「アムロ、ガンダム。行きます!」
今回紹介するのは、バンダイが2001年に、放映終了後21年を経て発売した、決定版(当時)ともいえる「1/144 ガンダム」、HGUC 021版の紹介です!
ガンダム 1/144 HGUC 021 2001年5月 1000円
テレビ版オープニングの1カットを模したポーズでライフルを構えるガンダムの図!
肩アーマーが五角形のガンダムは、俺の知ってるガンダムじゃない!
あと、正面から見た時に、首元から左右の肩アーマーの上面まで、面一に繋がってないガンダムは、俺が知っているガンダムじゃない!
肩アーマーだけ正面ラインが盛り上がって見えているのは、ガンダムはガンダムでもガンダムMK-Ⅱからだろう!
後、俺の知ってるガンダムは、ビームライフルやバックパックはミディアムブルーで、マニュピレーター(手)は濃緑色一色で、最初のガンダムはモノコック構造なんだから、間接も首も装甲と同じ白色なんだよ!
パッケージのポーズ=オープニングの1ポーズを、そのまま再現した構図がこれだ!
特に関節と首!
例えばROBOT魂Ver.A.N.I.M.Eなどのガンダムは、わざとらしく古参ファンのツボを押そうと、肩を四角にしたり、胸のダクトにカーブ付けたり、拳を濃緑色で、武装をミディアムブルーで塗装して、いかにも「アニメの画面の中のガンダムが飛び出してきました」とアピールしているが、馬鹿にするな!
本当の、テレビ画面の中のガンダムは、首も関節も白色で、挙句にゃシールドの裏は赤茶色で、“それがガンダム”なんだよ! そんな代物は立体化出来ないのは分かってるんだから、「アニメ版でーっす」と、中途半端な代物を売りつけようとするな!
HGUC以降の1/144 ガンダムの中で、一番アニメ版に近いとも言われるHGUC 021 ガンダム!
特に「ガンダムの首が白」これに関しては重要な逸話があって。
なんでも、ガンプラで一番最初に塗装指示書を担当した人が、たまたま資料として手に入れたアニメ抜き焼の写真が、たまたまガンダムの首の部分だけが影になっていて、濃い色で塗られていたのを「ガンダムの首は、“そういう色”なんだ」で勘違いしてしまい、記念すべきガンプラ第一号の1/144ガンダムの塗装指示書に、首をグレーで塗る指示を出してしまったので、それ以降なぜか「ガンダムの首はグレー」で37年間、誰も気付かないままガンプラやフィギュアの歴史が続いてきてしまったのだ!(いや、厳密には「狙い過ぎた商品」の一部には、ちゃんとガンダムの首が白い商品も散見される。後は「完成品フィギュアで、塗装工程を減らしたいので白のまま」というのもあるが(笑))
20年の時を経て、並ぶ新旧1/144 ガンダム。左が栄光の初代1/144 ガンダム
とにかく、90年代のマスターグレード(MG)1/100 ガンダム辺りから「これが『機動戦士ガンダム』(1979年)に登場した、RX-78 ガンダムの新解釈の基礎です」「元のアニメデザイン版は、あくまでアニメ用ですから、仮にガンダムやザクを実在兵器だと仮定するならば、アニメで描く段階で下げられた解像度を、上げた状態で模型にしなければいけません」的な、誰とは言わないけど過渡期があって、腰アーマーの分割まではまだ、あぁ良いアイディアかもしれないと思ってはいたものの、胸の黄色いダクトはいつの間にか出っ張っちゃうし、全身にパネルラインが走りまくっちゃうし、挙句にゃいつの間にかガンダムの肩アーマーは、複合装甲の五角形がスタンダードになっちゃうし(中には七角形の肩アーマーのRX-78 ガンダムのプラモデルもあるんだぜ!? 信じられるか!?)。
ガンダムのビジュアル面での始祖でもある、安彦良和御大が自ら手掛けた『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のアニメ版までも、メカ設定が過渡期のままなので、必然的に「安彦ガンダムなのに、立体化される時は過渡期のまま」になっちゃってるし!
1/144 ガンダムで初めて「シールドを背負いながらも、両手でビームライフルを正面に向けて構えることが出来たガンダム」
そりゃね?
