稲川淳二による怪談の盗作問題
当事者や関係者、そして識者でなければ明確な線引きや幕引きは難しいと思われる「怪談」の盗作問題。
ミドルエッジ編集部(ミド編)は、かねてよりご好誼をいただいている元スタジオジブリの制作デスクで怪談作家の木原浩勝(以下、木原氏)が、この怪談盗作問題の当事者(被害者)という情報を入手し、そのことが事実存在するのか気になって調査した。
なお、本件について木原氏本人からの情報提供は受けておらず、今夏に流されたラジオ関西の番組「怪談ラヂオ~怖い水曜日」及び「別冊・怪談ラヂオ」での発言内容から、その裏付けとなるモノを探して回った次第である。
怪談ラヂオ~怖い水曜日 | ラジオ関西 JOCR 558KHz
ラジオ関西に送られた一通の手紙?4か月にわたって流された盗作問題
下記は木原氏が4か月にわたって語ることとなった稲川淳二盗作問題を収録した「別冊・怪談ラヂオ」より、各回のサマリーを引用したものである。
一通の封書が届いた…、という実にドラマ仕掛けのような展開から始まる4か月。
その間、リスナーの数が通常時の何倍にもなっていた(木原氏談)というのだから、正直我々としてもこのテーマについて語ってもらいたいというのが本音だった。
ただ本件はあくまでもラジオ番組で取り上げたテーマであったため、我々も事の成り行きをただ聴く他に術はなく…。
しかしながら2018年5月31日~10月4日という実に4か月にも及んだこのテーマについて、我々も何かしら一石を投じてみたいと考えた。
下記、このテーマのきっかけとなったのは「合意書」であることが確認出来る。
冒頭「一通の封書」という行がある。
結論から言うと、我々もおそらくこれと同じと思われる文面のコピーを入手した。
「合意書」と記されたその書面には当事者たちの捺印、契印が押されている。※後段にて記載
復刊された「新耳袋」が盗作扱い!?その「元ネタ」を辿ると…
盗作の事実、というよりも事が思わぬ形で露見することとなったのは、1990年に発売された後に1998年よりシリーズ復刊となった、木原氏と中山市朗氏の著作による「新耳袋」が稲川淳二の怪談を盗作したとする「事実」。
ところが…。
復刊した「新耳袋」が稲川怪談の盗作とされた訳であるが、事の発端はそもそも1990年に発売された「新耳袋」を稲川淳二が盗作した、というところにありそうだ。
「新耳袋」シリーズからの盗作問題はそもそも合意の上で?
Youtubeで「ワイドスクランブル」と検索すると、下記の動画がヒットする。
投稿日時からすると、今夏の木原氏のラジオ番組を聴いた人間によるものかもしれない。
タイトルには「2002年8月26日の放送」とあるから、その通りだとするならば今から16年前のこと。
シリーズ復刊した「新耳袋」が1998年であることから、1998年~2002年の間「新耳袋」は盗作として叩かれていた可能性があるのだろう。
この動画を観ると分かるのだが盗作として叩かれていた「新耳袋」ではなく「盗作された」とされる稲川淳二による盗作疑念の釈明がメインとなっている。
「新耳袋」盗作疑惑に端を発した盗作騒動が、この時期既に稲川淳二盗作問題となっていたことの証左であろう。
動画内で度々用いられているコメントを抜粋してみると…
「このなかで気に入った話があったら使ってくださいね。」 「はい、有難う。」
https://www.youtube.com/watch?v=55rbvLgv2loテレビ朝日「ワイドスクランブル(2002年8月26日放送)」 - YouTube
テレビ朝日「ワイドスクランブル(2002年8月26日放送)」 - YouTube
テレビ朝日「ワイドスクランブル(2002年8月26日放送)」 - YouTube
「本の中で面白いものがあったら使ってくださいという申し出があった。」というふうに稲川さんは仰っているんですけど。
https://www.youtube.com/watch?v=55rbvLgv2loテレビ朝日「ワイドスクランブル(2002年8月26日放送)」 - YouTube
このように、当事者間の合意形成がなされていたとするコメントが続いている。
疑惑として取り上げられたテーマだったようだが、とくに問題としてクローズアップされた形跡は感じられない。
番組で紹介された元ネタとなった「新耳袋」と、盗作疑惑がかけられた稲川怪談がそれぞれ下記作品。
焦点は合意形成の有無、入手した「合意書」
上記「ワイドスクランブル」を見る限り、とくに大きな問題となっている様子はない。
コメンテーターなかにし礼氏のコメントも正論とは思うものの、当事者間の合意がなされているならば問題ないのであろう。
ここに、ある書面のコピーが存在する。
ラジオ番組の冒頭部でも登場した「合意書」とおそらく同じモノと思われる。
この書面自体が本物かどうか真偽のほどは本人に確認するしか方法がないわけで、我々は木原氏にこの文面をみてもらった。間違いなく本物のコピーであろうとのことだったので、確認の上でここに掲載する。

中山市朗氏、木原浩勝氏、株式会社ユニJオフィスの三者間による合意書の写し1

中山市朗氏、木原浩勝氏、株式会社ユニJオフィスの三者間による合意書の写し2
この合意書の締結日は平成14年5月28日とある。
つまり2002年、先ほどの「ワイドスクランブル」放送の約3か月前ということになる。
10項目からなる条項のそれぞれを見る限り、この合意書作成に至った経緯を推し量ることが出来る。さらに、そのうえで時間軸が後ろであろう「ワイドスクランブル」での稲川淳二の発言を再確認すると…。
我々は、この合意書における合意前提となる各条項の遵守が契約締結日以降の三者間にあったのかどうかを木原氏に問うたところ、それは認められなかったとの回答を得た。
そのうえで、第4項に明記されている通り「合意書のコピー」を掲載するに至った。
以降、本合意書がおよそ反故にされているような下記の経緯を見るにつけ、果たして本件は平成のうちに解決するのであろうかと強い疑念を抱く次第である。
別冊・怪談ラヂオ