今回は、ムサイのシャア専用型と、1/144各種モビルスーツに持たせられる武装類をアソートした、武器セットです!

バズーカを手にしたガンダムと、ヒートホークを手にしたシャアザクの一騎打ち!
シャア専用ムサイ 1/1200 1981年2月 300円

ルウム戦役での活躍か? 激戦の宇宙空間の中を責め行くシャア専用ムサイ
ガンプラシリーズでは三つ目にカウントされる戦艦シリーズ。
当初のバンダイの迷いを払拭するように、1/144モビルスーツの売れ行きが好調で、玩具方向へ保険をかけた1/100ガンダムや、ヤマトメカコレクションカテゴリへ保険をかけた1/1200ムサイなどの初動展開も杞憂に終わったので、本格的にガンプラが展開し始めきていた時期。

もちろん造形力はトップレベル。しかしシャアヘルメットを模した艦橋に、ワルな目がついているデザイン(笑)

商品化としては量産型より遅れたが、登場頻度は量産型をしのいでいる。

ムサイのリアビュー。この背後の六角形からシャア専用ザクは射出される。
クリスマス商戦用の1/60ガンダム、シャア専用ザク、量産型ザクが発売され、1/144でもグフ、ドム、ズゴック等のメジャーモビルスーツが出揃ったこのタイミングで、一度ラインナップを整理整頓をする意味と、コストを抑えて商品点数を揃え直す意味を兼ねて、既存の1/144シャア専用ザクを緑成型で量産型ザクに、既存の1/1200ムサイを、艦橋のパーツだけ変えてシャア専用ムサイに、それぞれこの時期転用した(タイミング的には、ガンダムにおけるシャア専用ザクのように、前年末のクリスマス商戦用でホワイトベースが1/1200で発売されたので、ライバル戦艦としてのシャア専用ムサイの登場という趣もあったのであろう)。

サイド7から木馬を追い続けるシャアのムサイ
だが、決してこの時点ではまだまだ、バンダイのガンプラビジネスに賭ける意欲は息切れはしておらず、俄然モチベーションは上向きだったことは、ここで一泊おいてなお、翌月劇場版映画『機動戦士ガンダム』(1981年)上映開始に合わせて、1/144ジオングやジム、1/100ガンキャノンやシャア専用ゲルググを送り出していたことからも分かる。
むしろ、この後怒涛で展開するだろう新商品開発プロジェクトに向けて、状況を整理しておきたいとの意志が強かったと思える(なので、ムサイやザクを、シャア専用と量産型にそれぞれ転用したこのタイミングで、ズゴックが量産型で、ゲルググがシャア専用型で新発売するのは、作品中での露出度の比率からではあるのだろうが、もちろん金型の色変えによるバリエーション展開を見越しての発売だと思われる)。

序盤のシャアと言えば、シャア専用ザクとこのシャア専用ムサイだった!
キット的には、今となってはシャアのヘルメットを模した艦橋デザインの「70年代子ども向け漫画的悪役っぽさ」が失笑を買うが、量産型の群れの中で、ライバルのメカニックだけ識別可能にしておくというのは「シャアが趣味で、自分が乗るモビルスーツを赤く塗っちゃう」以外にも、ちゃんとした映像演出上の理由があるのだよねという、メタなところで理解しておくと納得がしやすいだろう。
1/144武器セット 1/144 1981年4月 300円

まるでAFVモデルのようなパッケージとランナー状態
武器セェエエット!(水木アニキっぽく。いや、“しげる御大”じゃなく“一郎おじさん”の方の“水木”ね)
コレがあれば、威力も倍増、武器セェエエエット!
あんな名場面や、こんな名シーンも、再現可能だ武器ゼェエエット!(あ……とうとう「Z」って言っちゃった……)
今回の『ガンプラり歩き旅』は、そんな「神にも悪魔にもなれる」モビルスーツを「くろがねの城」に変えてくれた、素敵アイテムの紹介です!(だから、ちゃうってば!)
『機動戦士ガンダム』21世紀現行のガンプラは、各モビルスーツに様々な劇中の武装を追加して商品を形成しているが、まだまだ最初の劇場映画版が公開された頃の80年代前半のガンプラでは、どのモビルスーツにも、ライフルと剣を付属させることが精一杯で(そう考えると、最初の1/100ガンダムの、付属武装の豊富さは特筆すべきだろう)、主役のガンダムだけでも、ハイパーバズーカやハイパーハンマー、ガンダムハンマーやビームジャベリンなどなど、備え付けさせたい装備はやまほどあった。
当時の武器セットと、現在進行形のHGUC等に付属されている武装を、同じ1/144で比較してみた! 上が武器セット版

