オリジナルメンバー全員が去ったソフトマシーン それでも英国ジャズロックの鼓動は今も息づいている

オリジナルメンバー全員が去ったソフトマシーン それでも英国ジャズロックの鼓動は今も息づいている

ソフトマシーンは、1966年に結成された、ロンドン郊外南西部:カンタベリーを起源にもつプログレッシヴ・ロックバンド。活動中はメンバーの出入りが激しく、それに伴ってバンドの音楽性も多様に変化していったが、カンタベリーミュージックとして最重要バンドと目される。しかし、実際には英国白人系のジャズ・ロックの先端を行ったバンドだった。


脱退したディーンに代わって、マーシャルと同じニュークリアスから加入したのがサックスのカール・ジェンキンスである。ディーンのフリー・ジャズ的な即興演奏とは異なり、ジェンキンスのプレイはスコアとアンサンブルを重視したものであり、その影響でバンドの音楽性はアーバンでソフィスティケイテッドな雰囲気が漂うようになる。また、ジェンキンスのペンによる曲はリズムやフレーズの反復を多用し、幻想的な音像をも提示するようになる。ことほど左様にソフト・マシーンはジェンキンスがイニシアティヴを持つようになっていく。ラトリッジはこの変化に即応するが、アヴァンギャルド志向のホッパーには物足りなかったようで、彼は1973年「6」の制作終了後に脱退する。

競合バンド「ニュークリアス」勢の台頭

後任のベーシストに、元ニュークリアスのロイ・バビントンが参加。ここに於いてオリジナルメンバーはラトリッジ一人、残りを全員元ニュークリアス組が占める事になり、この4人編成で「6」と同じく1973年に「7」を制作・発表。この時点に於いてはラトリッジの提示する従来のジャズ・ロックと、ジェンキンスの提示する予定調和的なサウンドが拮抗して、独特の質感を持った音世界が提示されていた。また、ここから従来のオルガン、電子ピアノだけでなくシンセサイザーが導入された事もバンドの音の質的変化を促した。

技巧派ギタリスト~ホールズワース加入の代償

そして、1975年に発表された「Bundles」において、バンドは大物ギタリストのアラン・ホールズワースを加える。このホールズワースのギターによってバンドはフュージョン路線へと直進する。超絶技巧派ギタリストによって、ファズ・オルガンよりも更に強力な音を持つホールズワースが入った事も加わって、今度はラトリッジの居場所がなくなっていき脱退。ここに至ってオリジナルメンバーは完全に姿を消し、バンドは元ニュークリアス人脈によって取って変わられた形となる。

そしてオリジナルメンバーは誰もいなくなった

ラトリッジ脱退を境にバンドは更にフュージョン路線を邁進。アルバム1枚で脱退したホールズワースに代わり、ジョン・エサリッジをメンバーに迎える。また、ホーン奏者としてアラン・ウェイクマンを加え、ジェンキンスはキーボード専任となる。この編成で1976年にバンドとしては実質ラストとなるスタジオ・アルバム「Softs」を発表する。ジェンキンス流ジャズ・ロックの決定版とも呼べる後期の名作アルバムである。その後今度はバビントンが脱退。その後スティーヴ・クックが正式加入。ヴァイオリニストのリック・サンダースをメンバーに加えて行われた1977年のパリ公演を収録し、これまでのジャズ・ロックやフュージョンを更に超越。
そしてさらにテクノにまで接近した感も抱かせるライヴ・アルバム「Alive & Well」をリリースした段階(1978年)で、バンドとしてのソフト・マシーンは実質的に停止する。
1981年、ジェンキンスがマーシャルを誘い、ホールズワース他豪華なゲスト陣を迎えて81年にイージー・リスニング・アルバム「ランド・オブ・コケイン」を発表。これは形式上、ソフト・マシーンのラスト・アルバムとなる。

その後のソフトマシーンは派生の一途を辿るが、脈々たるジャズロック・サウンドは輝いている

ソフト・ヒープとソフト・ヘッド、そしてソフト・ワークスへ

その後ソフト・マシーンとしての活動はなく、ソフト・ヒープ(ヒュー・ホッパー、エルトン・ディーン、アラン・ゴウエン、ピップ・パイル;頭文字を合わせて「HEAP」となる)や、ソフト・ヘッド(ピップ・パイルの代わりにデイヴ・シーンが参加、頭文字を合わせて「HEAD」となる)などのソフト・マシーン的短期間ユニットが組まれた。

ソフト・ワークス

サイケデリックやプログレッシヴ・ロックからジャズ・ロック的アプローチと、時代の変遷とともにメンバーもサウンドも変化したソフト・マシーン。2000年代に入り、超絶技巧派のギタリスト=アラン・ホールズワースと元メンバー4人により派生バンド、ソフト・ワークス(Soft Works)を結成し2003年に「Abracadabra」を発表。しかし、ホールズワースはこのアルバム・リリースの後脱退。

ソフト・マシーン・レガシー

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