『ガンプラり歩き旅』その26 ~2001年、1/144 ガンダム3度目への旅~

『ガンプラり歩き旅』その26 ~2001年、1/144 ガンダム3度目への旅~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第26回は、『機動戦士ガンダム』(1979年)主役メカ・ガンダムの2001年バージョンです!


「アムロ、ガンダム。行きます!」

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、バンダイが2001年に、放映終了後21年を経て発売した、決定版(当時)ともいえる「1/144 ガンダム」、HGUC 021版の紹介です!


ガンダム 1/144 HGUC 021 2001年5月 1000円

テレビ版オープニングの1カットを模したポーズでライフルを構えるガンダムの図!

肩アーマーが五角形のガンダムは、俺の知ってるガンダムじゃない!
あと、正面から見た時に、首元から左右の肩アーマーの上面まで、面一に繋がってないガンダムは、俺が知っているガンダムじゃない!
肩アーマーだけ正面ラインが盛り上がって見えているのは、ガンダムはガンダムでもガンダムMK-Ⅱからだろう!
後、俺の知ってるガンダムは、ビームライフルやバックパックはミディアムブルーで、マニュピレーター(手)は濃緑色一色で、最初のガンダムはモノコック構造なんだから、間接も首も装甲と同じ白色なんだよ!

パッケージのポーズ=オープニングの1ポーズを、そのまま再現した構図がこれだ!

特に関節と首!
例えばROBOT魂Ver.A.N.I.M.Eなどのガンダムは、わざとらしく古参ファンのツボを押そうと、肩を四角にしたり、胸のダクトにカーブ付けたり、拳を濃緑色で、武装をミディアムブルーで塗装して、いかにも「アニメの画面の中のガンダムが飛び出してきました」とアピールしているが、馬鹿にするな!
本当の、テレビ画面の中のガンダムは、首も関節も白色で、挙句にゃシールドの裏は赤茶色で、“それがガンダム”なんだよ! そんな代物は立体化出来ないのは分かってるんだから、「アニメ版でーっす」と、中途半端な代物を売りつけようとするな!

HGUC以降の1/144 ガンダムの中で、一番アニメ版に近いとも言われるHGUC 021 ガンダム!

特に「ガンダムの首が白」これに関しては重要な逸話があって。
なんでも、ガンプラで一番最初に塗装指示書を担当した人が、たまたま資料として手に入れたアニメ抜き焼の写真が、たまたまガンダムの首の部分だけが影になっていて、濃い色で塗られていたのを「ガンダムの首は、“そういう色”なんだ」で勘違いしてしまい、記念すべきガンプラ第一号の1/144ガンダムの塗装指示書に、首をグレーで塗る指示を出してしまったので、それ以降なぜか「ガンダムの首はグレー」で37年間、誰も気付かないままガンプラやフィギュアの歴史が続いてきてしまったのだ!(いや、厳密には「狙い過ぎた商品」の一部には、ちゃんとガンダムの首が白い商品も散見される。後は「完成品フィギュアで、塗装工程を減らしたいので白のまま」というのもあるが(笑))

20年の時を経て、並ぶ新旧1/144 ガンダム。左が栄光の初代1/144 ガンダム

とにかく、90年代のマスターグレード(MG)1/100 ガンダム辺りから「これが『機動戦士ガンダム』(1979年)に登場した、RX-78 ガンダムの新解釈の基礎です」「元のアニメデザイン版は、あくまでアニメ用ですから、仮にガンダムやザクを実在兵器だと仮定するならば、アニメで描く段階で下げられた解像度を、上げた状態で模型にしなければいけません」的な、誰とは言わないけど過渡期があって、腰アーマーの分割まではまだ、あぁ良いアイディアかもしれないと思ってはいたものの、胸の黄色いダクトはいつの間にか出っ張っちゃうし、全身にパネルラインが走りまくっちゃうし、挙句にゃいつの間にかガンダムの肩アーマーは、複合装甲の五角形がスタンダードになっちゃうし(中には七角形の肩アーマーのRX-78 ガンダムのプラモデルもあるんだぜ!? 信じられるか!?)。
ガンダムのビジュアル面での始祖でもある、安彦良和御大が自ら手掛けた『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のアニメ版までも、メカ設定が過渡期のままなので、必然的に「安彦ガンダムなのに、立体化される時は過渡期のまま」になっちゃってるし!