「アニメでメカが描かれる時、実在するバイクや戦闘機でも、ある程度簡略化されて描かれるという構造を逆に考察してみれば、アニメでガンダムがああ描かれているからと言って、アレのままがあの世界に実在するというわけではなく、あのアニメ版ガンダムは、『デビルマン』(1972年)で不動明が乗っていたバイク並みには、簡略化されて描かれているわけで、それを一度、実在のメカニック兵器に置き換えて立体化する」は、正しい手順だと思うのよ? 正論だと思うんですよ!?
さっきも書いた「解像度を高くする」っていう手法だよね?
でも、50年代の白黒映画とかを、カラーライズしたりデジタルリマスターするのとは概念が違うのだから、結局は、その時々のメカニックデザインの流行やトレンドを取り入れた形で、永遠のビジネスを手に入れたバンダイというのは、ガンプラ黎明期とは違った角度で偉大であるなぁと言わざるを得ない。
ここからは少し再現画像を。第1話、初めての戦闘でザクをちぎり飛ばすアムロのガンダム!
アニメのデザインの呪縛から解き放たれて、リファインされるようになったガンダムの目立った共通特徴は「完全モノコック構造だった一年戦争時のモビルスーツが、軒並みフレーム構造のように関節が処理されるようになった」「マニュピレーター(手)が、アニメ版の節付丸指グローブ表現から、首甲プレート(四肢の装甲と同じ色)に関節付きの指(グレー等の関節色)が生えてる、角ばったデザインに変更」「股間と足の関節可動領域を拡大確保するために、アニメデザイン時はただの四角い箱だった腰アーマーを、5枚(もしくは6枚)のプレートがそれぞれ暖簾のように腰を覆う概念に置き換えた」が三大特徴だが、その他にも「胸の黄色いダクトの凸凹解釈」「肩アーマーの形状」等は、近年のガンダムフィギュアが互いを個別認識、差別化主張するためのキーポイントとして、多々混在している要素だったりもする。
永遠のライバルになる、シャアのザクと戦い合う!
ちなみに、今ではガンダム立体化の大前提基本フォーマットになってしまった、腰のアーマーの分割アイディアは、1990年3月発売の「HG 1/144 RX-78 ガンダム」が元祖。ちなみに、このHGガンダムは、1980年発売開始以来ガンプラの歴史の中で、初にして唯一の「完全絶版キット」として認定されている(理由は、「色分けのシステムインジェクションが金型に負荷をかけすぎて金型が壊れた」や「1/144ガンダムのベーシカルな『HGでガンダムのプラモデル』は、HGUC(今回紹介しているコレ)が、改めて役割を担うので、HGガンダムが残るといろいろ混乱と面倒しか招かない」等があると思われる)。
また、“成型色段階で、首がグレー”なのと“肩アーマーが、首の襟元のラインより盛り上がっているシルエット”が、公式のガンプラで導入され始めたのもここから。
ガルマのドップの、翼を切り裂くガンダム!
また、腰アーマーのプレート分割に関しては、HGガンダムの組み立て説明書で、大河原邦男氏が描いたリファインデザインで、そこへのアプローチの片鱗が伺えるが、むしろそれをもっと明確にさせたのが、その組立て説明書でカトキハジメ氏が描いたイラストであり、そのアイディアをガンダムモデラーに鮮烈に刻み込んだのは、カトキ氏デザインでフルスクラッチされた『月刊モデルグラフィックス』1990年7月号に掲載された1/72スケールRX-78-2 ガンダムVer.Kaの作例であっただろう。
ランバ・ラルのグフとの一騎打ち!
要するに、もうこの辺から段々ガンダム自体は、「アニメ設定に忠実に」立体化しても限界があるからという理由で、「その時代その時代の、フォーカスの解像度で、何度でも変化したガンダムが解釈可能だ」へと、“翔んで”みせたのだ。
そこでは「これはRX-78ガンダムじゃないけど、ガンダムと同じ時代に活躍していた、アニメの『機動戦士ガンダム』には登場しない別のガンダム」という設定の、『機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争』(1989年)のガンダムNT-1アレックスなどの存在も影響していて、やがてその流れはザクやドムのリファインにも繋がっていくことになる。その上で、『ポケットの中の戦争』ではあくまで当初、モビルスーツデザインを担当した出渕裕氏は上で解説したように「モビルスーツの画の解像度を上げた」だけだったというスタンスであったが、まだ1989年というタイミングでは、それはプラモデルビジネス的にバリューがなかったために、どれもこれも元のザクやゲルググとは別の機種ということにされてしまい、この辺りから一気に、一年戦争におけるモビルスーツのバリエーション概念が、根底から覆されたまま増殖するようになった。
ドップファイター群に対して、空中戦を挑むガンダム!
