『ガンプラり歩き旅』その52 ~元々は小説版から生まれた、G3ガンダムとシャア専用リック・ドム!~

『ガンプラり歩き旅』その52 ~元々は小説版から生まれた、G3ガンダムとシャア専用リック・ドム!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第52回のお題は、G3ガンダムとシャア専用リック・ドムの紹介です!


小説『機動戦士ガンダム』中盤。シャアのリック・ドムのビーム・バズーカが、アムロのガンダムを襲う!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回は、ガンダムブーム当時、総監督の富野由悠季氏が執筆した、小説版『機動戦士ガンダム』中盤から登場した、G3ガンダムとシャア専用リック・ドムの紹介です!

G3ガンダム+シャア専用リックドムセット 2008年2月発売 2500円

小説版『機動戦士ガンダム』の一場面を思い起こさせる、G3ガンダムとシャア専用リック・ドムの一騎打ち!

G3ガンダム(REVIVE) ガンプラEXPO ワールドツアージャパン 2015限定販売 2015年11月 1000円

あえてREVIVEのボックスアートのポーズ・構図そのままに、G3カラーで統一されたパッケージアート

G3ガンダムとシャア専用リック・ドムのルーツを知っている者は幸せである。心豊かであろうから……。

G3ガンダムやシャア専用リック・ドムを、ジョニー・ライデン専用ザクや、ランバ・ラル専用ドムのような、MSVだと思っている人、不正解!
G3ガンダムを「ガンダム後半、ニュータイプに覚醒したアムロ用に、マグネットコーティング仕様で再開発されたが、アムロに届けられないまま終戦を迎えたために、アニメに登場しなかったガンダム」だと思っている人、不正解!
G3ガンダムやシャア専用リック・ドムを、ゲームの『ギレンの野望』等に登場する「キャスバル用ガンダム」なんかと同じ、近年の二次創作的オリジナルユニットだと思っている人、不正解!

HGUC 191 REVIVE版の成型色替えに、セット版G3ガンダム用のシールを貼った、リペイント決定版G3ガンダム!

いや、厳密には上記の括りで受け止めていても問題はないのだけれども、実はG3ガンダムとシャア専用リック・ドムには、明確な出自があって、それはなんらビジネス的なスケベ心とは別個のところに、ガンダムブーム当時を知る者にしか共有できない「入れ込んだファンならでは」の機体であったのだ。

それは、『機動戦士ガンダム』(1979年)放映中の1979年から、全3巻で書かれた、富野由悠季総監督自らの手による、小説版『機動戦士ガンダム』の中に登場したことが始まりだったからである。

小説版2巻より。ロービジ仕様のガンダムで出撃するアムロ!

かねてから富野監督は、アニメ版ガンダムのカラーリングには不服を抱いていた。
いや、そこは玩具CMロボットアニメのプロであるから、不服ではなく商品仕様を認めての妥協なのだろうが、当初富野監督はガンダムを、真っ白なロボットとして登場させたかったという逸話が残っている。
それは、『ガンダム』放映直前期の、自らの『無敵超人ザンボット3』(1977年)「無敵鋼人ダイターン3』(1978年)をはじめ、当時の『ブロッカー軍団IV マシーンブラスター』(1977年)とか『超合体魔術ロボ ギンガイザー』(1977年)とか『UFO戦士ダイアポロン』(1976年)とかの、見ているだけで眩暈がするような、過剰配色の、しかし没個性のロボットまんがの主役ロボット達へのアンチテーゼという意味合いもあったのだろう。

完成したG3ガンダムのバストショット。今回は関節のグレーも残す新解釈で

なので、一応小説版『ガンダム』でも、最初の巻で主役機は「白いモビル・スーツ」として登場するが、当初は全1巻で書かれた小説のために、アムロが乗ったガンダムは、初巻のラストで大破してしまう。
そして改めて一年後。ブームを受けて続巻が求められ、富野氏によって執筆された2巻において、再登場したアムロに与えられた2機目のガンダムに対する小説の描写が「灰色一色に塗られた、宇宙迷彩のロービジカラーのガンダム」という描写であった。

以前の「1/144 ガンダム勢ぞろい」で、全てのガンダムにとらせた「オープニングポーズ」のG3ガンダム!