当時の武器セット

現在進行形のHGUC等に付属されている武装
ザクなどに至っては、劇中ではまさに「巨大人型兵器のマニュピレーター(手)を駆使した、戦況や戦場を選んだ武装チョイス」が兵器運用のポイントでもあったのだが、1/144ザクにはむしろマシンガンしか付いておらず、バズーカどころかヒートホークさえ添えられてはいなかったのが、ガンプラ当初の商品基本仕様であったのだ。

ハイパーバズーカには2種類のカラーリングがあった。このツートン版は、初期だけの登場
バンダイのこの頃の凄みは、今ではこの手の商法としては当たり前になった「付加価値パーツのみの武器セット」を単品で(スケールモデルの戦闘機のミサイル装備などでは前例があったが)アニメのロボットプラモデルシリーズでやってみせようと思い、やらねばならぬと(おそらくガンプラブームを主に支えた模型雑誌の作例等を見て)責任感を感じて、短期間でリリースまでしてみせたことである。

ガンダムがバズーカを持つなら、ザクだってバズーカを使ってみせる!
そのおかげで、この時点で出揃っていた1/144のガンダムやザク、グフ等に持たせられる、アニメ本編で登場した武装類は(第2話でオマケ程度に写り込んだだけのスーパーナパーム等を除けば)ほぼ網羅できるラインナップになっており、上で挙げただけではなく、ザクのミサイルポッドやクラッカー、グフのヒートサーベルなど、ランバ・ラル戦時期を彩るアイテムが豊富なのは嬉しいが、ミサイルとかバズーカ等の“弾頭”を別パーツで付属されても、どう使えというのかと、力に入り過ぎに苦笑することしきり。

すねに装着したミサイルランチャーだ!
オマケに、初期のガンプラは、丸い穴の空いた握りこぶし手首がついてるだけで、ライフルもサーベルもそこに武器類の棒を差し込むことで持ち換えをさせていたのだが、今回は武器セットということで一切の妥協がなく、細部まで作り込んだディティールの武器類が一通りそろって入っているだけという漢気仕様。
これがどういうことかというと、ザクにバズーカを持たせたい、グフにサーベルを握らせたいと願ったユーザーが、この商品を買うまでは結構だが、いざこの武器セットの武器類をモビルスーツの手に握らせるには、ガンダムのビームジャベリンとザクのヒートホーク以外は、全て武器のグリップ部分か、モビルスーツの側の手首を、自己責任と自己判断とそれなりの技量で改造しなければいけないという、“大人の趣味”の原点に立ち返ったプラモデル魂と改造技術を持たねばならないというハードルが待っている点。

「アコース! クラッカーだ!」
この、決して幼児対象で子ども騙しはしません的な割り切りが、ガンプラブームを押し上げた核でもあるのだろう。
逆を言えば、さすがに昨今のHGUC辺りのキットの付属武器には精度でかなわないかもしれないが、使い方次第では、まだまだ現行のキットと絡ませて使うことも不可能ではないというクオリティには仕上がっている。

ザクを一撃でひしゃげさせる、ガンダムハンマーのこの威力!
今回は、星の数ほどある現代の1/144ガンダムでもなかなか付属されないビームジャベリンや、HGUCにも最先端技術の物が同梱されているが、色違いで二丁構えを想定すると、それだけのためにHGUCを4個買うとか、部品請求を出しまくるのもコストが悪いので、ガンダムのハイパーバズーカなどをこちらから流用している。
ファンの間では有名だが、ガンダムのハイパーバズーカのカラーリング設定もブレがあり、バズーカ全体がいつもの武器グレー(ミディアムブルー)で一色で塗装されている物を使ったかと思えば、白黒のモノトーンで塗り分けられたバズーカを使っているシーンも散見される。挙句には、武器グレー版は、シリーズクライマックス、ア・バオア・クー決戦で、ガンダムが両手に二丁構えて出撃したことでも印象深いので、ビジュアル的には外せない。
メタ的には、アニメ彩色で色指定が徹底されていなかったからだろうし、現場の色指定のミスも考えられるが、好意的解釈をしてしまえば、運用武装は消耗品だし、劇中でもライフルやバズーカが戦闘中に破壊される演出は何度もあるので、シールド同様、ホワイトベース内にガンダム用バズーカのストックは常にあるのだろうし、そこで塗装違いや仕様の違いがあってもおかしくはない。
なので、無駄に経費をかけるより、ここはおとなしく300円(バンダイの再販の粋なところ、意固地なところは、36年前の商品群であっても、再販に当たって値上げを仕掛けてこないところだ。まぁ減価償却はとっくに終わっているのではあろうが)で手に入る、この1/144武器セットから様々なパーツを拝借した。

