小説版をソノラマ文庫で読んだ世代には、バズーカはこのデザインのままで充分!
筆者の世代は、シャア専用リック・ドムのビーム・バズーカと言われれば、普通にジャイアント・バズと同じ物を思い出すし、それはG3ガンダムのカラーリング同様、「公式で一度、“それ”が描かれたのだから、それで当たり前」と刷り込まれたのだ。
ところが、である。
カラーリング的には自由度の高かったシャア専用リック・ドムにおいて、ここでもまた、奇妙な「後付け設定改変」が起きた。
要するに、「実体弾を発射するジャイアント・バズと、ビームを発射するビーム・バズーカが、同じデザインではおかしい」と。
まぁ、先に突っこんでおけば、18m級の人型兵器が使用するマシンガンだのバズーカだのが、人間の兵隊が使う物とディテールまで似せて構造が成り立ってること自体がおかしいので、逆をいえば 20m級の兵器であれば、それこそ戦争における経費削減優先で、外側の装甲こそ同じでも、中身の構造だけごっそり入れ替える、なんて方がリアリズムがあるような気もするのだが……。
シャア専用リック・ドムとセットで入手できる、HGUC 021版ガンダムの成型色替えG3ガンダム
とりあえず、サンライズ、バンダイは、表向きは「一年戦争当時、ジオンはビーム兵器の小型化においては連邦より遅れて劣っていた。なので、モビル・スーツの携行用バズーカであっても、予想を遥かに超えた大きさと武骨さで、急ぎ繕いの感が拭えない、試作型っぽいビーム・バズーカを新たにデザインした方がリアリティがある」という理由で、なんだか角材みたいな、どでかい長方形箱型の、いろいろチューブやメカが露出している、いかにもっぽいイマドキ風のデザインのビーム・バズーカをデザインして公式化したのだ。
小説版の青鉢氏のイラスト的には、こちらの方がプロポーションが合うのかも!?
それだけではなく「試作型のビーム・バズーカを扱えるモビル・スーツはリック・ドムだけだろうし、仮に試作型だったとしても、シャアにだけ与えられたとも考えにくいし、小説版ガンダムでのリック・ドムは、量産型でもビーム・バズーカが標準装備だったし」という、分かるような分からないような理屈で、様々に展開しているモビル・スーツ商品のリック・ドムに、片っ端から「それ」をオプションで付属させるようになったのだ。
『G3ガンダム+シャア専用リック・ドム』セットのG3ガンダム。決して悪くはないのは、元のキットの素養が良いから
要するに、表向きはそれらしい理屈が付いているが、本音のところで言えば、「G3ガンダムのパープル」と同じで、リック・ドムをドムと別個に商品展開するのに、スカートとバーニアの違いだけでは“弱い”、しかし、公式の元祖アニメ版で同じに描かれている以上、それ以上の余計な差別化は出来ない。では、「アニメには映らなかったところで」を公式化してしまえばいい。という商的なロジックで、イマドキの角材ビーム・バズーカが成立しているというのは、結果論的には概ね当たっている。
なので、筆者は今回は、初心に徹して、朝日ソノラマ文庫版と、青鉢芳信氏のイラストに敬愛の念を込めて、あえてキットに付属されていたビーム・バズーカパーツには一切手を付けず、ありがたいことにシャア専用リック・ドムのキットにも残されていたジャイアント・バズのパーツを使って「朝日ソノラマ文庫版、青鉢芳信イラスト版」の小説再現画像を作ることにした。
ここでようやく、このキットの解説に入るのだが(長い前置きだなぁ(笑))。
今回用意したガンプラは2つ。
一つは『G3ガンダム+シャア専用リック・ドムセット』で、HGUCでガンダムとドムが出そろい終わった、2008年に一般発売された物。
この商品は、既発売のHGUC 021 ガンダムと、HGUC 059 ドム/リック・ドムの2つが成型色替えでセットになっているだけという仕様。