1/144 ガンダムで初めて「シールドを背負いながらも、両手でビームライフルを正面に向けて構えることが出来たガンダム」

そりゃね?
「アニメでメカが描かれる時、実在するバイクや戦闘機でも、ある程度簡略化されて描かれるという構造を逆に考察してみれば、アニメでガンダムがああ描かれているからと言って、アレのままがあの世界に実在するというわけではなく、あのアニメ版ガンダムは、『デビルマン』(1972年)で不動明が乗っていたバイク並みには、簡略化されて描かれているわけで、それを一度、実在のメカニック兵器に置き換えて立体化する」は、正しい手順だと思うのよ? 正論だと思うんですよ!?
さっきも書いた「解像度を高くする」っていう手法だよね?
でも、50年代の白黒映画とかを、カラーライズしたりデジタルリマスターするのとは概念が違うのだから、結局は、その時々のメカニックデザインの流行やトレンドを取り入れた形で、永遠のビジネスを手に入れたバンダイというのは、ガンプラ黎明期とは違った角度で偉大であるなぁと言わざるを得ない。

ここからは少し再現画像を。第1話、初めての戦闘でザクをちぎり飛ばすアムロのガンダム!

アニメのデザインの呪縛から解き放たれて、リファインされるようになったガンダムの目立った共通特徴は「完全モノコック構造だった一年戦争時のモビルスーツが、軒並みフレーム構造のように関節が処理されるようになった」「マニュピレーター(手)が、アニメ版の節付丸指グローブ表現から、首甲プレート(四肢の装甲と同じ色)に関節付きの指(グレー等の関節色)が生えてる、角ばったデザインに変更」「股間と足の関節可動領域を拡大確保するために、アニメデザイン時はただの四角い箱だった腰アーマーを、5枚(もしくは6枚)のプレートがそれぞれ暖簾のように腰を覆う概念に置き換えた」が三大特徴だが、その他にも「胸の黄色いダクトの凸凹解釈」「肩アーマーの形状」等は、近年のガンダムフィギュアが互いを個別認識、差別化主張するためのキーポイントとして、多々混在している要素だったりもする。

永遠のライバルになる、シャアのザクと戦い合う!

ちなみに、今ではガンダム立体化の大前提基本フォーマットになってしまった、腰のアーマーの分割アイディアは、1990年3月発売の「HG 1/144 RX-78 ガンダム」が元祖。ちなみに、このHGガンダムは、1980年発売開始以来ガンプラの歴史の中で、初にして唯一の「完全絶版キット」として認定されている(理由は、「色分けのシステムインジェクションが金型に負荷をかけすぎて金型が壊れた」や「1/144ガンダムのベーシカルな『HGでガンダムのプラモデル』は、HGUC(今回紹介しているコレ)が、改めて役割を担うので、HGガンダムが残るといろいろ混乱と面倒しか招かない」等があると思われる)。
また、“成型色段階で、首がグレー”なのと“肩アーマーが、首の襟元のラインより盛り上がっているシルエット”が、公式のガンプラで導入され始めたのもここから。

ガルマのドップの、翼を切り裂くガンダム!

また、腰アーマーのプレート分割に関しては、HGガンダムの組み立て説明書で、大河原邦男氏が描いたリファインデザインで、そこへのアプローチの片鱗が伺えるが、むしろそれをもっと明確にさせたのが、その組立て説明書でカトキハジメ氏が描いたイラストであり、そのアイディアをガンダムモデラーに鮮烈に刻み込んだのは、カトキ氏デザインでフルスクラッチされた『月刊モデルグラフィックス』1990年7月号に掲載された1/72スケールRX-78-2 ガンダムVer.Kaの作例であっただろう。

ランバ・ラルのグフとの一騎打ち!

