真面目に語れない概要
『せがれいじり』パッケージ
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…と、Wikipediaはこんなゲームでも真面目に解説してくれるので大体ご理解いただけたと思いますが、念のため。
「プレゼントに最悪」というキャッチコピーで売り出された非常にシュールな本作は、1999年にエニックス(現:スクウェア・エニックス)から発売されたPS用謎ゲームです。
ジャンル「おバカ」と自ら明言した伝説の「バカゲー」であり、その圧倒的なタイトルや、サイケデリックな設定・世界観に当時衝撃を受けたキッズは(大人も)少なくありません。
「あのドラクエの発売元が出す」という意味でも非常に衝撃的でした。
なお、BGM等音響全般とCGの制作は『ウゴウゴルーガ(1992年から1994年まで放送された子供向けバラエティ番組)』で有名な秋元きつね氏が担当されています。
エンディングテーマにも氏の楽曲である『ペンギン』(を小学生に合唱してもらったもの)等が使われています。
カオスすぎるあらすじ
むかしむかし とおいみらいに せがれがすんでいました。せがれはサナギなのでやじるしです。あるひ、超プリティーなむすめさん(ちなみに彼女も矢印頭)をみつけ、ママにいいました。
「あのむすめさんとラブラブになりたいなぁ」
ママはこういいました。「おおきくなったらね」
こうしてせがれは大きくなるためにセケンへと飛び出していくのでした。
追記
…と、突っ込みどころ多数のプロローグからゲームが始まります。が、肝心のゲーム自体突っ込みどころ満載なのでこんなものはまだまだ序の口です。ついでに言うとせがれを大きくする目的なのに、目に見えて大きくなるのはママの首です。
個性的の域を超越したキャラクター紹介
せがれ
主人公です。頭が→という以外は至って普通な少年です。蛹らしいです。ある日むすめさんを見つけて一目惚れし、大きくなってむすめさんとラブラブする為、セケンの様々なモノとオカカワリする事で成長していきます。首は360度動くばかりか良く回転します。デフォルメされたその姿は幼稚園児でも書けそうなくらにゆるいです。
むすめさん
本作のヒロインです。せがれのように頭が→で、オレンジ色に花のプリントがされたワンピースを着ています。超プリティです。
ママ
キリンの首(だけ)の形をしたせがれのお母さんです。内部構造は永遠の謎です。
せがれを導き、その成長を(本当の意味で)首を長くして見守っています。
くだん
せがれが山に登るのに必要な乗り物となる人面牛です。山を越えたりできます。かつては胴体もヒトだったのですが、6500万年前に牛と衝突して頭が落ちてしまい、慌ててつけたらお互いに頭をつけ間違えてしまい、人面牛になりました。一人称は「オレ」で結構口が悪いです。四本足で歩く訳ではなく飛び跳ねて移動します。頭がヒト、身体が牛という妖怪くだんがモデルです。
濃すぎるゲーム内容の解説
セケンにあるモノにオカカワリすると「作文」が始まる
セケン(フィールド)にあるモノを調べる(オカカワリする)と「作文」が始まります。この「作文」と呼ばれる文章の羅列を組み立て、そこから生まれる「おバカムービー」を鑑賞、組み合わせ次第では新たな「オキモノ」がセケンに生まれたりします。これらの繰り返しによってゲームを進めていきます。
作文の内容は本当にデタラメなものであり、どんな文章でも成立しムービーや紙芝居が観賞できます。オキモノには作文モノ以外にもちょっとしたイベントが起こる「お楽しみオブジェクト」も多数存在します。オキモノの種類に関わらず、各オキモノに初めてオカカワリするとハートが手に入り、ママの首が長くなります。これが一定の高さに達するとストーリーが進行します。
オキモノ作文の回数制限と「ママクエスト」
オキモノ毎に作文の回数制限があり(初期値は3)、無くなると作文ができなくなります。家に帰ると「ママクエスト」と言う問題が出題され、正解すれば現在存在しているオキモノ全ての作文回数が回復します。一度作った作文は回数制限を消費せず再度見る事ができます。
全ての作文を作るとそのオキモノにはクリアまでオカカワリできなくなります。ただし、エンディング後はママクエストが出来なくなるかわりに、作文を無制限に作れるようになります。
エリア移動のためのママの出産
セケンは「じめん」「やま」「そら」など幾つものエリアに分かれていますが、せがれ一人で移動できるエリアは限られています。探索範囲を広げるにはストーリーを進めて、ママから仲間(乗り物)を産んでもらう必要があります。
無駄に洗練された無駄の無い無駄なムービー
本作のムービーは当時からすると「マジ」で品質が高いです。そんな全力で作ったムービーを使って「マジ」でしょーもない作文を「本気」でそっくりそのまま描写してくれます。最早これだけでツッコミ所です。
こういう全力で明後日の方向へぶっ飛んでいる努力もバカゲーっぷりに拍車を掛けているのでしょう。…ただそのネタが面白いかと言われると、人には薦め辛い内容ではあります。シュールギャグのオンパレードと取るか、寒いネタのオンパレードと取るか、評価は見事真っ二つに分かれます。
タイトル画面のメニューの仕様も奇天烈
オプションはゲーム中での作文と同じシステムになっていて、変更するたびにムービーが流れます。オプションとしての機能はしっかり果たしてくれるのでご安心を(笑)。
