クラウンよりも長い歴史を持つクルマ
トヨタ・ランドクルーザーには、ジープタイプとワゴンタイプの2系統がありました。前者は40系、70系と呼ばれるタイプで、大き過ぎないボディに、2ドアやオープンタイプまであるラインナップが特徴です。今の日本市場からは消えてしまいましたが、2014年に日本でも4ドアバンとピックアップが発売されて四駆ファンの注目を集めました。
後者は現在の200系の系統です。日本を代表する高級SUVといって間違いありませんが、そのルーツは非常にヘビーデューティーで、最近の新しい四駆とは出自が違います。海外ではレンジローバーやメルセデスベンツGクラスなどがライバルになります。

80系の前のワゴンタイプにあたる60系
Toyota Land Cruiser 60 VX High Roof (FJ62G) 1987–89 wallpapers
ワゴンタイプのルーツは、1967年に発売されたFJ55型まで遡り、40系をベースとしながらも、北米市場を重視した大きな4ドアロングボディで登場しました。このシリーズは1980年にフルモデルチェンジして60系となり、1989年12月に今回取り上げる80系にフルモデルチェンジしました。
ちなみに、ランドクルーザーの名は、1954年6月に命名されました。クラウンよりも1年古く、日本で一番古い名称です。

60系の末期に登場した上級グレード
Photos of Toyota Land Cruiser 60 VX High Roof (FJ62G) 1987–89

1984年にフルモデルチェンジした、ジープタイプの70系
Toyota Land Cruiser (HSJ77V) 1990–99 images
新機軸を満載した高級SUVとしてデビュー
ランクル80系は、開発段階から高級SUVを意識した初のモデルとなりました。ボディサイズは60系の全長4675mm、全幅1800mm、全高1805mmから全長4970mm、全幅1930mm、全高1860mmへと格段に大きくなりました。
発売された1989年はバブル経済の真っ只中。セルシオがデビューした年であり、日本でも3ナンバー車が増え始めていました。そんな状況下でも、80系は大きなボディに丸味のあるデザインで、見るからに大きなクルマでした。

丸味を帯びた大柄なボディで登場したランドクルーザー80
Toyota Land Cruiser 80 VAN VX-Limited JP-spec (HZ81V) 1989–92 images
エンジンはワゴンがガソリン、バンがディーゼルを搭載。最大の特徴は4WDの方式で、量販されるクロスカントリー(クロカン)4WDでは初めて、フルタイム4WDが採用されました(バンの一部にパートタイム式も残存)。
乗用車では一般的になっていたフルタイム4WDでしたが、クロカン4WDに採用したのは思い切った決断だったのではないでしょうか。数々の新機軸を採用したため開発が遅れ、発売は当初予定の89年10月から12月に延期。製造開始は翌90年1月までずれ込んでしまいました。

リアドアは上下開き式を採用。この頃の四駆といえば、リアに掲げたスペアタイヤが特徴でしたね。
Toyota Land Cruiser 80 Wagon VX-Limited JP-spec (HZ81V) 1989–92 photos

60系から一変して、乗用車のように洗練されたダッシュボード
Toyota Land Cruiser 80 Wagon GX JP-spec (HZ81V) 1989–94 photos
高級志向を高めた内外装
世界戦略車のランクルですが、80系の日本向けラインナップは、8人乗り・ガソリンエンジンのワゴンと、5人乗り・ディーゼルエンジンのバンの2本立てでした。
上級グレードのVXリミテッドとVXは、高級感のある内装に仕立てられ、クラウンには及ばなかったですが、マークⅡくらいのクオリティにはなっていました。それでも、従来のランクルから見れば倍以上に高級な内装でした。また、この2グレードにはムーンルーフが標準装備されていました。

80系では上限開きのリアドアが採用されたが、下級グレードは左右幅の異なる観音開きだった。
Toyota Land Cruiser 80 Wagon GX JP-spec (HZ81V) 1989–94 wallpapers
当時の4WDには、山林などでの事業用途を意識した下級グレードも用意されていて、80系でもオーバーフェンダーや華飾のないシンプルな内外装のGXやSTDがありました。
1992年に小規模なマイナーチェンジが行われ、ガソリンエンジンは4000ccから4500ccに拡大。DOHCになり出力も強化しました。また、アルミホイールのデザイン変更、ATの電子制御化などの改良が施されました。

1992年のマイナーチェンジ後の80系
Toyota Land Cruiser 80 VAN VX JP-spec (HZ81V) 1992–94 wallpapers
人気絶頂の中でマイナーチェンジ
1995年1月には大規模なマイナーチェンジが行われて、後期型となります。ディーゼルエンジンの4バルブ化、運転席エアバッグのオプション設定などが行われました。
見た目の最大の変更点は、フロントグリルが「TOYOTA」の文字から、現在でも使われているCIマークに変更されたことです。

後期型の外観
80系は人気4WDのひとつとして、街中でもよく見かけるようになりました。特に、当時はディーゼル規制が緩かったためバンボディが多く、しかも自動車税を抑えるためキャンピングカーにして8ナンバー登録にしている80系が多かったです。

最上級グレードのVXリミテッドでは、本革内装がオプション設定されていた。
Toyota Land Cruiser 80 Wagon VX-Limited JP-spec (HZ81V) 1995–97 wallpapers

後期型のダッシュボード
Toyota Land Cruiser 80 Wagon VX-Limited JP-spec (HZ81V) 1995–97 wallpapers
熱狂的なファンが今も乗っている

カンガルーバーは、1980~90年代の4WDの必須アイテム
Toyota Land Cruiser 80 VX-Limited Active Vacation JP-spec (HZ81V) 1995–97 wallpapers
1998年1月に100系にバトンタッチし、80系は生産を終了しました。100系は高級感が増しましたが、クロカン4WDとしてのタフさは80系の方が上のため、四駆愛好家の中には、いまも80系を愛用している人が多くいます。

キャンパー仕様の内装
Toyota Land Cruiser 80 VX-Limited Active Vacation JP-spec (HZ81V) 1995–97 pictures
実は、かくいう筆者も80系の大ファンです。最初は丸くてカッコ悪いな、と思っていたのですが、友人の家が80のVXリミテッドに乗っていて、ドライブに出たり運転させてもらったりしているうちに、性能の高さとほどよいクオリティにすっかり魅了されてしまいました。
例に漏れず、キャンピング仕様のディーゼルエンジン。広くて快適で、それでいて当時は軽油が60円台でしたので、燃料代はガソリン1500ccの小型セダンと変わらなかったほどです。

輸出仕様の80系
Toyota Land Cruiser 80 US-spec (HZ81V) 1995–97 wallpapers
ちなみにその友人は、20万キロ近く愛用した80系をディーゼル規制で手放し、ガソリンエンジンの80系を中古で買い直しました。ここまで愛されている80系は、すごく幸せなクルマだと思います。