要するに、もうこの辺から段々ガンダム自体は、「アニメ設定に忠実に」立体化しても限界があるからという理由で、「その時代その時代の、フォーカスの解像度で、何度でも変化したガンダムが解釈可能だ」へと、“翔んで”みせたのだ。
そこでは「これはRX-78ガンダムじゃないけど、ガンダムと同じ時代に活躍していた、アニメの『機動戦士ガンダム』には登場しない別のガンダム」という設定の、『機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争』(1989年)のガンダムNT-1アレックスなどの存在も影響していて、やがてその流れはザクやドムのリファインにも繋がっていくことになる。その上で、『ポケットの中の戦争』ではあくまで当初、モビルスーツデザインを担当した出渕裕氏は上で解説したように「モビルスーツの画の解像度を上げた」だけだったというスタンスであったが、まだ1989年というタイミングでは、それはプラモデルビジネス的にバリューがなかったために、どれもこれも元のザクやゲルググとは別の機種ということにされてしまい、この辺りから一気に、一年戦争におけるモビルスーツのバリエーション概念が、根底から覆されたまま増殖するようになった。

ドップファイター群に対して、空中戦を挑むガンダム!

それを、元の出渕氏の発想にあった「解像度を上げただけ」へ戻したのが、1990年の1/144 HGガンダムであり、また1995年から始まった、「1/100スケールで、最高級(マスターなグレード)のモビルスーツプラモデルを、高解像度リファインデザインで商品化する」というキャッチフレーズのマスターグレード(MG)でもあり、ここまで書いてきたガンダムのデザインの大きな変換は、概ねMGガンダムで固まっていて現在に至っている。

シャアのズゴック相手にビーム・ライフルが飛ぶ!

その後は、時代ごとのメカデザインのトレンドを取り入れ直したり、プラモデルの素材やテクノロジーの進歩を取り入れて新たにリファインしたりする、いわゆる「Ver2.0」や「REVIVE」「RG」「RE」等の商売発想が認められるようになり、その発想を1/144に凝縮して「過去に発売したモビルスーツを、アニメデザインを尊重しつつ、今の解釈とデザインでリファインする」HGUCが開始された1999年とほぼ同じタイミングで、MGガンダムも2000年には、当初のMGガンダムの腕以外は新規造形のMGガンダムVer1.5が発売されて、その後もバージョンアップを重ねていくことになる。

シャアの最強MSゲルググと、剣を交えるガンダム!

そこで、やり過ぎのMGに対するリバウンドのようなものがHGUCの立ち上げに込められているという話は既にしたのだが、ことガンダムとザクに関しては、何度出し直しても確実に売れる、捌けるという目論見があり、その上で近年は安彦良和氏による(アニメ版メカデザインはカトキハジメ氏)『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』がアリバイコンテンツとなって、ことガンダムとザクに関しては、さらにバリエーション(機体の、ではなく、商品の、である)が増殖し続けている。

HGUC 021 ガンダムの頭部。目の下赤ラインまではシール

HGUC 021版ガンダムの話に戻せば、このキットを「発売された2001年の視点」で論ずるか、「2017年今現在から見た時の視点」で論ずるかで、位置づけが大きく異なってくるのである。

足を踏み出してライフルを構えるガンダム。HGUC 021の開脚範囲が把握できる

まず「発売された2001年の視点」で語るのであれば、1990年版HGガンダムが、デザインをリファインしながらも、ビジョンに技術が追い付いていなかった部分を反省し、一方でMGガンダムが、好き嫌いが別れるにせよあまりにもカトキデザイン風ガンダムとして独立した存在になってしまったため(それでもまだカトキ成分が足りないというガンプラファンの声も強く、やがてMGガンダムVe.Kaが発売されるが)、そこまでの過程で考案された、腰アーマーの分割や関節のむき出し構造など、良いと思われるところは残しつつ、一度元のアニメのデザインに極力戻し近付けながらも、可動範囲やディティールを高次元で確保しつつ、適度な価格と製作難易度でガンダムを1/144で売りなおそうというコンセプトが、HGUC版ガンダムにはあった。

初代HGガンダムでもとらせた「オープニングポーズ」

そのバランス調整を最高の技術力で舵取りするために、ガンダムは栄光あるシリーズの初代主役モビルスーツであるにもかかわらず、HGUCがその技術とノウハウを蓄積しきったと判断できるまで、2年の歳月と20機のモビルスーツの発売展開の期間を我慢し続けたのだ。

