先日惜しくもこの世を去ってしまった、3代目ジェームス・ボンド役としても有名な、名優ロジャー・ムーア。

彼こそ俺達のボンド!
人それぞれ好みはあろうが、我々ミドルエッジ世代にとっての永遠のボンド役者と言えば、やっぱりこの人!
特に彼の出演作の中でも、ミドルエッジ世代が最初に劇場で見た007映画であろう、「私を愛したスパイ」と「ムーンレイカー」は、今もなおファンの間で絶大な人気を誇っている。

「私を愛したスパイ」と「ムーンレイカー」のオリジナルポスター
実はこの2本、公開当時に日本でコミカライズ(映画のコミック化)されていたのをご存知だろうか?
残念ながら掲載誌の知名度の低さもあり、現在ではほとんど知られていない、このコミカライズ版だが、このまま埋もれさせてしまうには実に惜しい作品!
そこで今回は、「世界の007コミック事情」と併せて、この2作品のコミカライズ版を是非紹介させて頂ければと思う。
これが世界各国の007コミカライズ事情だ!
日本での007コミカライズ事情について紹介する前に、まずは日本以外の世界各国での007コミカライズ事情について紹介することにしよう。
どの国の本も、皆それぞれのお国柄と個性に溢れた素晴らしい物ばかりだ。

「ユア・アイズ・オンリー」のコミカライズ版

映画第1作目、「ドクターノオ」のコミック版

イギリスの007コミックス

スウェーデン版007コミック

スウェーデン版007コミック

トルコの007コミック

南米チリの007コミック

インドの007コミック

ユーゴスラビアの007コミック

香港の海賊版コミック

なんじゃ、こりゃぁ!
いかがだっただろうか?
それにしても、これだけ世界各国で007がコミカライズされていたとは!中には60年代から80年代までの長期に渡り、延々発行され続けていた国もあるなど、007シリーズがどれ程文化や宗教を越えて愛されていたか、一目でお分かり頂けたと思う。
さて、それではいよいよ我が国日本での、007コミカライズ事情について紹介して行くことにしよう。
ショーン・コネリー期だけでなく、ロジャー・ムーア期の007もコミック化されてた
日本における007シリーズのコミカライズ版と言えば、当時の月刊誌「ボーイズライフ」に掲載された、さいとうたかを先生による4作品、「死ぬのは奴らだ」「サンダーボール作戦」「女王陛下の007」「黄金の銃を持つ男」が有名だが、なんとこれらのショーン・コネリー期の007作品だけでなく、ミドルエッジ世代のボンドであるロジャー・ムーア期の007作品が日本でコミカライズされていたのはご存知だろうか?

ゴールデンコミックス版007漫画全4冊

小学館漫画文庫版007漫画全4冊

最近復刻された007漫画。
さいとうたかを先生の4作品は、連載当時小学館のゴールデンコミックスとして全4巻が出版されており、後年小学館漫画文庫でも1980年に再販、現在でも復刻版が発売されていて、普通に書店で購入可能なのは、非常に幸運なことだと言える。
だが、これから紹介するロジャー・ムーア作品に関しては、全く単行本等には収録されておらず、掲載誌もマイナーだったため、その存在すら気が付かなかったというファンの方も多いはずだ。
「私を愛したスパイ」コミカライズ版紹介

「私を愛したスパイ」日本版ポスター
前作「黄金銃を持つ男」の興業的不振を受け、続いて製作された記念すべき第10作「007私を愛したスパイ」では、過去作の要素を全てぶち込んだ、よりスケールの大きい派手な内容となった。
これから紹介するコミカライズ版以外にも、公開当時は様々なキャラクター商品やメディアミックスによる宣伝展開が行われている。

当時の雑誌に掲載された広告

当時販売されていたノート。

ノートの中身。

月刊プレイコミック1978年1月号
本作のコミカライズ版が掲載されたのは、月刊プレイコミック1978年1月号。作者は、くずはら和彦先生。

巻頭カラーの特集記事
漫画以外にも巻頭で色々な記事が掲載されていた。

「私を愛したスパイ」2色カラー扉絵。
あおもりサブカル倶楽部
見開きの扉絵と巻頭が2色カラーで描かれているため、この部分の画像は「あおもりサブカル倶楽部」さんの画像をお借りさせて頂いた。日本のコミカライズについての貴重な資料と情報を、個人で研究して掲載されているので、興味を持たれた方は是非!

ボンド登場!
映画コミカライズ研究資料本「劇画ロードショーの世界」より。

ジョーズ登場!
映画コミカライズ研究資料本「劇画ロードショーの世界」より。

所々に映画のスチル写真が!
映画コミカライズ研究資料本「劇画ロードショーの世界」より。
ご覧の様に、どこかのんびりとした感じの画風と内容で、所々に映画本編のスチル写真が使用されるなど、おそらくスケジュール的にかなり厳しい中で描かれたのでは?と推測される。
残念ながら、映画程の面白さと迫力は感じられないこのコミカライズ版だが、当時の思い出が蘇る内容だけに、機会があれば是非一度読んで頂きたいものだ。
「ムーンレイカー」コミカライズ版紹介]

「ムーンレイカー」日本版ポスター
「私を愛したスパイ」に続き、1979年12月のお正月映画として公開された、この「ムーンレイカー」においても、数多くの商品展開とメディアミックスによる宣伝が行われており、本作も実は日本でコミカライズされている。

「ムーンレイカー」掲載号表紙。

え、作者が二人?
ただ、掲載誌が別冊リイドコミック「ゴリラ」という、非常にマイナーな青年劇画誌だったために、当時としても読まれた方は少ないのでは?
さて、気になるその中身を見て行くことにしよう。

「ムーンレイカー」扉絵。

とにかく展開が速い!

いきなり画風がガラリと変わる!

ジョーズ登場!

そして再び見開きに。

見よ、この迫力の構図!

いよいよクライマックス!

見よ、少年誌ではムリなこのラスト!
今、この「ゴリラ」誌に毎月掲載されていた映画コミカライズ作品のラインナップを見返すと、他のB級映画群と比べて、明らかに007のメジャーさは異質!
なぜにこの様なメジャー大作が、このマイナー雑誌に掲載されるに至ったのか?残念ながら、今となっては謎のままである。この別冊リイドコミック「ゴリラ」掲載のコミカライズ作品一覧については、また次の機会にでも紹介することにしよう。
最後に
前述した様に、さいとうたかを先生のコミカライズ版4作品は、幸いにして現在でも購入することが出来る。だが、このロジャー・ムーア期の代表作品である2本のコミカライズ版は、現在に至るまで一切単行本には収録されていないため、読むためには原本を入手するか、漫画図書館で閲覧するしかないのが現状だ。
「ムーンレイカー」に至っては僅か10ページという短さなので、もしも今後ソフト化された際には、是非とも封入特典として復刻されることを願って止まない。