1980年から活躍し続けるロック・ミュージシャン『佐野元春』
『佐野元春』
1956年3月13日に東京で誕生したロックミュージシャンでありシンガーソングライターの佐野元春。立教高校、立教大学と進学し、デビュー前には広告代理店に勤務しラジオ番組の製作に携わっていた時期もあります。
1980年3月、24歳の時にシングル「アンジェリーナ」でデビュー。 その歌唱スタイルや、海外アーティストから影響を受けた楽曲は、80年代の邦楽界に画期的な転換を促しました。
後輩ミュージシャンに影響を与えることも
1982年9月から1983年3月に渡り、ライブツアー『Rock & Roll Night Tour』を全40ヶ所で開催し、成功を収めました。ホールクラスで行われた同ツアーは軒並みソールドアウト。また、このツアーを観た『吉川晃司』や『尾崎豊』は、とても感銘を受けたと語っています。
尾崎豊
水球の選手として活躍するかたわら、バンド活動(EIGHT CITYS FISH BAND)も平行して行っていた吉川晃司。佐野元春のコンサートを見て、カルチャーショックを受けたことで、音楽一本に絞るきっかけになったそうです。
吉川晃司
逆に彼が影響を受けたであろう『ブルース・スプリングスティーン』
『ブルース・スプリングスティーン』
80年代から90年代にかけてはタイアップ曲も数多く手掛けています
「国際青年年」のテーマ曲に『Young Bloods』
1985年2月に国際青年年のテーマ曲として『Young Bloods』がリリースされ、佐野元春自身初のトップ10(最高位7位)ヒットとなりました。また、楽曲の印税をアフリカ難民救済のチャリティーとして寄付するなど、当時、話題を呼びました。
『Young Bloods』
JR東海「ファイト!エクスプレス」CMソングに『SOMEDAY』
当初は、1981年にシングルでリリースされるもヒットせず、後の1990年にJR東海「ファイト!エクスプレス」のCMソングに採用されたとこを機にジャケットを変更する形で再びシングル化されました。
フジテレビ系ドラマ「二十歳の約束」主題歌に『約束の橋』
1992年に放映された、牧瀬里穂と稲垣吾郎の初主演ドラマ「二十歳の約束」の主題歌に抜擢されました。佐野元春にとっても初のドラマ主題歌となった「約束の橋」。ドラマの人気とともに70万枚を超える大ヒットとなりました。
80年代初頭の流れ…初期三部作
『BACK TO THE STREET』
1stアルバム『BACK TO THE STREET』、続いて2ndアルバム『Heart Beat』と、2枚のアルバムをリリースしましたが、当時はなかなかセールスには結びつきませんでした。
しかし、ラジオパーソナリティや、ライブパフォーマンスが素晴らしいミュージシャンとして、元『はっぴいえんど』の大瀧詠一が絶賛。次第にファンが増えていき、これで売れなかったら最後だと、背水の陣で制作した3rdアルバム『SOMEDAY』を1982年5月にリリース。同アルバムはオリコンアルバムチャートで最高位4位を記録し、ヒットすることとなります。
BACK TO THE STREET
『Heart Beat』
Heart Beat
『SOMEDAY』
『BACK TO THE STREET』からこのアルバムまでを、佐野自身「街」をテーマにした3部作だと語っていた時期も。街の原風景などのイメージがファーストアルバムから連続性を保って成長していき、『SOMEDAY』で一度、彼の中で完結したような1982年の作品。
この作品の成功によって、ようやく佐野は、本当に好きな音楽が作れると思ったと言います。そして1983年にニューヨークへ渡りました。
SOMEDAY
80~90年代にかけてコンスタントにオリジナルアルバムを発表
『VISITORS』
1年ほど過ごしたニューヨークでの生活の中から誕生したアルバム。現地のミュージシャンやプロデューサー、エンジニアとのコラボレーションを実現し、録音されています。
当時、日本ではまだメジャーなジャンルではなかったラップやヒップ・ホップなど、ブラック・ミュージックの要素を取り込んでおり、ロック音楽に重要な”力衝動”も上手く取り込まれ、その後の邦楽シーンに与えた影響も大きな作品です。
VISITORS
『Cafe Bohemia』
彼の仲間、ザ・ハートランド(THE HEARTLAND)と一緒に制作した初めてのアルバム。ジャズ、ソウル、スカ、レゲエなどさまざまなリズムが採り入れられ、イギリス風のサウンドが特徴の一枚。
Cafe Bohemia
『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』
初めて日本語でつけられた6枚目のオリジナルアルバム。しかも、曲名もすべて日本語です。
ロンドンで、現地のミュージシャンやプロデューサーを起用し、レコーディングが行われました。当時、影響を受けていたとみられるUKロック的なサウンドのなかに、東洋的なセンスが垣間見える新しい邦楽ロックの新境地を開拓したとも言え、佐野本人も『このアルバムが好きだ』と語る一枚になります。
ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
『Time Out!』
前作、『ナポレオンフィッシュ』に続いてザ・ハートランドを伴い、バンド・サウンドを追求したアルバム。目新しい試みは見られないものの、やや抑制された演奏と内省的な曲が印象的な一枚と評されます。
Time Out!
『Sweet 16』
1992年にリリースされたアルバム。邦楽ロックにおける90年代の傑作(via ロッキング・オン・ジャパン)と評されています。
Sweet 16
『The Circle』
ザ・ハートランドとのコラボレーションによる最後のスタジオ録音アルバム。また、この時期は、バンドの解散や母との死別など、人生におけるさまざまな別れのなかで、彼の歌詞はより哲学的なものになっていきます。
The Circle
『FRUITS』
後にザ・ホーボーキング・バンドとなる数人のミュージシャンたちがセッションに参加しながら制作された、佐野自身、ソロアルバムを作る気持ちで制作したというアルバム。多様な音楽性を内包し、ポップ寄りなサウンドが特徴の一枚です。
FRUITS
『THE BARN』
1997年にリリースされた、ザ・ホーボーキング・バンドと共にアメリカに渡り、レコーディングしたアルバム。再びアメリカのアーティストの影響を受けているかのようなアメリカン・ポップ・ロック風のサウンドが特徴の一枚です。
THE BARN
『Stones and Eggs』
1999年にリリースされた、90年代最後のアルバム。収録曲のほとんどが自宅スタジオでレコーディングされ、デビュー20周年を前に、80年から走り続けてきた彼の当時の集大成的な意味もある一枚。
Stones and Eggs
まとめ
いかがでしたでしょうか。1980年のソロデビュー以来、現在もライブ活動やフェスに参加するなど積極的に音楽活動を続ける『佐野元春』。後輩のミュージシャンたちは元より、日本のロックシーンに与えた影響は計り知れません。あらためて懐かしい80~90年代の音楽に触れてみたり、2000年代以降の音楽と聴き比べたりしてみるのも楽しいかもしれませんね。