クリアパーツで成型された、ビーム・サーベルのバリューが高い

一方、このHGUC 021版を「現在の視点」で受け止めるのであれば、この発売時期においては、その志とコンセプトは見事に両立出来ていて、今の目で見ても特に問題はない。

HGUC 021 ガンダムのリアビュー。リアスカートやバックパックなど、初代HGガンダムからさらに10年の進歩が垣間見える

しかし、HGUC版ガンダムも、その後の15年で続々登場した、HGUC Gアーマー付属版、30周年記念版HG Ver.G30th、リアルグレード版、REVIVE版、ORIGIN版といった「1/144のRX-78-2ガンダム」商品の多さ(プラモデルだけでないなら、完成品アクションフィギュアの「ROBOT魂」でも数種類、アニメ版そのものの究極を狙った完成品玩具フィギュア『可動戦士ガンダム』などなど)の階層の中では、このHGUC ガンダムは凡庸な位置づけに堕ちてきてしまった感は否めない。

ここからは再現画像で武装紹介。まずはもっともメジャーなビーム・ライフル

ただし、技術面ではどんどん進歩を遂げているガンプラではあるが、一方で、デザインリファインによるアシストを請けないと、可動範囲やギミックには限界が出るのも真理であり、特に初代HGガンダムで鮮烈にデビューした腰アーマーのプレート分割という斬新な概念は、ザクやガンキャノン等ほとんどのモビルスーツデザインリファインに受け継がれると共に、その他の解釈の例外を生むことは現状ではできていない。

そしてビーム・サーベルを構えるHGUC 021 ガンダム!

よって、1/144でも1/100でも、新製品が発表されるたびに、クオリティと可動範囲はインフレを起こし続けているが、それは単純に、モビルスーツという物体の表面を覆う装甲の分割を増やし、いわゆる「解像度を高くして、情報量を増やす」方向へ一直線に向かっているため、1979年のアニメ『機動戦士ガンダム』に登場したガンダムの立体化という原体験と、可動領域確保のためのデザインアレンジとのバランスが一番とれているのが、1/144ではこの021版バージョンのHGUC ガンダムではないかと思われるのだ。

ハイパー・バズーカ。カラーリングは初期バージョンで制作

そのため、確かにこのHGUC初期の021版ガンダムは、イマドキの超絶可動範囲を誇る最新商品群と比較するとポージングの幅は狭い。
それは同じく、初期のガンキャノンやザクなどにも言える“折衷案”の落としどころなのだが、それゆえか、ガンキャノンもザクもガンダムも、リファインされた1/144は、REVIVE版やRG版、ORIGIN版など多種が出ていて、アニメ版のデザインと可動範囲の広がったリファインデザインとの狭間で、ガンプラファンは様々な選択肢の中で、ニーズに合ったバランスの商品を手に出来るという、ある意味では幸福な状況がガンプラの現在なのだ。

別売り武器セットのガンダムハンマー!

今回のこの021版キットの方は、最初の『機動戦士ガンダム』をベースにした最大公約数的解釈概念のガンダムを、最小のパーツ数と最大の効果で、可動領域と色分割に挑戦。
合わせ目は、前腕や前脛、ふくらはぎ、頭部前後挟みでガッツリ残るが、気にしなければどうということはない!
結果、可動範囲はそこそこ広く、色分けも、1/144では無理がある、腰ふんどしのV字モールドなど細部を除けば、顎やV字アンテナ基部の赤まで別パーツ化し、基本的には無塗装でも完成する仕様で仕上がった(この時は目の下の赤い部分はシール処理まで止まりであったが、やがてREVIVE版では色分けが達成される)。

これも別売り武器セットのハイパーハンマー!

