黎明期のゲーム、コンピュータ、コミュニティ事情を明快に記した名著
絶版本「ダンジョンズ&ドリーマーズ」の無償版PDFが配布開始
ブラッド・キング、ジョン・ボーランドの著作「ダンジョンズ&ドリーマーズ」が、訳者平松徹氏の尽力により無償公開されることになった。

ダンジョンズ&ドリーマーズ
『ダンジョンズ&ドリーマーズ』無償版PDF - 平松 徹 (Toru Hiramatsu) - BOOTH(同人誌通販・ダウンロード)
「ダンジョンズ&ドリーマーズ」はタイトル通りダンジョン(ゲーム)とドリーマー(プレイヤー)に焦点をあてた著作。
舞台は1980年代――コンピュータゲーム黎明期が中心で、当時の優れたゲーム作品とクリエイター、そしてそれ周囲に存在していたプレイヤーとコミュニティについてドキュメンタリー風に語られている。
だが単なるドキュメンタリーではなく、ゲーム、文化、技術、組織、時代についてそれぞれ考察されている優れた名著だ。
元々は2003年、ソフトバンククリエイティブより出版されていたが現在は絶版状態。
平松氏が著作権の移行と原著者への許可申請を行い、レイアウトを変更したPDF版が無償公開されることになった。
『ダンジョンズ&ドリーマーズ』無償版PDF - 平松 徹 (Toru Hiramatsu) - BOOTH(同人誌通販・ダウンロード)
なおこちらはBOOTHというサービスを用いて提供されている。
無料でダウンロードすることが可能であるが、逆に〝有料で購入することも可能〟になっている。
著者、訳者の仕事、近い分野や業界に興味がある方は投資(?)を行うことでその繁栄を願うのもおおいにアリだろう。
概要
ダンジョンズ&ドリーマーズ | ブラッド・キング, ジョン・ボーランド, 平松 徹 |本 | 通販 | Amazon
Amazonの商品説明の方ではもうちょっと突っ込んだ内容に迫っている。長文になるがこちらも引用しておこう。
ダンジョンズ&ドリーマーズ | ブラッド・キング, ジョン・ボーランド, 平松 徹 |本 | 通販 | Amazon
著者
ブラッド・キング
海外の書籍なので当然(?)著者は外国人だ。彼はカリフォルニア大学出身、ジャーナリズムの修士課程を修了している。〈米ボールスステート大学ジャーナリズム学部で准教授〉とあるがおそらく誤字で、ボールステイト大学のことだろう。
ジョン・ボーランド
フリーのライターにしてプログラマー。守備範囲は文化、技術、政治などと幅広い。ブラッド・キングの相方といったところだろう。
平松 徹
大阪外国語大学卒の翻訳家。本著の訳を担当している。
目次
目次はおおきく3部に分かれており、《第1部 コンピュータゲームの夜明け》《第2部 ネットワークゲームの時代》《第3部 プレイヤーの時代》と分けられている。
○○の時代、○○の時代という分け方を見るとなんとなくAge of empireを思い出す方もいらしゃるかもしれない。
そしてその最初と最後に《プロローグ――すべての始まり》と《エピローグ――新たなる旅立ち》がある。エピローグの後には謝辞、訳者あとがき、参考文献と続く。
さておわかりの方もいるだろう。この本、かなり真面目である。
1部が1~4章、2部が5~7章、3部が8~10章という構成をとっているが、それぞれの章が15~30ページ程度のボリュームを持っている。合計300ページ超。実際に手にとってみれば結構厚いものになっていただろう。そこに、参考文献付きときている。
というわけでこちらは単なる《名作ゲーム紹介本》ではない。
それぞれのゲームの紹介があり、成立した原因と結果についての考察があり、時代背景について、技術について、文化について語られている。
Amazonのレビューでも触れている方がいたが、この本の登場が15年前――2003年だからといって今読む価値が低いかと言えばそうではない。
コンピュータゲームの黎明期をまとめ、当時の〝眼〟をもって観察したことは一種の偉業だったと言えるだろう。
《D&D》について
プロローグで触れられている《D&D》について少し触れておこう。

ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック
ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック第4版 (ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック) | ロブ ハインソー, アンディ コリンズ, ジェームズ ワイアット, 桂 令夫, 岡田 伸, 北島 靖巳, 楯野 恒雪, 塚田 与志也, 柳田 真坂樹 |本 | 通販 | Amazon
《RPG》という単語を聞いてまず何を思い浮かべるだろう?
日本で知名度が高いのはファイナルファンタジー、ドラゴンクエスト、テイルズシリーズというあたりか。
どれも機体にセットするかインストールして遊ぶタイプのゲームソフトである。そしてジャンルがRPG――すなわちロールプレイングゲームとなる。
これらのゲームソフトは1人プレイが基本であり、プレイヤーは勇者や戦士といった主人公となり、仲間を集めてパーティを組み、魔王を倒したり世界を救ったり物語を見届けたりする。
D&D――「ダンジョンズ&ドラゴンズ」はちょっと違う。
冒険をするという意味では同じだが、こちらはTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)と呼ばれる種類のものである。
ルールブックに則ってGM(人間)がマップや敵、シナリオを用意し、戦士(人間)や魔法使い(人間)や盗賊(人間)がパーティを組み、その冒険のクリアを目指していく。
ステータスや持ち物は紙に書き、技を使う時や探索時にはサイコロを振ってその数字によって判定する――というアナログなゲームだ。
手間や人数、時間が必要なこともあり、テレビゲームとしてのRPGが流通して以降はしばらくコアな趣味になっていたような印象だが、近頃はオンラインコミュニティの発展にともなってまた流行の兆しを見せているようである。
なかには《冒険をしてモンスターを倒す》という王道のものばかりではなく、強く管理されるディストピア世界で暮らしてみたり、記者や調査団の一員となってとても現実とは思えない超常現象に出会いながらも正気度を保っていく――という特殊なゲームもある。

クトゥルフ神話 TRPG
クトゥルフ神話 TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ) | サンディ ピーターセン, リン ウィリス, 中山 てい子, 坂本 雅之 |本 | 通販 | Amazon