片言中国語芸の元祖?「ゼンジー北京」を振り返る

片言中国語芸の元祖?「ゼンジー北京」を振り返る

「ワタシ中国、広島生まれ」そんな自己紹介でお馴染みだった、ゼンジー北京というタレントを覚えているでしょうか?コミックマジシャンの草分け的存在であり、片言中国語芸の元祖としても知られる彼について振り返りたいと思います。


そもそも、中国キャラの「~アルよ」のルーツって何?

漫画・アニメの中国キャラがよく使う「~アルよ」という語尾。日本人が抱くステレオタイプ的中国人像の象徴であり、実際、リアルでこのような言葉づかいをしている在日中国人に遭ったことがある人などいないことでしょう。

コレモ日本語アルカ?(岩波書店)

いつから「~アルよ」が流布し始めたかという、明確なルーツはありません。けれども明治初期、横浜在住の外国人へ日本語を指南する語学書において、以下のようなことが書かれていたといいます。

「わたくらくし、塩梅悪いある」(私は気分が悪い)

ちなみに、中国人以外の外国人は「わたし、塩梅悪いあります」みたいな感じで、「あります」を語尾につけていたのだとか。そういえば、漫画で登場するあやしい西洋人キャラは「~マース!」「~デース!」となぜか敬語になっていますが、いずれにしても「わたし“は”塩梅“が”悪いです」と、日本特有の助詞をうまくつかえない中国人が、てっとり早く日本語をマスターする手段として「~アル」を開発したと考えるのが妥当でしょう。

これ以降、古くは雑誌『少年倶楽部』に連載されていた『のらくろ』の中国人兵(豚の姿をしている)、最近では『銀魂』の美少女キャラ「神楽」など、さまざまな漫画作品において散見されてきたこのチャイナ口調。本稿において紹介する「ゼンジー北京」は、そんな漫画的中国人像を抽出してギャグ化した手品師として、80年代に一世を風靡しました。

「銀魂」に出てくる神楽も”~アル”と話す

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新人の頃はふつうのマジシャンだった、ゼンジー北京

ゼンジー北京は、もともと普通の手品師だったといいます。広島県生まれ大阪育ちの彼が、チャイナ服を着て「~アルよ」「~よろし」とのたまう、ある種、記号化された中国人キャラを演じるようになったのは、初舞台からしばらく経ってからのことでした。

ゼンジー北京の師匠は、ゼンジー中村という人物。音楽に乗って繰り広げられる大がかりで華麗なマジックが持ち味であり、本人の立ち姿も実にスマートでした。そんな中村に憧れてこの道を志した北京は、当然、師匠の模倣からスタートすることになります。しかし、いつからか「コピーのままでは師匠を超えられない」と考え、自分のスタイルを確立させようと思い立つのです。

事務所近くの中華料理屋の店員を見て、今の芸風を思いつく

北京が考え付いたのは、「マジックにおしゃべりを取り入れる」というスタイル。今でこそ、マギー一門をはじめ、コミカルなしゃべりと手品を売りにしたタレントは多いものの、当時、この芸風を確立したマジシャンは誰もいませんでした。このスタイルに可能性を感じた北京でしたが、如何せん、彼は客前でしゃべるのが得意ではありません。というか、人前に出るとあまりの緊張からまともに話すことすら難しくなる極度のあがり症だといいます。

そんな北京に転機が訪れます。それは、たまたま事務所の隣にあった中国料理屋へ行ったときのこと。そこで働く台湾人従業員の話し方を聞くにつれて、ひとつのインスピレーションが降ってきます。「これを真似てみたらどうか」と。すぐに北京はこの店員のしゃべり方をコピーし、さらにコスチュームも中国風にチェンジして、芸風を一新。不思議なことに、このスタイルにしてからは、舞台上であがらなくなったといいます。

ゼンジー北京

1984年には上方お笑い大賞を受賞

彼のショーは、「ワタシ中国、広島生まれ。タネも仕掛けもチョトアルヨ」「ヨークミテ、チョウダイ」などと言いながら、すぐにタネがわかってしまうようなマジックをいくつか披露して笑いをとったあとに、最後は高度なマジックを披露して締めるというのが定番の流れとなっていました。
この観客を煙にまくような、あやしい片言の中国人キャラはたいへんな評判を呼び、北京にはテレビの出演依頼が殺到。キャラ変してからわずか3年余りで、師匠からの独立も果たしたそうです。

1984年には、中華人民共和国の北京公演を成功させ、上方お笑い大賞を受賞するなど、隆盛を極めたゼンジー北京でしたが、1990年代以降はめっきりテレビで見なくなりました。一つの芸、もしくは一つのキャラで突如注目されたタレントが一時的に大量消費されて、あっという間に飽きられるのは、今も昔も変わらない世の中の常です。しかし、彼が発見した「片言・中国語芸」という鉱脈は、劇団ひとりといった後発の芸人にも引き継がれています。

(こじへい)

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