そういう意味では、説明書のとおりにパーツを切り取ってははめ込んでいき、最後にはシールを数か所貼るだけで、それなりの完成度の高い、アニメ版ガンダムのアクションフィギュアが手に入るというのも道理なのだが……。

いまさらの前置きだが、筆者はプラモデル造りにおいて、一番重要な「合わせ目消し」「表面処理」「ブラシ塗装」「フィニッシング」等が苦手で逃げている人なのだが(だって仕事じゃないもん、趣味だもん)、逆に妙なこだわりを持ち出すと、どんな面倒事でも手を出してしまうという悪癖がある。

これはテレビ版ガンダム大気圏突入フィルム。再現画像では当時のネタっぽく、サランラップを巻いて使用している

今回の、シミルボンでの『機動戦士ガンダムを読む!』再現画像の主旨は「1979年に制作されたアニメ作品『機動戦士ガンダム』のメカ名場面の様々を、古今のガンプラの中から、個々のメカ単位でベストチョイスをしながら組合せ撮影し、写真を加工し、再現してみよう」が最終目的にあるものだから、場合によっては同一画面で、1980年のプラモデルと、2017年のプラモデルが同居するケースだってありえるわけで。
そうなると、同じ画面の中で解像度が上がったり下がったり、見ている人に優しくない画面設計に至ってしまうわけで。

爆発するガンダムバズーカを、シールドで防ぐガンダム!

で、この『ガンプラり歩き旅』シリーズ初回1/144ガンダムの項でも述べたように、解像度がどうであろうと、70年代アニメ的写実論の限界がどうであろうと、ガンダムの手首は濃緑色でなければならないし、武装はミディアムブルーが基本でなければならないし、ガンダムの首は白くならねばならない。

ホワイトベースを守るガンダムが、ビーム・ライフルを撃つ!

今回、冒頭でシャウトしたように、もっと突っ込んでダメ出しを入れれば。
百歩譲って、アニメでは見えていなかった肩関節軸や股関節軸はグレーでも良いかもしれないが、この時代のモビルスーツで、間接ブロックがフレーム状でグレーである表現はおかしいのだ。
まぁ、ここで「おかしいのだ」ってつったところで、イマドキのガンプラ相手に、筆者如きがカスタムでアニメ版にできようものでもなし。
なので、ここはなんとか、塗装で対抗して、色味と色数の情報量を減らして「解像度を下げる」方向で、なんとか旧1/144キット群との画的釣り合いをとるように画策してみた。しかも、全塗装ではなく、部分塗装で!

量産型グフを切り裂くガンダム!

まず、宣言通りに手首をMrカラー16濃緑色で、ビームライフルとバズーカとバックパックをMrカラー72ミディアムブルーで、首元をMrカラーGX1クールホワイトで塗装。
……と、ここで筆者は少し考える。
後のザクもそうだが、『機動戦士ガンダム』放映当時は、彩色の不徹底かフィルムの発色の事情か、ガンダムのブルーやザクの緑やシャアザクのピンクは、シーンやエピソード、下手すればカットごとに違った色味に見えるのである。
特に、ザクの緑は変化が顕著で、エメラルドグリーンに見えるシーンもあれば、イエローグリーンに見えるカットもある。

なので、MG、HGUC辺りから一気に増殖してきた「『ガンダム』のザク」プラモデルでも、同じザク、同じシャアザクでも、キットが違うだけで、ライトグリーンとディープグリーン、ピンクとあずき色の成型色の、色味が全然異なるなんてことは珍しくない。

サーベルを構えて突進するガンダム!

“そういう意味”では、筆者も30年近く腑に落ちなかったことがあるのだが、ことガンダムの胸のブルー。
それは今も書いたように、成型色付キットを買うたびに、ニュアンスが違う青で成型されているのだが、1980年発売のガンプラ第1号のガンダムの塗装指定の頃から、ずっと「インディブルー系」の、濃く明度が低い青が定番になっていた。
しかし、はて。記憶をたどっても、手元にある映像ソフトを何度見返しても、元のテレビ版でも、新作画の『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)でも(ちなみに劇場版Ⅲの新作画シーンのザクは、一番グリーンの彩度が高く、青みがかっているのが特徴)、ガンダムの胸のブルーは、むしろスカイブルーなのだ。
しかし、旧1/144キットの塗装指定だけではなく、1990年にカラー成型で発売された1/144HG ガンダムでも、今回のこのHGUC 021 ガンダムでも、相変わらず胸のブルーはインディブルー系なのである。

