『ガンプラり歩き旅』その64 ~番外編 輝く銀河を駆け抜けるダイターン3!(後)~

『ガンプラり歩き旅』その64 ~番外編 輝く銀河を駆け抜けるダイターン3!(後)~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をしてきた『ガンプラり歩き旅』。 今回は前後編で、ガンプラブームと共にロボットプラモブームを牽引した、アオシマ製プラモデル群から、『ガンダム』の富野由悠季監督の名作『無敵鋼人ダイターン3(1978年)の、当時のプラモデルや最新キットを紹介していきます!


どうであろうか。
関節の可動範囲はいろいろ再設計の余地はあるが、1978年当時のアニメの、変形メカのプラモデル化としては、今にも通じるクオリティがあるといえるのではないだろうか?
合体ロボットシリーズは、イデオンは、設定にない武装だらけにされながらも、最小の差し替えパーツで車両3種メカへと変形をやり遂げた。ザンボット3はロボット形態での関節可動には難があるが、イデオンの1/600版レベルでの3機変形合体を成し遂げた。ダイターン3はシンプルな変形とはいえ、ほぼ完全にアニメイメージの3形態変形を完遂させた上で、アクションフィギュアとしても及第点の仕上がりをみせた。
これは当時のバンダイのガンプラにもなかったプレイバリューと方向性である。

合体ロボット版の、ザンボット3、ダイターン3、イデオン

作風やトレンドがどうであれ、合体するロボットは合体する玩具が、変形するロボットは変形する玩具が欲しいのが当たり前なのが児童層である。
いや、当時は安易な玩具的変形と合体を否定していたバンダイのガンプラでさえ、今となっては『機動戦士ガンダム』のコア・ブロックやGアーマー、『機動戦士Zガンダム』(1985年)以降の変形型モビル・スーツの、完全変形とアクションフィギュア性の両立を求めてやまない。

今回用意できた3種のアオシマダイターン3。左から、アニメスケール、合体ロボット版、ポケットパワー版

0年代初頭、ガンプラをはじめとする、バンダイのベストメカコレクションシリーズがなぜ受け入れられたかと言えば、プラモ化されたロボットやメカたちが、当たり前のようにテレビの中での活躍を再現できていたからであり、それは1/144ガンプラでこそ、関節可動フィギュア方向でブレイクしたが、バンダイのベストメカコレクションも、合体ロボットは正しくアニメ通りに合体させていた商品履歴がある。

アオシマの独特の合体アレンジセンスだけをあげつらって、イマドキの「当時を子どもで過ごさなかった人達」が嘲笑する流れを否定するつもりはないが、当時のアオシマのロボットプラモデル群には、ガンプラにはない「子ども達に創造という想像を与えよう」という、背筋の通った大人の気概のようなものを、今回の連載の、イデプラ以降の一連の流れで確認させてもらった次第である。

これで筆者による、アオシマ製富野ロボットプラモデルの旅は終わるが、アオシマのプラモデルが80年代初頭において、既に現代最新のバンダイの技術に拮抗できるポテンシャルを秘めていたことは、イデオンやザンボット3の比較でお分かりになっていただけたと思う。
「あの時代に生まれた物」が、現代でも価値を持ち続けるというのは、それらの時間をずっと過ごしてきた好事家から言わせていただければ、こんなうれしいことはない(あ、最後の最後でアムロの台詞になっちゃった(笑))

さて、次はシミルボン連載で主役を張る、ダイターン3のソフビ製ガレージキットの紹介である

浪漫堂 DX FLEXIBLE ROBOT KIT ダイターン3 2000年6月 9800円

アニメ設定画に忠実なフルアクションフィギュア完成体

今回は、ガレージキット(以下・ガレキ)の世界で、90年代初頭辺りに流行った、ソフビ製の組立キットを用意して、それを完成させて再現画像の主役に用いることにした。
この商品に関しては、見つけるまでは無知ゆえに知らず、なので本編再現のダイターン3も、アオシマ合体ロボット版でやってしまおうと思っていたのだ(それぐらいアオシマ版は出来が良かったのだという意味に受け取って下さい)。
筆者のポリシーと懐具合的には、超合金魂をこの再現画像シリーズで用いたくなかったというのもある。