また、意味不明なモード「たらいからはじめる」というものがしれっと書いてあり。これを選択するとムービーが流れて直後に文章が出ます。ちなみに文章の種類は数パターンあります。
とにかくどういうゲームなのかは実際に見た方が早い
解説している筆者もなんだかよくわからなくなってきたのでとりあえずゲーム画面でも見てみてください。
ゴキゲンな評価点
ネタのテンポの良さと芸の細かさ
冗長な感じのネタはあまりありません。作文ネタの種類はCGムービー、手描きムービー、紙芝居の三種類です。これらのネタは捻ろうとしているわけではないものが多く、まさに「文字通り」の内容を再生します。ただしあまりにも普通なものは逆転の発想を混ぜてくることもあり、気が抜けません。また、各ネタの最後には文字による緩いツッコミが入ります。これもまたゲームの雰囲気に一役買っていました。新しいオキモノが出現する時のみ出てくる一言もあります。
ゲームの進行具合によっておうちに帰った際のママとの会話も変わり、各2、3種類存在します。
単純明快、○と×と移動キーだけで最低限プレイできる
この点は最初の操作説明で紹介されます。「たったのこれだけで最後までいじれます」の一文は伊達ではありません。
マップ機能を△ボタンで呼び出すことも出来ますが、全く使わずのクリアも可能ではあるので嘘は言っていません。(もっとも快適プレイの為にはおのずと必須になってくるとは思われますが…。)
がっかり賛否両論点
下ネタの多さ
「うんこ」というオキモノがあり、それにまつわる作文を作るものがあります。今やったら確実にアウトになりそうなくらい直接的な内容で、良くも悪くもくだらない内容が満載です。
それ以外でも、この手の言葉が含まれる作文ができてしまうオキモノがいくつも登場します。ちなみにそれらの下ネタが多い理由は小学生がパッと見て笑えるものであるためらしく、作者の趣味というわけではないらしいです。
その通り対象は小学生男子のみのつもりだったのですが、女の子の方が面白がってたり、「無駄におもしろい」そのチャレンジに対して大人たちが好奇心の矢印を向けたりもしたとのこと。
一部の明らかに手を抜いたネタ
中盤から後半にかけて出てくる作文に関しては、途中まで内容を同じにしてオチだけ変えるといったものが大変多いです。ただそういった内容すら実は本命のネタのための布石だったりすることもあり、同じネタばかりで飽きてきた…などと思っていると突然ツボを突くネタをつっこ込んでくるため、侮れません。
そもそも、あくまでコンセプトとしては「文章をそのまま映像化する」というものなので、作り手としてはコンセプト通りにこなしているだけなのでした。
時折挿入されるホラーっぽいネタ
勿論笑えるネタとしてのホラーではあります(怖いと言いながら騒いで笑えるような感じ)が、苦手な人にはキツイかもしれませんね。子供ならトラウマ物も…。
ドキドキの総評
秋元きつね王国 卓上せがれ
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本作はもはや「存在自体が伝説」とも呼べるほどのバカゲーです。
全編にわたって下ネタ、意味不明ネタと混沌のオンパレードであるため、そうしたネタが理解できない、受け付けられない人に安易にすすめられるようなものでは到底ありません。
ただ逆を言うならば、そうしたネタが好める人であれば最高におもしろがれるゲームでしょう。
隙を見て余談
本作は「コロコロコミック」での熱烈な紹介や「おはスタ」などのタイアップもあり、最終的には17万本以上をセールス、この種類の作品としては空前の大ヒットを記録しました。そのためか『超兄貴』と並び、豊作だったPS時代「バカゲー」の代名詞として呼ばれることも多いです。
一見すると只のおバカなゲームに見えますが……
実は緻密に練り上げたデザインコンセプトの元に製作されたゲームです。
「セケン」と「オカカワリ」することで視野を広げていく「せがれ」、首を長くして待つ「ママ」など、深く考えなくてもその片鱗は感じ取れるでしょう。
特に、ラストに唐突に訪れる号泣モノのエンディングは数多くのプレイヤーの涙腺を崩壊させました。誰もがこのゲームで「まさか泣かされるとは」と考えていたことでしょう…。
しかし、このゲームはあえて明確なテーマを提示せず、その解釈を(あるいは考える事そのものを放棄するのを)プレイヤーに委ねています。
よって、ここでそのテーマを表記する事、またはテーマがある事自体に触れることは、このゲームの存在意義に関わる危険な行為であると言えるでしょう。
詳細は秋元きつね氏のホームページ内のせがれいじり解説書(大人向け)に記載されていましたが、現在では閲覧不可になっています。
公式からのコメント。
各所から、「バカ」「くだらない」「まっとうなゲームではない」と大絶賛を賜っております「せがれいじり」。「バカに徹する」と言うコンセプトの本作は、ある意味「バカ」につけるリトマス試験紙です。こんなバカソフトに大喜びしてしまったあなたって・・・・・・「バカ」?でも心配いりません。喜んでいるあなたの横には一緒に喜ぶ友の顔があります。現代人が魂の奥底に抱えた孤独感をバカ同士の連帯感で払拭する。「究極の癒し」の形がここにあります(そうかー?)。
本稿で記載しております情報は、ゲームカタログ@wikiから引用させていただきました。
出典元はコチラです。
せがれいじり - ゲームカタログ@Wiki ~クソゲーから名作まで~ - アットウィキ