もちろん、この時点で“G3ガンダム”等という名称はつけられてはいない(小説内で、あくまで略称として「G3(むしろ、“ガンダム”が付かない)」とだけ呼ぶシーンはある)。ただただ、文章でしか描写されていない、灰色のガンダムの活躍が、下手をするとアニメよりもカタルシスがあり、格好が良かった。
当時のガンダムファンであれば、誰もが鮮烈に胸に焼き付けられた存在、それが「灰色のガンダム」であった。

今回の作例では、グレー系のコントラスト以外で残した色は、ガンダムのメインカメラと、ライフルのスコープのイエローだけ

そしてもう1機。
シャア専用リック・ドムもまた、同じように朝日ソノラマ文庫版の『機動戦士ガンダムⅡ』という、小説版の2巻から登場したモビルスーツであり、当時は「シャアがザクの次にゲルググに乗らずに(地上に降りないのでズゴックはさすがに無いと理解して)ドムに乗るのか!」と、ファンの誰もが驚いたという現象が見受けられた。

シャア専用リック・ドム。なぜ武装がジャイアント・バズなのかは、本文参照

G3ガンダム(重ねて言うが、小説発表時にこのネーミングはまだなかった)が先にメジャーになって、シャア専用リック・ドムが近年スポットが当たるようになった差は、「灰色のガンダム」の方は、メカデザイナーの大河原邦男氏や、当時のガンダムモデラー達が興味を持って、元のデザイン画のカラーだけ塗りなおした「G3ガンダム」が(この時初めてその名が付けられた)MSVのブームの中で発表されたからであって、シャア専用リック・ドムの方はその現象がなかったため、一時は歴史の闇に飲み込まれていった。

シャア専用リック・ドムのバストショット

そういう意味では、G3ガンダムとシャア専用リック・ドムはむしろ、小説版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』に登場したHi-νガンダムやナイチンゲール、小説版『機動戦士Vガンダム』後半の主役機、セカンドVに近い。

ガンプラとしてのポテンシャルは、以前紹介したHGUC ドムと同じ

やがて、家庭用ゲーム機等で、初期のガンダムの世界観等を舞台にしたゲームが作られるようになった時、半ば敬意を込めたオマージュとして、半ばアルアルネタとして、G3ガンダムやシャア専用リック・ドムが、キャスバル専用ガンダムのような「if枠」として、ユニットとして取り入れられるようになり、若いガンダムファンの間で認知度が上がったのだ。

小説版より。シャア専用リック・ドムが、ア・バオア・クーの防衛に着く

その上で、僥倖だったのは(ここはキャスバル専用ガンダムもそうだが)G3ガンダムやシャア専用リック・ドムは、基本的には形状やディテールは、通常のガンダムやリック・ドムとなんら変わることはなく、ぶっちゃけ色を変えるだけでアイデンティティとアリバイが成り立つので、ガンプラやフィギュアの世界ではありがちな「色替え仕様水増し商品枠」における、ガンダムとドムの筆頭として脚光を浴びることになったのが、概ね90年代以降の流れである。

さすがHGUC 191 REVIVE版の成型色替えだけあって、可動範囲は広い

前置きはまだ長くなってしまうんだけど。
実はこのG3ガンダム。
バンダイがたまにやらかしてくれる裏技で、設定当初のカラーリングと、現在の公式カラーリングが変えられて今がある。
まずは、80年代当時、大河原邦男氏のデザインイラストを見てみよう。

80年代当時は、これが「G3ガンダムカラーリングの正解」であった

確かにこれは「灰色のガンダム」としか言えないかっこよさがある。
白とトリコロールカラーで塗られていたアニメのガンダムの、デザイン画をそのままに、そこに複数のグレーと白を配置するだけで、重厚さと兵器としてのリアリズム、小説の内容を象徴するかのような、ヤングアダルト向けのメカニックの雰囲気が見事に調和している。
また、左胸の「G3」と左肩の三本線のマーキングが、当時の風潮だった「リアルマーキング至上主義」とシンプルさとの絶妙な兼ね合いを表現している。

