれる作品となりました。なお没後13年が経過した2002年には、田中圭一によるリメイク作品「グリンゴ2002」が執筆されています。

漫画作品として最期となった『ネオ・ファウスト』

1987年から1988年にかけて「朝日ジャーナル」で連載された『ネオ・ファウスト』。晩年『グリンゴ』『ルードウィヒ・B』『ネオ・ファウスト』の3作品の連載を続けていた手塚ですが、その中でも完結にこだわり、最期にペンを入れていたのはこの『ネオ・ファウスト』でした。

ゲーテの「ファウスト」をモチーフとし、全共闘による学生運動真っ只中の日本を舞台として展開された『ネオ・ファウスト』。50年代から70年代を舞台とした第一部に対し、第二部では地球の始まりまで戻り、そこで「重要なもの」を現代に持ち込んでいく…という構想が練られていたと言われています。

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