この商品を紹介するには、ここからは少し長めに尺を使って、「ガレキとはなんぞや? ソフビキットとはなんぞや?」を先に解説しておかなければいけない。
ガレキ=ガレージキット=駐車場で少数生産されるホビーキット、というのは、海外での発祥がいつなのかはともかく、今で言うアニメや特撮の、メカや怪獣や美少女がガレキとして日本で作られ、売られ始めたのは、80年代中盤頃合いだったと思われる。

ガレキと区別するために、通常のプラモデルはインジェクションキットと呼ばれることもあるが、要するにガレキとは、大企業ほど資本もマンパワーも生産工場システムも持っていないインディーズメーカーや素人程度でも、「原型を複製したパーツをパッケージしたキット商品」であれば作れる、売れるというのが前提条件で、簡単に言ってしまえば「プラモデルの同人誌」の“ようなもの”である。

日本のアニメ、特撮等のメカやキャラをガレキとして販売し、最初に話題になったのは、後にチョコエッグ等でミニフィギュアバブルを起こした海洋堂と、後にアニメ制作会社ガイナックスに育つ前のゼネラルプロダクツが有名であった。

そもそも海外ではミリタリーモデル等が流通していたガレキの基本どおり、当時から現在に至るまで、その製造過程はシンプルである(最近は3Dプリンター等出てきたのでそうとは限らないが)。
まず、原型を作り、それをシリコンで型どりする。そしてその型にレジンという、液状の樹脂素材を流し込み、それが硬化したところで型から抜けばパーツが一つ完成する。それを集めたのがガレキというのが基礎知識だ。

既存の大メーカーのインジェクションキットでは、金型コストがまず数千万円かかるし、流し込み用のプラ素材などのランニングコストも馬鹿にならない。
しかし、好事家の集まりでも、プラモデルではないが、プラモデル並みの精度と原型再現性を保った少数量産品を作り売ることが出来る。これがレジンキャストキットの強みだった。

ダイターン3! 我とあり!

80年代。時はまだバブル崩壊を直撃していない時代。
レジン系のキャストキットは瞬く間に脚光を浴びて、ワンダーフェスティバルを初めとして、JAFCON等の(コミケのような)ガレキの同人イベントがいくつも開催されて、人気ディーラーやカリスマ原型師などまで誕生していた。

しかし、ガレキ、特にレジンキットには、一つの大きなハードルがあった。
「離形剤」
生産時に、上で書いたようなプロセスを経るゆえ、硬化したレジンのパーツをシリコン型から抜くときに、型を破損させないように、液体レジンを流し込む前に、予め型に塗っておく剥離剤の役目をする油である。
ガレキを買ったエンドユーザーが、まず最初にやらなければいけないのが、この離形剤をパーツから洗い流す作業なのだが、これがまた、頑固どころではなく、その落とし方に正解がない。普通にどこのキットの離形剤も、洗剤で洗った程度では落ちてくれない。「中性洗剤を入れたお湯で鍋で煮る」「中性洗剤とクレンザーを混ぜたペーストを、使い古しの歯ブラシにつけてパーツをゴシゴシこする」「自動車用品のブレーキクリーナーに数日間漬け込む」等々、ガレキ愛好家単位で対抗策を立ててはいるようだが、ガレキブーム最高峰の頃には、生産数とコストを優先した結果、各メーカーの離形剤頑固率がさらに跳ね上がった。

この離形剤。放っておけばいいじゃないかと言えば、絶対そんなことはなく、これをまず落とさないことには、塗料も接着剤も全てパーツ表面の離形剤がはじいてしまって、塗装も接着も何もできない。
なので離形剤落としは必須の第1工程なのだが、これがいきなりラスボス級の存在なのでエンドユーザーを悩ませる。
挙句には、ツワモノの中には「サンドペーパーで全パーツをやすりがけして、パーツの一番表層の皮を一枚削り落とす」という荒業で対抗する人まで出てくる始末。もう「ガレキは初心者にはハードルが高い」なんてものじゃない! 作るのに、準備作業をしようとするだけで、ファミコンの『たけしの挑戦状』みたいなレベルなのだ!

