『ガンプラり歩き旅』その38 ~1/144 ガンダムは、何度だって蘇ってくる!(6度目)~

『ガンプラり歩き旅』その38 ~1/144 ガンダムは、何度だって蘇ってくる!(6度目)~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第38回は、6度目の商品化となる、1/144 ガンダムの紹介です!


左手首は、この、穴もない握り拳一つしか付属してこない

等々。どないせーっちゅうんじゃ的な。
要するに、もはやこのキットは、HGUCブランドの基本フォーマットから大きく外れていて、あえて言い切るのであれば、1/1ガンダム立像のスケールキットとして、なおかつ殆どの色単位でパーツが分けられた、その完成状態は、むしろ10年前に発売された、FG(ファースト・グレード)のハイエンド版とも受け取れる仕様になっているのだ!
(……もっとも、それならそれで、このキットの中に付属品として入っている、ビームライフルやハイパーバズーカ、ましてやガンダムハンマーなんぞは、「なにをスケールダウンさせたミニチュアなのだ?」という話にはなってしまうのだが……)

なので、ビームライフル自体の造形と出来は悪くないのだが……

肩のスライド可動で、しっかり左手は、フォアグリップまでは届いてはいるのだが……握れないのは致命的か

それだけではない。
当時、よほどバンダイは、予想以上の立像への反響の大きさに、調子の乗りすぎたのか、今が稼ぎ時だと判断したからなのか、なんとこの1/144 HG Ver.G30thは、この手のフィギュア商法の基本でもある、メッキ仕様やクリア仕様から始まって、やれセブンイレブンカラーだ、やれ三井住友VISAカードVer.だ、SANKYO ORIGINAL Ver.だ、様々なタイアップのバージョンや成型色を変えただけのバリエーションが増殖し、最終的には2015年までに、25種類のバージョンを出すという、前人未到の謎ビジネスを見事に展開してしまったのだ!

左手が何も握れないので、シールドの保持も、前腕のスリットに軸を刺し込むだけの仕様なのだが……ここだけ観るとFGレベルにまで接続ギミックが後退している

だがしかし、「これがバンダイが決め打ちした、1/144ガンダムの決定版です!」は、上記したようにいきなりRG新発売で、翌年には上書き修正されてしまうわけで、挙句の果てには2015年には、オールガンダムプロジェクトと称した「全主人公ガンダム 統一フォーマット HGUC 再新規商品完全展開」のビジネスの中で発売された、「デザインやプロポーション的には、HG Ver.G30thやRG版の流れを汲みつつ、最新のHGUCの可動領域を確保した、再・再・決定版」たるHGUC 191 ガンダムの登場により、いきなりもう「あのお台場ガンダムのミニチュア版」としてのアイディンティティ以外は残らなくなってしまい、なおかつこのたびバンダイは、2017年にはガンダムフロント東京とともに、ガンダム立像を撤去する決定をしてしまったものだから、もはやなんの値打も残らない代物になってしまったぞ、HG Ver.G30th。

まぁ、25種類もバリエーションを展開したのだから、金型の減価償却なんかはとっくに黒字で採算はとれたのだろうし、もうそろそろ“いつもの”黒歴史になるのではないかと、心配することはやぶさかではない。

一軸可動構成ではあるが、ポージングの幅はそれほど狭くはない。しかし、シリーズ、いやジャンルの主役のガンダムの決定版としては……

今回、筆者がこのHG Ver.G30thを手に入れたのも“最新技術で使い勝手の良いガンダムハンマーが欲しかったから”だけだという……。
1/144武器セットにガンダムハンマーはついているんだから、使いたければそれを使えば良かったんやと、そう思うぐらいには本当にコレ、後悔してますんで、どうかお許しください。

本商品の付属武器一覧。なんでこの取捨選択でガンダムハンマーだったのか。ガルマ専用ザクのマゼラトップ砲のような隙間商売を思い出させる

一応、キット本体も組んで、いつものように、関節と首をクールホワイト、青部分をUG14 MSライトブルー、手首を濃緑色で、それぞれ塗装して組んではみたが、HGUCの021と191に挟まれると、個性もアイディンティも中途半端でなんというか……。
少なくとも、これの発売時点でHGUC 021とFGがなければ、「アニメ版とリアル版の間を上手く掬い取った、良好なバランスのガンダム」としての存在感は確保できたんだと思うんだけどなぁ……。
あ、頭部の造形は、この後も続く歴代1/144ガンダムの中では、一番「精密で」「アニメ版の安彦作画版」に似ております。
これを、HGUC 021や191に乗せるミキシングはアリじゃないっすかね。