今回は、マーキングシールも含めて80年代版カラーで統一

しかし、今度はこれを商品化するメーカーサイドの視点に立って考えてみよう。
既存のガンダムを、ただのモノクロにしただけで、そこに本当にバリューはあるのか?
小説版『機動戦士ガンダム』はそんなにメジャーなのか?
商品的には、モノクロという特徴はメインにしつつも、バックアップカラーを設置しておいた方が保険が利くのではないか?
さらに言うなれば。
このカラー設定画の配色では、既存のノーマルガンダムの成型システムとの置き換えが「面倒だ」となるのである。
元のガンダムの、青、赤、黄色、それぞれの部分を、それぞれ同じトーンのグレーに置き換えてもらわなければ、G3ガンダムのプラモやフィギュアを商品化する時に、改めて色分けの金型を変えなければいけなくなる。
なのでバンダイは、基本コンセプトを残したまま、配色や色分けを「作り易く売れ易い設定」に「改変」した。
それがこの、「2018年現在のG3ガンダム公式カラーリング設定」である。

これが今現在の「G3ガンダム公式カラーリング」確かに既存の商品の色を変えやすくはしてあるが……

白は薄いグレーに、青は白と同じ色に、黄色は少し濃いグレーに置き換えて、赤に至っては、黒に近いグレーになるパーツと、「なぜかパープル」に変更されている。

ちなみに、前ふんどしのVの字マークと、シールドの星型マークは「連邦軍の紋章」なので、元のガンダムと同じ黄色というロジックで残されている。
確かに、パープルがバックアップカラーとして挿入されたことで立体化した時の情報量も増えて見栄えは良くなっている。
しかし、断じてこれは「灰色のガンダム」ではない。「灰色と紫のガンダム」である。
このデザイン改変を認めてしまえば、富野監督がアニメ初動でしぶしぶ受け入れた「白一色の主役ロボットになるはずだったが、玩具化のために結局トリコロールカラーを取り入れた」ビジネスライクな大衆迎合的改悪と、同じ轍を踏んでしまうことになる。

小説版より。ドズルのビグ・ザムに挑むアムロのG3ガンダム!

だが、企業論理というものは厳しいもので。
今やバンダイのグループ企業となったサンライズは、こちらの「灰色と紫版」カラー設定を公式の物として、MGやRG、ROBOT魂など、バンダイが商品化する時のG3ガンダムは、一部の例外を除き概ねこちらの配色で商品が構成されている。

80年代カラーリングG3ガンダムのバックショット

筆者としては、しかしそのサンライズ公式ルールに従う義務を負わない。
筆者によるシミルボンの『機動戦士ガンダムを読む!』の再現画像は、あくまで筆者のイマジネーションの発露であって、いわゆる「富野由悠季版」以外の何にも隷属する必要はないのだ。
なので、今回はG3ガンダムの1/144キットを2つ紹介するが、どちらも既出のHGUC ガンダムの021と191 REVIVEの成型色替えキットであるが、G3ガンダムに関しては80年代版のカラーリングに塗装し直した。

シールドの星型も白で、手首も白。これが本当のG3ガンダム!

……といっても、元々HGUCは殆どのパーツが色分けされてパーツ分割されているので、赤のパーツでパープルに置き換えられたパーツをはじめ、ベースのグレーだけ活かしながら、手首などは明灰白色、その他のグレーもニュートラルグレーやMSファントムグレーなどで、80年代版設定に沿って塗装し直して組み上げた。
V字マークと星形の黄色はどうすべきか迷ったが、80年代版のカラー設定にはシールドがなく、ふんどしのV字マークは白で塗られているので、シールドの星型も含めてクールホワイトで塗装することにした。

続いて解説するは「シャア専用リック・ドム」である。
上でも書いたように、この機体もまた、小説版『機動戦士ガンダム』が初出で、やはりシャアも、最初の1巻ではシャア専用ザクに乗って登場するのだが、クライマックスにアムロのガンダムに敗れてしまい、この辺りはむしろ、アニメ版だとシャア専用ゲルググの役回りなのだが、なにせ当初は文庫本一冊で、一年間分の全てを凝縮して描かねばならなかったので仕方がないとはいえ、そこでシャア専用ザクは舞台から消え去る。