他ならぬ大河さんも、離形剤対策に嫌気がさして、レジンキット制作からは遠のいてしまったが、かなりこの離形剤問題はガレキ業界に危機感をもたらしたようで、80年代の終わりには、今や完成品フィギュアで名の通ったコトブキヤ等が「離形剤を使っていないレジンキット」を開発して、賞賛を浴びた時期もあったほどである。

そこで「ソフビキット」が生まれたのであった。
「そこでって言われても」と、戸惑う読者さんも少なくないと思う。
ソフビと言えば、誰もが思い浮かべるのが、昭和の高度経済成長期から子どもの玩具の王様で、今も絶えない「怪獣人形」の、あの素材である。
正確には塩化ビニール。
メッキで形成された型の中に、熱して溶けた塩化ビニールを流し込み、冷えたら型から抜いて一つのパーツが出来上がり、それを組み合わせて怪獣人形は生産されていた。
ソフビは、レジンキットほど精密な原型ディテールの再現は出来ないが、金型コストやランニングコストはプラモデルよりぐっと安い。
パーツ分割も、シリコン型からのレジン抜きでは不可能な角度や形状のパーツも一つのパーツで抜けるので、複雑なデザインの立体の量産に向いている。
関節可動は、それこそ怪獣人形で手足を動かす「嵌着(かんちゃく)」が決め手となった。実際のガレキでは、ソフビでボールジョイントを形成したり、ABS樹脂やプラスチックパーツのフレームなど、サブマテリアルを用いている物も多いが、ソフビ素材だけで構成されているフルアクションキットも少なくなかった。
そしてなにより「離形剤がいらない」これが大きな決め手となった(正確には「レジンキットと比較すれば問題にならないぐらい影響が軽度)。

時は90年代に入る頃。それまでレジンキット一色だったガレキ市場に一気にソフビキット旋風が吹いた。
ソフビキットは、面倒な離形剤がないばかりか、組立も簡単で、極端な話、作るだけなら、アートナイフ一本と瞬間接着剤とドライヤーさえあれば出来てしまう。
塗装だって、サフェーサーを吹かなくても、プラモデル用のMrカラーで塗装が出来てしまう。
ガレキ市場は、緻密な再現性をあえて捨て去ることによって、一気に「初心者お断り」の看板を下げることが出来て、ガレキ初心者も多くがこれらの商品に飛びついた。

まずはさすがの海洋堂。当時ブレイクしていた『機動警察パトレイバー』(1988年)に目をつけ、これの1/35 ガレキシリーズをソフビで展開してみたところ大ヒット。

海洋堂 1/35 『機動警察パトレイバー』イングラム パッケージ

続いては、当時Larkというホビーショップが立ち上げた(海洋堂もゼネプロも、どこも最初はショップだったメーカーは多い)Waveというメーカーが、ソフビキットのリアルロボットガレキを次々と商品化して喝采を浴びた。

まず、『聖戦士ダンバイン』(1983年)に登場するオーラ・バトラーを、海洋堂のパトレイバーと同じく1/35で展開。

Wave 1/35 『聖戦士ダンバイン』 ダンバイン パッケージ

デザインにアレンジを加えはしたものの、発売する商品は放映当時、バンダイがプラモデル化しなかったオーラ・バトラーを中心に据えて、最終的にはソフビ同士の嵌着と可動だけでビルバインの完全変形を成し遂げるキットまで発売されて、今でもこのシリーズのファンは多い。
こうなるとWaveの勢いは止まらず、ガンダム関係でも(まだこの頃はHGUCもMGもなかったため、一度放映が終わった作品で商品化されなかったメカは、二度とバンダイからは出ないと思われていた)『機動戦士Zガンダム』のジ・Oを1/144でリリースするなど積極的に動き、そしてこの時期のソフビキットムーブメントの象徴ともいえる「1/100 サザビー」を売り出し業界に衝撃を与えた。

Wave 1/100 サザビー パッケージ

Waveの1/100 サザビーは、もちろんバンダイのガンプラが、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)の1/100では、商品化されたのがνガンダムだけであることに目をつけ、狙って企画されたものである。
さすがに大型キットなので、ソフビだけではなく、プラスチックで構成されたフレームに、ソフビの装甲を付けていく構造で発売。その商品の出来もさることながら、わざわざボックスアートに、ガンプラで1/100 νガンダムのボックスアートを描いた高荷義之氏を招いて、それと対になる構図と統一感でパッケージをデザインしたことが話題になった。

