マンションが景品のクイズ番組「クイズ・キングにまかせろ!」

マンションが景品のクイズ番組「クイズ・キングにまかせろ!」

昔のクイズ番組の景品・商品はとにかく高額でした。現金100万円や世界一周旅行など、あの手この手で視聴者の興味付けを行っていたものです。その最たるものとして『3000万円クイズ』とほぼ同時期にスタートしたのが『マンションクイズ』の異名をとった『クイズ・キングにまかせろ!』でした。


わずか3ヶ月で打ち切りになった『クイズ・キングにまかせろ!』

クイズ番組というと、何を思い浮かべるでしょうか?

『ネプリーグ』『クイズ!ヘキサゴン』『脳内エステ IQサプリ』『クイズ$ミリオネア 』『マジカル頭脳パワー』『なるほどザワールド』など…。年代によって、さまざまな番組が挙げられるかと思います。

本稿で紹介する『クイズ・キングにまかせろ!』(フジテレビ系)が放送開始となったのは、1970年1月。ちょうど伝説のクイズ番組『クイズタイムショック』がスタートした1年後のことでした。しかし、『タイムショック』に比べて、『クイズ・キング』を覚えている方、知っている方はほとんどいないことでしょう。なぜならこの番組、わずか3ヶ月で打ち切りになったからです。

クイズ・タイムショック (1977年)

クイズ・タイムショック (1977年) | 多村 映美 |本 | 通販 | Amazon

世界一周旅行に現金100万円…高額だった昔のクイズ番組

1960年代のテレビ業界において、クイズ番組は雨後の竹の子の如く乱立していました。それら番組のウリは、高額な景品。『ズバリ!当てましょう』(フジテレビ系・放送期間:1961年8月5日~1972年2月12日)では、ナショナルの電化製品一式100万円相当と世界一周旅行が贈与され、『アップダウンクイズ』(毎日放送・放送期間:1963年10月6日~1985年10月6日)では、「10問正解して、さあ、ハワイへ行きましょう!」が合言葉になっていましたし、『オリンピックショウ 地上最大のクイズ』(フジテレビ系・放送期間:1962年11月13日~1965年5月25日)においては、現金100万円がプレゼントされていました。

当時といえば、高度経済成長の真っただ中。1950年代には、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫が「三種の神器」、1960年代半ばのいざなぎ景気時代には、カラーテレビ・クーラー・自動車が「新・三種の神器」としてもてはやされました。つまり、消費社会が花盛りだったわけです。そんな戦後経済の発展と豊かさの象徴として、クイズ番組における景品の高額化が進んでいったとの見方もあるといいます。

その頃のテレビたち

三種の神器 (電化製品) - Wikipedia

とにもかくにも、「景品のインフレ化」は視聴者の興味付けのために、ますます加速していき、その最たるものとして誕生したのが『クイズ・キングにまかせろ!』(フジテレビ系)でした。
家庭用ベッド・医療用ベッドを取り扱う国内大手のベッドメーカー『フランスベッド』の一社提供で実施されたこの番組におけるトップ賞の景品は、なんと、マンションの一室。具体的には「東京用賀の1室・1000万円に相当する3LDKのマンション」を優勝者にプレゼントするというのです。この景品のインパクトから同番組は別名『マンションクイズ』と呼ばれ、大きな話題を呼びました。

※写真はイメージ画像です

マンションの一室さえも景品になっていた

大卒初任給が4万円の時代に『3000万円クイズ』も放送していた!

この『マンションクイズ』のスタートより少し前にあたる1969年10月。もう一つ、同じくフジテレビで放送開始となったのが、その名もズバリ『3000万円クイズ』です。現在の貨幣価値に照らし合わせてもとんでもない金額ですが、当時の常識、たとえば、大卒の平均初任給が4万円で、宝くじの1等賞金が1000万円だったという事実を鑑みると、さらにその異常さが理解できるというものでしょう。優勝するだけで宝くじの3倍、大卒初任給の750倍もの金額を得られるのだから、視聴者参加型であるこの番組に応募者が殺到したのは言うまでもありません。

3000万円クイズ - Wikipedia

公正取引委員会から厳重注意を受けて、『クイズ・キング』『3000万円クイズ』は共に打ち切りに…

しかし、とどまることを知らないクイズ番組の大盤振る舞いに、とうとう行政のメスが入ります。それまでクイズ番組の景品・賞金の総額には、上限が存在しなかったのですが、この『クイズ・キング』におけるマンションの一室プレゼントはさすがにまずいとして、公正取引委員会から待ったがかかったのです。待ったの理由は、射幸感を過度に煽るため。ギャンブル性の高いパチンコやスロットが規制されるのと同じ理屈です。

ということで、製作局のフジテレビとスポンサーのフランスベッドは公正取引委員会から厳重注意を受けるハメに。結果として、『クイズ・キング』とそれよりもさらに高額な『3000万円クイズ』は共に打ち切りとなってしまうのでした。

金は人を狂わすといいますが…

これを受けて、公取委と日本民間放送連盟により「クイズ番組における賞金・賞品の総額は100万円まで」とのルールが誕生。1996年に上限額が1000万円に緩和され、2006年に廃止されるまでこの規則は続いたのでした。

(こじへい)

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