『ガンプラり歩き旅』その003 ~1/144ザクの登場が、キャラクタービジネスを変えた!?~

『ガンプラり歩き旅』その003 ~1/144ザクの登場が、キャラクタービジネスを変えた!?~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする新企画連載の第3回! 今回は、ジオン驚異のメカニズムでお送りします!


可動はこの程度だが、当時としては画期的なプラモデルだったのだ!

後に量産型ザクにも流用される、今回のシャア専用ザクの原図の提出は、実は1/1200量産型ムサイより一日早い4月22日であり、手掛けたのは1/144ガンダムと同じ村松技師であった。

頭部の角のあるなしは、あえてユーザーが頭部の凹をナイフで削る仕様だった

ザクというキャラクターデザインと、1980年当時のこの1/144キットは、今の目で見ればシンプルという褒め言葉を通り越して、いろいろ残念な仕上がりと言えなくもないが、当時はそもそも「ロボット、ヒーロー番組で、毎回戦う敵が同じ」というフォーマット自体が前人未到であり、しかも、それを商品化するというビジネスが、ありえないレベルで考え付かなかった時代。

今思えば、『機動戦士ガンダム』の敵が、少なくとも初期はザクに統一されていたのは、ローコストでアニメを制作する日本サンライズ(現・サンライズ)の台所事情と、そこで必須のバンクフィルム対策ゆえという大人の事情を容易に察せられるのだが、逆に「よく考えれば、戦争であれば、毎回敵が違うという構図の方がおかしいのであり、戦争であれば量産された兵器の運用で、毎回戦局の方が変わるのが当たり前ではないか」というリアリズムを喚起して、ザクはその象徴とも言えた。

ガンプラネタとして有名な「このキットには〇〇(パイロット)は付属していません」は、新発売当時は書かれてなかった

グリーンのメカ=兵器らしさ、を前面に出したのも、当時のロボットアニメでは斬新だった

70年代までの子ども向けで、無理矢理ザクに匹敵する存在感を喚起するキャラを当てはめるのであれば、むしろ『仮面ライダー』(1971年)等、等身大ヒーロー物で登場する戦闘員が一番近かったのだろうし、そこで、量産型ザクを率いて登場するシャアの赤いザク(もしくは、ランバ・ラルの青いグフ)は、戦闘員を従えたショッカーの怪人的な、集団バトル構図の立ち位置であったともいえるわけだ。

そういう意味で、ザクのプラモデル化が量産型からではなく、シャア専用から始まったのは、既存のヒーロー物のソフビ人形で言えば、戦闘員ではなく怪人から、という概念が当てはめられたという見方も可能だ。

2002年発売のHGUC版ザクとの比較。肩幅の違いが目立つが、足の長さは意外とガンプラ初キットの方が長い

以上を踏まえて総括すると、片方では斬新かつ、かつてあり得なかった「ロボットヒーロー物の、敵雑魚キャラのプラモデル」という側面への可能性も持ちつつ、一方で「ミリタリースケールモデラーが手放しで買い求めた、初の“テレビ漫画の悪役ロボット”プラモデル」の先駆者でもあったザクは、ロボットアニメの商品展開の殻を、この発売の瞬間に打ち破ると同時に、ガンプラを社会現象化させる推進剤として、一気にブースター点火役を担ったのだった(そういやぁ70年代初期は、『マジンガーZ』(1972年)の敵メカ、機械獣のジャンボマシンダーなんて商品も、一時的にだけどあったなぁ)。

HGUCでも、量産型はシャア専用の後に発売という伝統行事は守る(笑)成型色の緑は、HGUC版は薄すぎると思われる

上記したが、300円規格統一のサイズとコストという制約の中で、過去に例を見ない、玩具前提ではない(むしろ、アニメーター側の手数軽減を前提にした)シンプルで曲線構成デザインのロボットを、モーター走行ギミック等ではなく、プロポーションと可動を優先して立体化したという点では、この1/144ザクの発売は、確かに偉業であった半面、見る目が既に肥えていたミリタリースケールモデラーなどからは、初期の段階からそのプロポーションや関節可動などに対しては、苦言を呈される窮屈なスタートを飾る事にはなってしまった。

しかし、スポーツ選手の成功の陰に鬼コーチの存在があるように、そこで模型雑誌やモデラーによって、徹底的にダメ出しをされ、カスタムされての作例がメジャーシーンで大きく取り扱われた結果、後のMSVやMG、HGUCなどでのリファインへと繋がっていったのも事実で、それは功罪合わせ、ザクのプラモデルという歴史自体を作り上げるに至った大きな要因であろう。