ガンダムの方のコア・ファイターは、そのまま中途半端な色分けでパーツが残されているが、シャア専用リック・ドムの方の、「ドム用のパーツ(足裏、スカート、背部バーニア等)」は付属しない。
『G3ガンダム+シャア専用リック・ドム』セットに付属する、ロービジカラーのコア・ファイターのパーツ
成型色以外の、模型としてのポテンシャルは、それぞれ既にこの連載の、以下のページで紹介したとおり。特に付け足す事項もない。
ただ、あえてこのセットのキットを評価するべき点としては、改変後のカラーリングで成型しながらも、元デザインにあった「G3マークと、肩の三本線」を、シールとして付属させていたこと(もっとも筆者は、G3ガンダムは後のHGUC 191 REVIVE版を使ったために、シールもそちらに貼ってしまったが)と、組み立て説明書を兼ねるガイドブックが、近年では珍しいほどに、富野氏の小説版への愛情で溢れた解説が満載だったということ。
あぁバンダイにも、公式設定を越えて、小説版を愛している人もセクトにはいるのだなぁと感心させられたが。
もっとも、G3ガンダムとシャア専用リック・ドムをセットにしている時点で、小説版への敬愛が満載の商品なのは当然で、筆者としては悪い気分はしない。
『G3ガンダム+シャア専用リック・ドム』セットの解説書。読んでいるだけで感動モノのテクストが嬉しい!
一方、シャア専用リック・ドムの方は、ほとんどキットをそのまま組んで、胸と肩のシールも貼っただけの素組だが。
先ほども書いたが、シャア専用リック・ドムの「シャアの赤」の色味は、商品単位で様々な解釈があって面白いのだが、今回のHGUCセットのケースでは、ちょっとメインの「濃い方の赤」が、あまりにも焦げ茶色に偏り過ぎていて、俯瞰してみても、お世辞にも「深紅のドム」には見えないなと思ってみたり。
『G3ガンダム+シャア専用リック・ドム』セット版のG3ガンダムのバックショット
しかし。
そもそも「公式カラー設定のない、シャア専用リック・ドム」だけが欲しいのであれば、通常のHGUC ドムを買ってきて、好きな色に塗ればいいだけである。
むしろ、G3ガンダムの方は、次に書くHGUC 191 REVIVE版を使ってしまうのだから、まるまるこちらのセットの方のG3ガンダムが無駄になってしまう。
『G3ガンダム+シャア専用リック・ドム』セット版のG3ガンダムも、そこそこポージングの幅は悪くない
だが今も書いたように、この商品仕様は、イマドキには珍しいほどに「富野由悠季小説版『ガンダム』への愛情」で構成されている。
筆者は、そこの心意気に敬意を表したいため、あえてこのセットを購入し、あえてこのセットの色味のシャア専用リック・ドムを、そのままに組み立てて再現画像に使用したのである。
そして、再現画像の主役の方のG3ガンダムは、HGUC 191 REVIVE版の成型色替えである、『ガンプラEXPO ワールドツアージャパン 2015限定発売』のG3ガンダムを使用した。
このキットも、近年のガンダム商品の宿命から逃れられず、成型色替えでG3ガンダムとして再生(元々REVIVEだから「再生の再生」?)させられてしまったが、アニメの解像度や情報量に縛られない小説版の再現なので、今回は関節等も商品の成型色のまま、あえて残して(ここはシャア専用リック・ドムも同じ)全身塗装を施している。
今回用意した、2機のG3ガンダムと、シャア専用リック・ドムのそろい踏み。これからもこのカラバリ商品は増えていくのだろう
やはりHGUC 021版よりも、可動範囲も広くスマートなので、小説のイラストを再現するのでも、様々なポーズが自然に決まることはありがたいし格好良い。
こうしてロービジカラーのガンダムを見ていると、小説版とリンクした「あの時代」の、「リアルカラー全盛期」が思い起こされて、趣深いよねぇという。
うん、今回殆どガンプラの話、してないわ(笑)
市川大河公式サイト