コスパ狙いだったのか、作りやすさ優先だったのか。今となってはバリューが絞り込めない仇花ガンダムとなってしまった。

まぁ、それはアリなんですが、一方で大河さんの『機動戦士ガンダムを読む!』再現画像では、いつか出そう、いつか出そうと思っておきながら、この1/144 HG Ver.G30thは、解像度はアニメ版から一番遠いくせに、可動範囲はその後のHGUC 191 ガンダムに遠く及ばないという中途半端さが仇になって、『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)再現は全てHGUC 191 ガンダムで演じさせてしまったため、この1/144 HG Ver.G30th版、関節部分と拳や武器を、わざわざ『機動戦士ガンダムを読む!』統一レギュレーションで塗装したのだが、最後まで登場させるに至らなかった(汗)
なので、今回はお台場ダイバーシティ東京前の画像を、造形モチーフ元になぞって画像を一枚だけ作ってみたが、これをやるなら関節や拳は塗らない方が良かったという、大河さんの「後先考えなさ」が満載の結果と相成りました。

電撃ホビーマガジン 2010年 9月号 付録 1/144 HGUC 機動戦士ガンダム ホワイトベース MSハンガー

電撃ホビーマガジン付録のパッケージ。付録らしく、あえて段ボールの質感を活かした包装がこの付録シリーズのお約束

MSハンガー! ハンガーっつうても、『刑事物語』(1982年)で武田鉄矢がカンフーで振り回してたアレじゃないぞ! 木の奴とか関係ないからな!
MSハンガー! 役割としては『機動警察パトレイバー』(1988年)のレイバーキャリアみたいに「主役ロボットを乗せる台」なんだけど、別に自走するわけでもないし、専用キャラがいるわけでもなく、本当に「1/144 ガンダムを飾る台」でしかないぞ、MSハンガー!

完成したMSハンガー。今回は2セット用意したが、いつぞやのガンダムトレーラー以上に、ガンダムがいないと「なにがなんだか分からない代物」扱いになる

いきなりですが、これを読んでいる女性の皆さん(え、いるの?)。10年ぐらい前から、女性向けファッション雑誌で、ブランド物のポーチやアクセが付録についたりして、そっち目当てで雑誌を買ってしまうというような現象、ありませんでしたか?

いや、いきなり過去形で書いてしまうのもなんなのだけれども、今回紹介する「機動戦士ガンダム ホワイトベース MSハンガー」も、電撃ホビーマガジンという角川書店の模型雑誌の2010年9月号についてきた付録であり、こと模型雑誌は、この時期こういったオリジナルの模型を付録につけたり、既存のキット金型改修版を付録につけたり、そういった事例がいきなり増えてきていた時期だったのである。

正面から見たMSハンガー。とりあえず、アニメの設定どおりの構造とディテールではある

それにはそれで、ちゃんと裏付けと法的根拠があって。
まずは、「雑誌業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」が2006年に改正されたというのがある。
また、付録の提供は景品表示法の規制をうけることになるのだが、以下がその付録(出版物の付録は、「雑誌購入者全員プレゼントの景品」と解釈される)に関する制限事項。

一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限
1一般消費者に対して懸賞(「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年 公正取引委員会告示第3号)第1項に規定する懸賞をいう。)によらないで提供する景品類の価額は、景品類の提供に係る取引の価額の10分の2の金額(当該 金額が200円未満の場合にあつては、200円)の範囲内であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない

簡単にいえば、それまでは窮屈だった「雑誌の付録」に対する規制緩和である。
これらの改正、法整備を受けて、雑誌類はそれこそ2000年代中盤から、ホビー雑誌からファッション雑誌まで、付録合戦の様相を呈してきたのだ。
それはまぁ、エンドユーザー的にはありがたいこと他になしな流れであるのだが、一度「そっち」でビジネスが風向きを変えると、今度は読者の期待を裏切ってはいけないと、その流れを止めようにも止められなくなるのも市場原理。
ここで、web版日経が宝島社にリサーチした、「付録付き雑誌の現状」のコラムを少し引用しよう。

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