シャア「レーザー・ラインにのせて私とスレンダーのザクを第一種装備で射出しろ!」

といっても、発売当初時期の、バンダイプラモデル(しかも可動アクションロボット)技術の前例の無さや、まだガンダムブームが起きる前のタイミング(むしろ、このガンプラの存在がガンダムブーム発生の大きな原因である)などを考え合わせると、この時点での1/144ザクの仕様に関しては、この金型と製図は充分な起爆剤としての役目を果たしたと称えるだけのポテンシャルを今も有している。

シャア「勝利の栄光を君に!」

キットの解説に話を移せば。
この時期、1/144ガンダムとザクの頃から、間接可動に対するプラスチック素材の摩耗のヘタレは想定されていたようで、ガンダムとザクの肩関節は独特の、子どもが接着組み立てするにはかなり厳しいタイトな関節機構を採用している。
その後のラインナップでは肩間接は、構造が簡略されていたり、簡易クリック機構を組み込んだりした試行錯誤が改めて施されるが、やはりガンダムとザクの肩関節機構は、子どもでは上手く組み上げられないという意見がフィードバックされたのであろう。

デニム「スレンダーお前はここに残れ。俺たちに万一のことがあったら、直ちにシャア少佐のもとへ戻るんだ」

間接可動性能は、ガンダムと比べてザクでは、腕の上腕に回転ロール軸が追加されて、上半身はポージングに自由度が増した分、下半身の方では、足の靴部分が足首で脛と一体化してしまっているためガンダムより自由度が低く、双方痛しかゆしというところか。
足首の可動固定は、かなり模型雑誌やファンの間でも苦情がアナウンスされたからか、シャア専用ザクの2か月後に発売された1/144グフからは取り入れられるようになった。

さすがに旧キットのザクでは、HGUC 191 ガンダムは撃ち落とせないか?

むしろこの1/144ザク発売から一年半以上経った先での、1981年10月発売の1/144旧ザクが、設定上はザクの旧型であるにもかかわらず、肩アーマーやモノアイスリット、足首などが別パーツになっていたり、平手が最初から付属していたり、全身のプロポーションや可動性も向上しているので、腕に覚えのあるモデラーやマニアは、旧ザクを素体に用いて、改めて1/144ザクとニコイチ(二個のキットを一つにするという意味)にさせて、ブラッシュアップさせたザクをミキシングビルドで作り上げるという流れも、当時の風潮として実際に起きたのも、今思えば懐かしい。

同じように「ザクのボディの肩側を、正面から見て“ハの字型”に改修する」も、当時は定番の改造として流行ったが、筆者的には、加える手数ほどには魅力的な改修には感じられなかったので、結局旧ザクニコイチも肩のハの字も、やった経験はなかったりもする。
また、それら「ザクと旧ザクでニコイチ」が当たり前になってしまった状況を、新規商品で解消しようとバンダイが改めて発売したのが、ノーマルのザク(に、特殊バックパックを換装可能という設定にして)をMSVで完璧版として出し直した1/144 ザクマインレイヤー(1984年3月)であり、この発売でようやくガンプラファンの留飲が下がったのである。

関連する投稿


ガンダムが伝統工芸「卯三郎こけし」に変身!木の温もり溢れる3体が登場。限定セットは台座付き

ガンダムが伝統工芸「卯三郎こけし」に変身!木の温もり溢れる3体が登場。限定セットは台座付き

ガンダムの世界観を表現するアパレルショップ「STRICT-G」より、群馬県の伝統工芸「卯三郎こけし」との初コラボ商品が登場。ガンダム、シャア専用ザク、量産型ザクが、職人の手仕事による温かい木製こけしになりました。2026年1月5日から予約開始。ファン必見の「和」の逸品を詳しくご紹介します。


完璧・無量大数軍の一人「完肉」の称号を持つキン肉マン『ネメシス』が、SpiceSeedキン肉マンシリーズに登場!!

完璧・無量大数軍の一人「完肉」の称号を持つキン肉マン『ネメシス』が、SpiceSeedキン肉マンシリーズに登場!!