元のキットのHGUC 059 ドムの出来が素晴らしいので造形的には文句のつけようがない

仕切り直しの第2巻からは、シャアは富野監督がもっともお気に入りだったと思えるドムに乗り、アムロの「灰色のガンダム」と、文庫本2冊分に渡って死闘を繰り広げるのだ。
そうなれば、G3ガンダムがこれほどメジャーになってきて、RX-78 ガンダム関連のプラモやフィギュアが売られれば、必ずカラーバリエーションとしてG3ガンダムも売られるとなれば、往年の小説版のファンであればこそ、そこに「深紅のドム」を並べたくなるというのがガンダム者魂(笑)

シャア専用リック・ドムのバックショット。バーニアやスカートはもちろんリック・ドムのパーツ

しかし、シャア専用リック・ドムの方は、当時からこれといった決定打的なカラーリング公式設定がなく、今でこそちらほらと、ガンプラやフィギュア関係でシャア専用リック・ドムの商品を目にする機会が増えたが、その配色や赤味などは、基本統一がとれてない辺りは、むしろホッとするところ。
もちろん、設定が決まってないからこそ、各商品単位で、成型しやすいようにピンクと深紅を組み合わせたり、赤茶色を使ってみたりするのだが。
こちらの方は、やはり近年のガンダムゲームで、ユニットとして登場するようになってから認知度が上がったようで、そこでゲーム単位、グラフィッカー単位で「シャア専用リック・ドムの配色とは」の解釈が別れるので、今のところ「正解はない」というのが実情だろう。

小説版のラストより。この画像で何のシーンか分かる人は、相当の小説版(しかも朝日ソノラマ版)マニア

これはG3ガンダムにも言えるが、元のデザインと、どこかが違っているわけでもないので(シャア専用といいつつ、諸々のシャア専用リック・ドムには、角が付いてない仕様の商品が多い)、それこそ小説版が欲しければ、普通のガンダムやドムを買ってきて、グレーや赤で、自分で好きなように塗ればいいのだが、そこはそれ、「限定版商法」というものがあるもので。

ダイナミックなポーズが可能な仕様が、シャアに相応しい

あと、シャア専用リック・ドムに関してはもう一つ。
近年、デザインの発祥がどこかは定かではないが、シャア専用、に限らず、リック・ドムを商品化する際、通常のドムと差別化するためのアイテムとして「ビーム・バズーカ」というアイテムが付属することが多くなってきた。
そもそも、この「リック・ドムが持つビーム・バズーカ」なる代物自体が、富野由悠季氏が書いた小説版が元ネタであることを、知らない世代のファンは増えているのだろう。
もっとも、当初の朝日ソノラマ文庫版では、富野氏も相当多忙な中で執筆していたからか、ドムが攻撃をする描写で手にしている武器が、ビーム・バズーカだったり、ビーム・ライフルだったり、交錯している辺りは苦笑するところです(笑)

今、「朝日ソノラマ文庫版」と書いたが、小説版ガンダムはそれが初出であり、そこでのイラスト担当は、アニメ版『ガンダム』にも参加したが、元は東映動画出身の青鉢芳信氏。
「なんでせっかくのガンダムの小説のイラストを、同じソノラマ文庫で『クラッシャージョウ』のイラストも描いた、安彦良和氏に描かせないんだ」は、当時誰もが思ったが、小説版の最初の刊行はガンダムブーム以前であり、安彦氏はそれこそ多忙過ぎて病気で倒れる寸前だったか、倒れてらっしゃったかで、まだ売れるかどうかも分からない「テレビロボット漫画のノベライズ」で、安彦氏を起用できる余裕(いろんな意味で)がなかったのも事実。

小説版では「ビーム・サーベル」だった扱いの、リック・ドムのサーベル

では、青鉢芳信氏のイラストでは悪いかというと。確かにいろいろ、キャラのイラストとかメカニックのラインとかが、安彦的とはまた違ったニュアンスがあったのだが、「そこ」も含めての「小説版『ガンダム』の魅力」であったことは事実。

何が言いたいかというと、青鉢氏のイラストで、劇中のシャア専用リック・ドムがビーム・バズーカを撃つシーンが描かれているんだけれども、そのデザインは、G3ガンダムがガンダムのままだったように、シャア専用リック・ドムがドムのままだったように、通常のドムが携行しているジャイアント・バズそのままだったのである。

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