グフのヒートロッドに縛られて電撃を受けるガンダム

うーん。“これ”は、百式の金色のように、「アニメではそういう色合いかもしれないが、現実の設定ではこういう色だ」と解釈すべきなのか? いや、そもそもそんな概念が、1980年に生まれるもんだろうか?
ひょっとすると、このインディブルーって“首のグレー”と同じで、実は単純に1980年の第1号ガンダムキットの組み立て見本で、色指定をした担当が見間違えただけで、それをただただ、バンダイが20年以上、ミスを認めてないだけなんじゃないの?と思えてくる(後発のZガンダムなんかが、明確にインディブルーで青部分を形成しているので、ますますあやふやになっていってしまった経緯が予測できるのだ)。

量産型ズゴックを一刀両断するガンダム!

その、筆者の印象と困惑が間違っていなかったことを、アニメ評論家の氷川竜介氏が「ウェブアーカイブ 月刊アニメージュ【公式サイト】氷川竜介のアニメ重箱の隅 第6回 セル画の色味が再現された劇場版ガンダムDVD-BOX 2007.011.25」で、こんなことを書き記していたので、心底安心した。

「たとえばガンダムの胸はオリジナルのセルの色味では、よく商品化されている藍色ではなく、抜けるようなスカイブルーなのである」

まさに、我が意を得たり。
だがそうなると、ただの意地なのか、そうする方がベターだと何かの根拠で決め打ちしてしまったのか、バンダイは頑なにガンダムの胸は、インディブルーだと主張し続けてきたことになる。

モビル・アーマーグラブロを相手に水中戦で戦う!

しかし。しかしである。
なんだかんだ言いながら「解像度が上がる」というのは、オールドファンにとって逆風だけというわけでもない。後々に紹介するが、同じガンダムでも、近年のHGUC 191 ガンダムや、1/144 ORIGINガンダム等のブルーは、スカイブルーで成型されるようになったのだ(もっとも、ORIGINガンダムにおいて、当時の「彩色間違い」をそのまんま固定設定にした“黄色いアンテナ”は、さすがにどうなのよと苦笑するが(笑))

かように、バンダイは「ザクのグリーン」だけではなく「ガンダムのブルー」も(微妙なことを言えばホワイトも)、キットの数だけ選択肢があるというメニューを用意するようになったのだ。

ジャブロー内で、ザクを撃ち抜く!

しかし、そうなると複数あるガンダムキットのうち、どれをこの再現画像シリーズの主役に選ぶのであっても、キットの成型色に任せておくと、個々にあまりにも色味が違ってしまい、ただでさえ解像度の差で同じガンダム同士でも違和感が発生しやすいにもかかわらず、ガンダムで一番目立つ青味にギャップがあり過ぎると、見ていただく方々の気分を分断させてしまうことになるが、それは本末転倒である。

ならば、発想を逆転させて、現状のスカイブルー成型色のカラーリングで歴代のキットの青(だけじゃなく、赤と黄色も)を塗装で統一させてしまえば、視覚上の色彩情報量は統一できることになる。
なので、これ以降製作するガンダムに関しては、赤と黄色に関してはキャラクターレッドとキャラクターイエロー、手首に関しては濃緑色、武装に関してはミディアムブルー、白に関してはクールホワイト、そして肝心の青に関しては、ガンダムカラーのUG14 MSライトブルーを、統一フォーマットとして用いることに決めた、今決めた。

オープニングから。コア・ファイターとの合体完了! さぁ出動だ!