怪獣ソフビキットの側では、多分こちらの方が先なのだろうが、ビリケン商会という老舗の怪獣系ガレキメーカーが、初代ゴジラや初代ウルトラマンなどを発売展開。その脇で、ファルシオンなる中堅メーカーが、『帰ってきたウルトラマン』に登場したタッコングやツインテール等の怪獣を、超絶的な出来栄えでリリースして伝説になるなど「やはりソフビと言えば怪獣だろう」というエピソードも多かった。

しかし、そんなソフビキットも、一過性のバブルのように消え去り、今ではロストテクノロジーかオーパーツ扱いされている(だから大河さん、今回ここまで「ソフビキットとは」の長文を書いたのよ)。
その理由としては、2000年代を境目に、完全にコトブキヤや海洋堂やWaveのビジネススタイルが「PVC製の塗装済み完成品アクションフィギュア」へ移ってしまったということ。
そしてそうなる副次的要因としては、ソフビキットがここまで何度も書いてきたように「原型の細かいディテールを量産品で再現しきれない」のと、あと「熱に弱い」というのがあった。

この後、組立プロセスでも記すが、塩化ビニールは高温では柔らかくなり、常温では固まる。それは良いのだが、ソフビは物が大きく肉厚が薄いと、日本の夏の暑さ程度でもふにゃっと柔らかくなって歪んでしまうのだ。
夏場の暑さで歪んでしまったり、家に帰ってみたら倒れていたり、パーツが外れてしまうなどのトラブルが後を絶たず、モデラー諸氏はそこで「ソフビキットの脚のパーツの中に石膏を流し込んで固めて重りにしておく」等も提唱したが、そんな手間をかけるぐらいなら、最初からライトユーザーは食いつかない。それゆえ、ソフビキットは完成品フィギュアの時代を待たずとも、遠からず淘汰される運命にあったのかもしれない。

さて、ここでようやく、今回のダイターン3のキットの話題に移ることになるが。
延々とここまで長い前置きを書いておきながら、まだ少し前置きは続く。

今回紹介する、ダイターン3の「完全塗装済み(ここ、後々試験に出るからしっかり記憶しておいてね)ソフビ製フルアクションキット」を発売したのは、浪曼堂という、かつて存在していたインディーズメーカーの商品である。
「浪“漫”堂」ではなく「浪“曼”堂」であるところがポイント。

浪曼堂はガンダムシリーズのガレージキットから始まって、ポリストーン製アクションフィギュアや、『キン肉マン』のアクションフィギュア、またタカラの復刻に先駆けて「ミクロマン」の正規版権商品展開も手掛けていた。
このメーカーの拘りもなかなかのもので、塗装済みポリストーン製のパーツをボールジョイントで繋ぐザンボエースのアクションフィギュア等は、わざわざノーマルパーツとは別に、最終回のエンディングで破損された腕部や脚部等がついていて、感動のラストシーンバージョンと差し替え可能にしていたりした。

しかし、最初に「ガレージキットは好事家の趣味」というようなことを書いたように、ガレキは模型作り中級者以上の趣味と言われているとおり、歴代のガレキは、どれだけ大手メーカーの玩具やプラモとパッケージや見た目が似てようが、どこかで間が抜けていたり、商品仕様の詰めが甘かったりするものなのである。

今回紹介するダイターン3は、その浪曼堂が90年代末から2000年代初頭にかけて、に「DX FLEXIBLE ROBOT KIT」というシリーズ名で発売した商品の一つ。
他のラインナップでは、ライディーン、ボルテスV、ザンボット3、ダンガードA、ゴーショーグンなどがあったらしい。

浪漫堂 DX FLEXIBLE ROBOT KIT ダイターン3 パッケージ

パッケージだけ見ると、まるで一流玩具メーカーの完成品フィギュアのようである。
いや、まぁ、今はここでは何も言うまい。この後、読者の皆さんと、一緒に組立工程を見ていこうではないか。
とりあえず、中をあけてみよう。

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