それを、元の出渕氏の発想にあった「解像度を上げただけ」へ戻したのが、1990年の1/144 HGガンダムであり、また1995年から始まった、「1/100スケールで、最高級(マスターなグレード)のモビルスーツプラモデルを、高解像度リファインデザインで商品化する」というキャッチフレーズのマスターグレード(MG)でもあり、ここまで書いてきたガンダムのデザインの大きな変換は、概ねMGガンダムで固まっていて現在に至っている。
シャアのズゴック相手にビーム・ライフルが飛ぶ!
その後は、時代ごとのメカデザインのトレンドを取り入れ直したり、プラモデルの素材やテクノロジーの進歩を取り入れて新たにリファインしたりする、いわゆる「Ver2.0」や「REVIVE」「RG」「RE」等の商売発想が認められるようになり、その発想を1/144に凝縮して「過去に発売したモビルスーツを、アニメデザインを尊重しつつ、今の解釈とデザインでリファインする」HGUCが開始された1999年とほぼ同じタイミングで、MGガンダムも2000年には、当初のMGガンダムの腕以外は新規造形のMGガンダムVer1.5が発売されて、その後もバージョンアップを重ねていくことになる。
シャアの最強MSゲルググと、剣を交えるガンダム!
そこで、やり過ぎのMGに対するリバウンドのようなものがHGUCの立ち上げに込められているという話は既にしたのだが、ことガンダムとザクに関しては、何度出し直しても確実に売れる、捌けるという目論見があり、その上で近年は安彦良和氏による(アニメ版メカデザインはカトキハジメ氏)『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』がアリバイコンテンツとなって、ことガンダムとザクに関しては、さらにバリエーション(機体の、ではなく、商品の、である)が増殖し続けている。
HGUC 021 ガンダムの頭部。目の下赤ラインまではシール
HGUC 021版ガンダムの話に戻せば、このキットを「発売された2001年の視点」で論ずるか、「2017年今現在から見た時の視点」で論ずるかで、位置づけが大きく異なってくるのである。
足を踏み出してライフルを構えるガンダム。HGUC 021の開脚範囲が把握できる
まず「発売された2001年の視点」で語るのであれば、1990年版HGガンダムが、デザインをリファインしながらも、ビジョンに技術が追い付いていなかった部分を反省し、一方でMGガンダムが、好き嫌いが別れるにせよあまりにもカトキデザイン風ガンダムとして独立した存在になってしまったため(それでもまだカトキ成分が足りないというガンプラファンの声も強く、やがてMGガンダムVe.Kaが発売されるが)、そこまでの過程で考案された、腰アーマーの分割や関節のむき出し構造など、良いと思われるところは残しつつ、一度元のアニメのデザインに極力戻し近付けながらも、可動範囲やディティールを高次元で確保しつつ、適度な価格と製作難易度でガンダムを1/144で売りなおそうというコンセプトが、HGUC版ガンダムにはあった。
初代HGガンダムでもとらせた「オープニングポーズ」
そのバランス調整を最高の技術力で舵取りするために、ガンダムは栄光あるシリーズの初代主役モビルスーツであるにもかかわらず、HGUCがその技術とノウハウを蓄積しきったと判断できるまで、2年の歳月と20機のモビルスーツの発売展開の期間を我慢し続けたのだ。
クリアパーツで成型された、ビーム・サーベルのバリューが高い
一方、このHGUC 021版を「現在の視点」で受け止めるのであれば、この発売時期においては、その志とコンセプトは見事に両立出来ていて、今の目で見ても特に問題はない。
HGUC 021 ガンダムのリアビュー。リアスカートやバックパックなど、初代HGガンダムからさらに10年の進歩が垣間見える
しかし、HGUC版ガンダムも、その後の15年で続々登場した、HGUC Gアーマー付属版、30周年記念版HG Ver.G30th、リアルグレード版、REVIVE版、ORIGIN版といった「1/144のRX-78-2ガンダム」商品の多さ(プラモデルだけでないなら、完成品アクションフィギュアの「ROBOT魂」でも数種類、アニメ版そのものの究極を狙った完成品玩具フィギュア『可動戦士ガンダム』などなど)の階層の中では、このHGUC ガンダムは凡庸な位置づけに堕ちてきてしまった感は否めない。
ここからは再現画像で武装紹介。まずはもっともメジャーなビーム・ライフル
ただし、技術面ではどんどん進歩を遂げているガンプラではあるが、一方で、デザインリファインによるアシストを請けないと、可動範囲やギミックには限界が出るのも真理であり、特に初代HGガンダムで鮮烈にデビューした腰アーマーのプレート分割という斬新な概念は、ザクやガンキャノン等ほとんどのモビルスーツデザインリファインに受け継がれると共に、その他の解釈の例外を生むことは現状ではできていない。
そしてビーム・サーベルを構えるHGUC 021 ガンダム!
