17歳のカルテ
2000年に日本で公開されたアメリカ映画。
原作は1994年に出版されたスザンナ・ケイセンによる自伝から元に作られた。その自伝にウィノナ・ライダーが、めちゃくちゃ惚れ込んで映画化権を買い取り、制作総指揮を買って出ました。
精神病棟の、いろいろな悩みを抱えている女の子たちとの交流&成長物語です。
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ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリーを始め、ブリタニー・マーフィやクレア・デュヴァルなどの若手演技派女優の競演も見所の一つ。”
(wikipediaより引用)
主演の紹介
ウィノナ・ライダー(スザンナ)
ウィノナが演じる“スザンナ”は、抑うつを患う17歳で大人しい性格。感情のアップテンポが激しく、ある日、境界性人格障害と診断される。いつも不安に苛まれ、突発的に薬を大量飲用しお酒を飲んだ後で両親から精神病棟の入院を勧められ病棟に入ることになりました。
映画の終末には、スザンナがルールを違反してでも不安で悲しんでいるある仲間にギターを弾き、歌った『恋のダウンタウン』が流れるのでした。
実際のウィノナ・ライダーも高校では芸能活動をしていたことや華奢でボーイッシュな容姿を理由に酷いイジメを受けていたため、通学を免除されリポート提出をもってそれに代わる処置を施され卒業する。
10代の頃に境界性パーソナリティ障害を患っていたということを後に告白しています。
芸能生活では、12歳の時にオーディションに合格して舞台に出るようになりました。
アンジェリーナ・ジョリー(リサ)
病棟のボス的存在。
看護師に対して(差別的な視線を向けてくる人にも)凶暴で反抗的。
エキセントリックな脱走の常習者。
この役ではパワフルで凄まじい演技力を発揮し、『17歳のカルテ』でアカデミー助演女優賞を受賞。
監督の紹介
ジェームズ・マンゴールド
1995年に『君に逢いたくて』で映画監督デビューを果たしたのち、
『コップランド』 『17歳のカルテ』 『ニューヨークの恋人』
最近はミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』なども手掛けた。
17歳のカルテ あらすじ
抑うつ的で、精神が不安定な状態が毎日続く少女・スザンナが、アスピリン1瓶とウオッカ1本を飲みほし、病院に担ぎ込まれるところから始まります。
両親の了承のもとに、精神病棟に強制入院され、そこの心に闇を抱えながらも、個性豊かすぎな患者たちと交流したり問題起こしたりし、その中で、自分の内面と(第三者の世界との折り合いを見つけつつ)見つめていく……。
ファンの感想
私も10代に見てたら、たぶんただただ衝撃を受けて絶句していたでしょう。あの圧巻の演技。
守ってあげたくなるような少女でいて、実は負けん気の強い少女、でもか弱い“不器用”が似合う少女。なんと形容したらいいのかわかりませんが、ただそこにいる圧倒的存在が凄かったですね…!
1960年代という背景
この映画は「60年代後半」の反社会性が時代背景にあります。
60年代後半と言えば、伝統や制度に縛られた社会生活を否定する事を信条とした、ヒッピー(伝統・制度などの既成の価値観に縛られた人間生活を否定することを信条とした考え方)や反戦思想の時代でした。つまりその時代背景を「精神病」と言う形で描写しているのです。ラストのシーンで、「70年代には入院患者の殆どが社会に戻った」と言う独白から、彼女達の大半は「精神病」ではなかったかもしれないと推測します。異常ではなく「異常なフリ」をしている様に見えるのです。少しでも異常な行動や言動を取ると異常者に仕立てられる。それが世の中に対する不信や逃避を生み、彼女達の精神を追い込んだのかもしれませんね。
ちなみにスザンナやウィノナが罹った境界性人格障害(ボーダーライン・ディスオーダー)はチャールズ皇太子の王妃だったダイアナも罹っていました。
境界性人格障害や拒食症、アルコール依存症、虚言症といったさまざまな患者の女性が登場し、とても複雑なテーマを題材にした作品だが、監督は作品のコンセプトを「オズの魔法使い」と結びつけたのこと。「オズの魔法使い」は、12歳頃の子供向け文学作品で、空前の人気作品になり、映画化され、TVドラマ化され、ミュージカルにもなりました。ストーリーは、米国カンザス州に暮らす少女ドロシーは、家ごと竜巻で、不思議な世界「オズの国」へと飛ばされ、いろいろな不思議な人と出会い、それそれの願いをかなえてもらうために「エメラルド」を目指すという話です。
つまり、スザンナは世の中の仕組みと自分の中の内面との間に“帰る道を探そうとしている女の子”。何が彼女たちを不安に陥れたのかという安易な謎解きにたよることなく、不安の本質を真摯に見つめている。この映画を見れば、人は誰だってどこか不完全なんだと気付くのではないでしょうか。
恋のダウンタウン
「恋のダウンタウン」は、ペトゥラ・クラークが1965年に発売し、世界的にヒットした歌でした。
こちらの歌、劇中でもたびたび流れています。
元々はスザンナがタクシーで病院に向かっていく時に流れていたのをひょんなことから夜中、心が沈んでしまった入院仲間にこの歌をギターで弾きながら歌います。(※もちろんルール違反でした)
そしてラストにでも流れる「恋のダウンタウン」はスザンナにとって思い入れ深い曲となったのでした。
17歳のカルテのタイトル由来
日本語題には「17歳」という言葉が使用されていますが、これは2000年に17歳による少年犯罪が連続して発生し、マスコミが「キレる17歳」という言葉を流行させた影響であるため。原題にも物語にも17歳という言及はないが、原作者のスザンナ・ケイセンは17歳の時にアスピリンを大量に飲んで自殺を図り、精神科に入院していることで関連付けられたと予想します。
原作
1994年にスザンナ・ケイセンによる自伝を日本語翻訳した書籍がこちら。
思春期病棟の少女たち
作者のスザンナ・ケイセン自身、精神病院で2年間を過ごし、それまで人に明かしたことのなかった人生の一時期の光景をスケッチ風に綴り、退院から25年後に出版しました。この鮮烈な真実の物語は即座にベストセラーになり、ニューヨーク・タイムズで11週間もランクインしました。
映画と原作にはそれぞれ異なった魅力もあるのでこちらもおススメいたします。
感想
主人公のスザンナがアスピリン1瓶とウオッカ1本を飲みほし、病院に担ぎ込まれるところから始まります。最初は何故自分が精神病棟に入らなければならないのかと不満をこぼしていましたが、冒頭の病院に向かうシーンで運転手の男性に「(精神病棟に)馴染むなよ」という言葉を投げかけられていたのにもかかわらず……馴染んでいくスザンナに危うさを感じながら、
自分でもこれは馴染んでしまうなと思ってしまうほど、
この仲間の間での空気が見ていて心地よかった。
そう思わせてくれたのは何よりもリサの存在でしょう。
ただもう、リサを演じたアンジェリーナの反社会的なカリスマ性が潔くかっこよかった。
そんな彼女にも8年という長い闘病生活を送っているのだという。
物語が進む行くにつれて、主人公・スザンナを演じるウィノナはそのリサの弱さを見抜いて看破し、自分の平常さを見出して、世の中に立ち向かう鋭気を得る話でした。
関連リンク
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