ハイクオリティフィギュアの製造・販売で好評を博している株式会社SpiceSeed フィギュア事業部より、キン肉マンシリーズのフィギュア『ネメシス』が発売されます。


懐かしの名作が勢揃い!特製クリアしおりが貰える書店フェア「藤子・F・不二雄 S(すこし)★F(ふしぎ)な世界」が開催!!

懐かしの名作が勢揃い!特製クリアしおりが貰える書店フェア「藤子・F・不二雄 S(すこし)★F(ふしぎ)な世界」が開催!!

藤子・F・不二雄による名作の数々を紹介する書店フェア「藤子・F・不二雄 S(すこし)★F(ふしぎ)な世界」が、8月7日(木)より全国のフェア参加書店にて順次開催されます。


南斗孤鷲拳伝承者で、南斗六聖拳において殉星の宿命を背負う「北斗の拳」のキャラ『シン』のフィギュアが登場!!

南斗孤鷲拳伝承者で、南斗六聖拳において殉星の宿命を背負う「北斗の拳」のキャラ『シン』のフィギュアが登場!!

ハイクオリティフィギュアの製造・販売で好評を博している株式会社SpiceSeed フィギュア事業部より、北斗の拳シリーズのフィギュア『シン』の発売が決定しました。


JR池袋駅で「キン肉マンSTATION」が開催中!フィギュアメーカー・CCPJAPANから多数の新作限定アイテムが登場!

JR池袋駅で「キン肉マンSTATION」が開催中!フィギュアメーカー・CCPJAPANから多数の新作限定アイテムが登場!

フィギュアメーカーのCCPJAPANが、JR池袋駅南改札前スペースで8月11日(月)まで開催中の「キン肉マンSTATION」にて、限定商品および新作商品の販売を行っています。


最新の投稿


ユニクロ「UT」×集英社100周年!歴代名作マンガ100柄がTシャツ化、第1弾は3月発売

ユニクロ「UT」×集英社100周年!歴代名作マンガ100柄がTシャツ化、第1弾は3月発売

ユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」が、集英社の創業100周年を記念したスペシャルコレクションを発表。歴代の名作マンガから厳選された100種類のデザインがTシャツとなって登場する。第1弾は2026年3月16日より発売。『こち亀』『キン肉マン』『呪術廻戦』など、新旧の傑作がラインナップされる。


槇原敬之×大貫妙子、名曲「都会」をリメイクカバー!PANAM55周年企画で豪華コラボ実現

槇原敬之×大貫妙子、名曲「都会」をリメイクカバー!PANAM55周年企画で豪華コラボ実現

日本クラウンのPANAMレーベル設立55周年企画第5弾として、槇原敬之 feat. 大貫妙子による「都会」のリメイクカバーが1月14日より配信開始された。世界的シティポップの名曲を佐橋佳幸プロデュースで再構築。両名のコメントやリリックビデオも公開され、歴史的レーベルの節目を祝う豪華な仕上がりとなっている。


アニメ『ジョジョ』フェアがアニメイトで開催!黄金の風&ストーンオーシャンが集結

アニメ『ジョジョ』フェアがアニメイトで開催!黄金の風&ストーンオーシャンが集結

株式会社アニメイトは、2026年3月13日より全国のアニメイトおよび通販にて「『ジョジョの奇妙な冒険』フェア in アニメイト」を開催する。『黄金の風』と『ストーンオーシャン』の2部構成で実施され、描き下ろしイラストを使用した新作グッズの販売や特典の配布が行われる。


『重甲ビーファイター』30周年!メタルヒーローPOP UP STOREが大阪・守口で開催決定

『重甲ビーファイター』30周年!メタルヒーローPOP UP STOREが大阪・守口で開催決定

放送開始30周年を迎えた『重甲ビーファイター』を中心に、『ビーファイターカブト』『ビーロボカブタック』が集結する「メタルヒーローPOP UP STORE in 守口」が1月29日より京阪百貨店守口店で開催される。ファン垂涎の新作グッズやアパレル、会場限定の購入特典など、熱いイベントの全貌を紹介する。


THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、紙ジャケCD BOX詳細&爆音フィルムライブ解禁

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、紙ジャケCD BOX詳細&爆音フィルムライブ解禁

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのデビュー30周年プロジェクト「THEE 30TH」より新情報が解禁。幻のベスト盤を含む完全生産限定の紙ジャケCD BOXの詳細、ベスト盤のリマスター配信、そして1999年の横浜アリーナ公演が4Kで蘇る爆音FILM LIVE全国ツアーの開催が決定した。