仁義なき戦い
「仁義なき戦い」といえば、知らない者はいないというくらいの日本映画の金字塔ですが、一方で名前は知っているけどどんな話なのかは知らないという人が結構多いようです。
映画は現在までに11本も作られ、シリーズ化されるほど大ヒットしました。その全貌を振り返ってみます。
「仁義なき戦い」は、美能組初代組長の美能幸三が網走刑務所で服役中に執筆した手記をベースに、飯干晃一が「週刊サンケイ」に連載したノンフィクションがベースになっています。

仁義なき戦い〈死闘編〉広島やくざ・流血20年の記録
ノンフィクションとはいえ、半分は美能幸三の手記が占めていることから"実録小説"と呼ばれています。それまでのヤクザ映画と違いリアリティがあるのはこのためですね。
この連載は大評判となり、映画化が決定します。1973年のことです。
因みに、「仁義なき戦い」というタイトルは「週刊サンケイ」編集部が考え出したものです。

仁義なき戦い
「仁義なき戦い」といえば、菅原文太。ですが、当初は渡哲也を主役にすえようと企画されており、他に松方弘樹なども候補にあがっていました。
渡哲也も松方弘樹も素晴らしい役者ではありますが、菅原文太で大正解だったのではないでしょうか。まさにはまり役です!

菅原文太が演じる広能昌三
「仁義なき戦い」の主人公は菅原文太が演じる美能幸三をモデルにした広能昌三ですが、シリーズでは別の人物が主役であったり、同一人物を別の俳優が演じていたりするため物語が分かりにくくなっている部分があります。
内容的には裏切りに次ぐ裏切りのヤクザ抗争です。
冒頭、暴漢を射殺した広能昌三は出所して山守組組員となるのですが、そこの組長を演じたのが金子信雄です。ずる賢くセコイ山守組組長をこれほど見事に演じきるとは驚きです!シリーズを通して1,2を争う名キャラクターといっていいでしょう。

金子信雄が演じる山守組組長
そして、シリーズを通して音楽を担当したのは津島利章ですが、なんというか雰囲気ありますよ、この音楽!
オリジナル五部作
1973年の「仁義なき戦い」が大ヒットしたことで、1974年までに深作欣二監督のもとシリーズで5本制作されます。
俗にいうオリジナル五部作ですが、実は第1作が制作される前からシリーズ化は決定されていました。
2作目は、原作にはあまり出てこなかった山上光治という24歳で自決してしまう殺し屋をメインにした「仁義なき戦い 広島死闘篇」です。
舞台は1作目と同じく1950年~1953年の第一次広島抗争となっています。このため主役扱いとなっていますが広能昌三(菅原文太)はあまり出てきません。
山上光治を演じた北大路欣也が魅力的です。が、それよりも更に観客に強烈な印象を与えたのが、もう一人の主役、千葉真一が演じた大友勝利です。怪演といっていいでしょう。

千葉真一が演じた大友勝利
実はこの2人、当初は役が逆だったのだそうですよ。北大路欣也が演じる大友勝利も見てみたいですけどね。
そして3作目「仁義なき戦い 代理戦争」。これは、「仁義なき戦い」終了後の1960年~1963年の話であるため、実質的には「仁義なき戦い」の続編となっています。
第二次広島抗争の終焉の記録となっているのが4作目の「仁義なき戦い 頂上作戦」です。1963年~1964年が舞台となっており、3作目からの流れで観ることができます。
シリーズの完結篇、その名も「仁義なき戦い 完結篇」。しかし、話としては4作目で第二次広島抗争が終焉を迎えていたことで事実上完結しているのですが、ドル箱だったという理由が大きかったのでしょう、続編が作られたというわけです。
内容は第三次広島抗争となっています。こうした流れから作られた続編と言うものは往々にして失敗するものですが、「仁義なき戦い 完結篇」は、シリーズ最大のヒットを記録しています。
新シリーズ
「仁義なき戦い 完結篇」から僅か半年後の1974年12月、「新 仁義なき戦い」が新たなシリーズの1作目として始まります。
前シリーズ同様に今シリーズも、監督:深作欣二、主演:菅原文太のコンビとなっています。

新 仁義なき戦い
新シリーズは1974年~1976年までに3作が制作されました。
1974年 新仁義なき戦い
1975年 新仁義なき戦い 組長の首
1976年 新仁義なき戦い 組長最後の日
「新仁義なき戦い」で菅原文太が演じる三好万亀夫は、「仁義なき戦い」と同じく美能幸三がモデルです。「新仁義なき戦い」は「仁義なき戦い」のリメイクとなっています。
新シリーズの2作目に 菅原文太が演じるのは、黒田修次 。そして3作目が野崎修一という役を演じており、全シリーズとは別物となっています。
その後の仁義なき戦い
新シリーズが終了した後、1979年に監督:工藤栄一、主演:根津甚八という組み合わせで、新たな仁義なき戦いが制作されます。その名も「その後の仁義なき戦い」。音楽を柳ジョージ&レイニーウッドが担当するなど内容、スタッフ共に一新されています。
2000年には舞台を現代の大阪に置き換えた「仁義なき戦い」のリメイク版「新・仁義なき戦い」が登場します。しかし、監督は阪本順治でリメイクと謳いながらもオリジナルストーリーといっていい内容です。
更に2003年には「新・仁義なき戦い/謀殺」が橋本一監督で制作され、現在までのところこれが最後となっています。
しかし、今でも人気のある「仁義なき戦い」ですから、また近い将来制作される日が来るのではないでしょうか?その日が楽しみです。