その上で。
あくまで解像度を、アニメ版に近い位置まで落とすという目的で。
ガンダム終了後のロボットアニメデザインで、主流になった「関節パーツだけ装甲とは別の色(主にグレー)」の固定概念を一度払拭したいので、今回の一連のHGUC制作に関しては、関節を本体装甲の腕、脚と同じカラーで塗装することにした。
具体的なことを言えば、各四肢関節部は、ガンダムはホワイトで、量産型ザクはライトグリーンで、シャア専用ザクやシャア専用ゲルググはシャアピンクで塗装するのだ。
例外は、元から関節部だけ違う色でアニメの彩色設定が出来上がっていたガンキャノンだけかと思われる。

そうして完成したHGUC ガンダムは、確かに言われてなるほどの大河原体型を誇り、HG MG以降の流れにはない、どっしりとした威風堂々のガンダムぶりである。
そういう意味での完成度は高く、しかし問題は「当時のアニメ版は、大河原体型と安彦体型の、2種類のガンダムが一つの作品の中で同居している」だったりするのではあるが……。
以降、続く。

市川大河公式サイト

関連する投稿


SDガンダム外伝の「黄金神話」のカードが、全種プリズム箔押し仕様の「スペリオルドラゴンエディション」で復活!!

SDガンダム外伝の「黄金神話」のカードが、全種プリズム箔押し仕様の「スペリオルドラゴンエディション」で復活!!

バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」にて、「SDガンダム外伝」シリーズより『新SDガンダム外伝 黄金神話 スペリオルドラゴンエディション』が発売されます。


放送開始から40周年!『金曜ロードショー』の初代OP映像がまさかのプラキット化!!

放送開始から40周年!『金曜ロードショー』の初代OP映像がまさかのプラキット化!!

ホビー通販大手の「あみあみ」より、メーカー「スタジオシュウトウ」が展開する『金曜ロードショー プラキット』が現在予約受付中となっています。


「新機動戦記ガンダムW」より、30周年を記念したフィギュア『ヒイロ・ユイ&リリーナ・ピースクラフト』がリペイント再販!!

「新機動戦記ガンダムW」より、30周年を記念したフィギュア『ヒイロ・ユイ&リリーナ・ピースクラフト』がリペイント再販!!

ホビー通販大手の「あみあみ」にて、メーカー「メガハウス」が展開する『アルファオメガ 新機動戦記ガンダムW ヒイロ・ユイ&リリーナ・ピースクラフトセット 30th Anniversary リペイント再販』が発売されます。


「機動戦士ガンダム」より『ジオン公国軍 ノーマルスーツ』がジャージになって登場!!

「機動戦士ガンダム」より『ジオン公国軍 ノーマルスーツ』がジャージになって登場!!

公式キャラクターコスチュームやアパレル・グッズの企画、開発、製造を行うコスパより、『機動戦士ガンダム』新作アパレルが発売されます。


「機動戦士ガンダム」より『地球連邦軍』『ジオン公国軍』ノーマルスーツ兵士の可動フィギュアがブリスターパッケージで登場!!

「機動戦士ガンダム」より『地球連邦軍』『ジオン公国軍』ノーマルスーツ兵士の可動フィギュアがブリスターパッケージで登場!!

ホビー通販大手の「あみあみ」にて、メーカー「メガハウス」が展開するフィギュア『G.M.G. COLLECTION 05 機動戦士ガンダム 地球連邦軍ノーマルスーツ兵士 可動フィギュア』『G.M.G. COLLECTION 06 機動戦士ガンダム ジオン公国軍ノーマルスーツ兵士 可動フィギュア』が現在予約受付中となっています。


最新の投稿


世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

葛飾区商店街連合会は、2025年10月10日より『キャプテン翼』とのコラボイベント「シーズン2」を亀有・金町・柴又エリアで開催。キャラクターをイメージした限定メニューやスタンプラリーを展開し、聖地巡礼と地域活性化を促進します。


キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

人気アニメ『キン肉マン』の「完璧超人始祖編」の名言・名場面を題材にした英会話学習書『キン肉マン超人英会話』が、2025年11月29日(土)にKADOKAWAより発売されます。超人たちの熱い言葉を通じて、楽しみながら実用的な英語表現をインプットできます。TOEIC満点保持者やプロレスキャスターなど、豪華プロ集団が監修・翻訳を担当した、ファン必携の英語学習本です。


【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

開催直前!TOKYO MX開局30周年記念「昭和100年スーパーソングブックショウ」が10月16日に迫る。古舘伊知郎と友近がMC、豪華ゲストと共に贈る一夜限りの昭和ベストヒットに期待高まる!


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。