キットのカラー説明書 実は旧キットにこう上手く持たせるには、相当の技術が必要……。
完全モナカ合わせキットばかりだが、サイズやディティールなどは思ったほどに36年の格差を感じなかった辺りはさすがのガンプラだろうと思われる。
写真はそれぞれ、パッケージとランナー状態。実際のガンダムバズーカ、ザクバズーカ、ガンダムハンマー、ヒートホークは、上がこの武器セットの物で、下が現代のHGUCなどに付属されているものとの比較。どれも気持ち、現代の武器アイテムの方が大型だが、唯一ガンダムハンマーの碇(?)だけは、この武器セットの物の方が少し大きい。
武器セットに入っているのは、上で書いた4種の他、ビームジャベリン、ハイパーハンマー、ザク用のクラッカーとミサイルポッド、グフサーベル、あとはバズーカとミサイルポッドの弾といったラインナップだが、ハイパーハンマーとビームジャベリン以外は、現代の1/144キットでは標準装備になっている武器も多い。
ビームジャベリンなどは、1/144では確か、この武器セット版の他は、KADOKAWAの月刊ガンダム漫画雑誌『月刊ガンダムエース』の2015年 09月号に付録としてつけられた『TEAN'S O.D WEAPON Ver. HGUC 1/144 RX-78-2 ガンダム対応武器セットA』までガンプラでは立体化されていないはず(2011年の「HGガンダムVer.G30th セブンイレブンカラーver1.5」の“アレ”は、一応ジャベリンと呼ばれてはいるが、細すぎて短すぎて、この武器セット版とどっこいどっこいな上に、実質はセブンイレブンの看板なわけで、判断に苦しむ……)。
なんにせよ、この武器セット版のビームジャベリンでは、むしろその短さといい、ビームエフェクトのなさから、『機動警察パトレイバー』(1989年)の、イングラムの電磁警棒かという程度の迫力のなさではあるのだが……。
ちなみに、ハイパーハンマーは、「1/144」の「ガンプラ」では、後にも先にも、まだこの武器セット版しかないのではないだろうか。
ガンプラでは、HGUCで出来の良いジオンの水陸両用モビルスーツ・ゴッグが発売されているので、80年代からジオラマでの再現で人気があった、ゴッグがガンダムのハンマーを鷲掴みにしている構図を再現した図を、ネットでもあちこちで見かけるが。
ご存じだろうか? あそこでゴッグが鷲掴みにしているのは、実はガンダムハンマーではなく、およそ1/144では、この武器セットでしか、未だにハイパーハンマーはキット化されていないので、ここは実は重要ポイントである!
(ちなみに、1/100では、マスターグレードGアーマーに、ハイパーハンマーが付属している)

これがハイパーハンマーだ!

】ジェット噴射で、ガンダムハンマーよりも速く、鋭いトゲで敵を粉砕だ!

わるいもびるすーつ、ゴッグをいちげきでふんさいするぞ!

しかし、ゴッグは傷つく事さえもなかった! 白熱する戦いが続く!
今回は、ガンダムハンマーとは違う持ち手(ハイパーハンマーの持ち手は碇状ではない)を、他のHG U.C. HARD GRAPH「1/144 ザク地上戦セット」の、シュツルム・ファウストのグリップから借りてきて、チェーン部分を市販のアクセサリー用チェーンを使って、ハイパーハンマーを再現してみた。
まぁいろいろ書いたが、なんだかんだで現代でも、ちょっとした演出やプラスアルファで役立つのが、この武器セットのよいところではあるだろう。
ガンプラり歩き旅に関する記事一覧 - Middle Edge(ミドルエッジ)
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