よって、1/144でも1/100でも、新製品が発表されるたびに、クオリティと可動範囲はインフレを起こし続けているが、それは単純に、モビルスーツという物体の表面を覆う装甲の分割を増やし、いわゆる「解像度を高くして、情報量を増やす」方向へ一直線に向かっているため、1979年のアニメ『機動戦士ガンダム』に登場したガンダムの立体化という原体験と、可動領域確保のためのデザインアレンジとのバランスが一番とれているのが、1/144ではこの021版バージョンのHGUC ガンダムではないかと思われるのだ。
ハイパー・バズーカ。カラーリングは初期バージョンで制作
そのため、確かにこのHGUC初期の021版ガンダムは、イマドキの超絶可動範囲を誇る最新商品群と比較するとポージングの幅は狭い。
それは同じく、初期のガンキャノンやザクなどにも言える“折衷案”の落としどころなのだが、それゆえか、ガンキャノンもザクもガンダムも、リファインされた1/144は、REVIVE版やRG版、ORIGIN版など多種が出ていて、アニメ版のデザインと可動範囲の広がったリファインデザインとの狭間で、ガンプラファンは様々な選択肢の中で、ニーズに合ったバランスの商品を手に出来るという、ある意味では幸福な状況がガンプラの現在なのだ。
別売り武器セットのガンダムハンマー!
今回のこの021版キットの方は、最初の『機動戦士ガンダム』をベースにした最大公約数的解釈概念のガンダムを、最小のパーツ数と最大の効果で、可動領域と色分割に挑戦。
合わせ目は、前腕や前脛、ふくらはぎ、頭部前後挟みでガッツリ残るが、気にしなければどうということはない!
結果、可動範囲はそこそこ広く、色分けも、1/144では無理がある、腰ふんどしのV字モールドなど細部を除けば、顎やV字アンテナ基部の赤まで別パーツ化し、基本的には無塗装でも完成する仕様で仕上がった(この時は目の下の赤い部分はシール処理まで止まりであったが、やがてREVIVE版では色分けが達成される)。
これも別売り武器セットのハイパーハンマー!
そういう意味では、説明書のとおりにパーツを切り取ってははめ込んでいき、最後にはシールを数か所貼るだけで、それなりの完成度の高い、アニメ版ガンダムのアクションフィギュアが手に入るというのも道理なのだが……。
いまさらの前置きだが、筆者はプラモデル造りにおいて、一番重要な「合わせ目消し」「表面処理」「ブラシ塗装」「フィニッシング」等が苦手で逃げている人なのだが(だって仕事じゃないもん、趣味だもん)、逆に妙なこだわりを持ち出すと、どんな面倒事でも手を出してしまうという悪癖がある。
これはテレビ版ガンダム大気圏突入フィルム。再現画像では当時のネタっぽく、サランラップを巻いて使用している
今回の、シミルボンでの『機動戦士ガンダムを読む!』再現画像の主旨は「1979年に制作されたアニメ作品『機動戦士ガンダム』のメカ名場面の様々を、古今のガンプラの中から、個々のメカ単位でベストチョイスをしながら組合せ撮影し、写真を加工し、再現してみよう」が最終目的にあるものだから、場合によっては同一画面で、1980年のプラモデルと、2017年のプラモデルが同居するケースだってありえるわけで。
そうなると、同じ画面の中で解像度が上がったり下がったり、見ている人に優しくない画面設計に至ってしまうわけで。
爆発するガンダムバズーカを、シールドで防ぐガンダム!