1985年10月1日リリース、安全地帯『碧い瞳のエリス』
井上陽水のバックバンドとしてツアーに同行、その後「ワインレッドの心」がヒットし全国区になった安全地帯。
大ヒット曲となった『悲しみにさよなら』に続く、10枚目のシングルとして1985年10月にリリースしたのが『碧い瞳のエリス」(あおいひとみのエリス)。
玉置浩二の歌唱力を存分に発揮できる美しい旋律のバラードでファンの心を掴み、歌番組『ザ・ベストテン』で5週連続で1位を獲得。オリコン最高位でも2位を記録した。
数多くの名曲を送り出した安全地帯だが、この曲が一番好きだというファンも多く、今でも玉置浩二のコンサートでよく歌われている。

安全地帯『碧い瞳のエリス』
実はCMソングだった安全地帯の『碧い瞳のエリス』
この曲は、大王製紙の女性向け生理用品『エリエール エリス』のCMソングであった。
当時、ユニ・チャームと花王がシェアをほぼ独占している生理用品市場に大王製紙が参入。
松本伊代をCMに起用し「シルキッシュミニ」の商品名で発売していたが、1985年に商品名を「エリス」へ変更。
認知度を一気に高めるためには、プロモーションにおける冒険が必要だった。
そこで、女性人気の高かった安全地帯のボーカル玉置浩二を出演させるCMを作成。
さらに商品名『エリス』を含めた『碧い瞳のエリス』をCMソングとしてリリースした。
生理用品のCMに男性タレントを起用すること自体が珍しい中、玉置浩二を起用。
しかも、商品名を曲名に入れサビでも『エ~リ~ス~』と歌わせてしまう。
一歩間違えれば大失敗となりかねないCMである。
だが、巨大なピンクのキングコングが玉置浩二に変化していく特撮チックな演出で、一見何のCMなのかわからない形に仕上げたことで、いやらしさを感じさせずに『エリス』という商品名をきっちりと記憶してもらうことに成功した。
具体的な商品説明はCM内に出てこないが、キャッチコピーを「エリスは安全地帯」としたのは『多い日も安心』的なイメージを持ってもらう狙いだと考えられる。
生理用品『エリエール エリス』のCM用に作られた『碧い瞳のエリス』は美しいバラードに仕上がり、CM効果もあってスマッシュヒット。
商品と歌の両方が全く別の印象として認知されていく一風変わった相乗効果を発揮した。
大きな宣伝効果を発揮したこのCMによって、玉置浩二の『エリエール エリス』CM起用は継続され、以後『プルシアンブルーの肖像』と『Friend』もCMソングに起用されることになった。
なお、安全地帯のコンサートではこの大王製紙『エリエール エリス』が試供品として配られた時があり、もらったファンはビックリしたという。
冒険的なCMから始まった大王製紙『エリエール エリス』は大きく知名度を上げて、現在も発売中。
CMにおいても、SMAP草なぎ剛や溝端淳平など男性タレントを時折起用したりしている。
『碧い瞳のエリス』の世界観は森鴎外の小説『舞姫』がモチーフ?
『エリエール エリス』のCMソングとして作られた安全地帯『碧い瞳のエリス』だが、この『エリス』にはもう一つの意味が…。
それは、森鴎外の名作小説『舞姫』。
明言されてはいないが作詞した松井五郎は、この小説に登場する踊り子エリスの切なく悲しい物語をイメージしたのではないかと言われている。
日本語の美しさを感じる詩的な歌詞は、童謡っぽい繊細なメロディーと絡み合い、玉置浩二の優しい声に乗って、切なさ・儚さ・懐かしさ、様々な感情を胸に届けてくれる。
小説『舞姫』を読んだ直後にこの歌を聴いたら、きっと涙を堪えるのが難しいのではないか。
心を優しく撫でるような美しい声とメロディー『碧い瞳のエリス』
さすがは『音楽のプロが選ぶ本当に歌が上手いランキング』1位に選ばれ、FNS歌謡祭の豪華コラボレーションでも毎回注目されてる玉置浩二。
どの動画で確認しても、CDと変わらぬクオリティ。
イントロの「なくした~」のワンフレーズで一気に聴く人のココロを掴んで、曲が終わるまで一瞬たりとも逃さない。
当時、テレビCM用の歌として制作された安全地帯『碧い瞳のエリス』だが、30年後も歌われ続ける名曲になろうとは関係者ですら予想できなかったのではないか。
また、現在ではこの曲を聴いて大王製紙『エリエール エリス』を連想する人はほぼいないだろう。
商品名を歌にしながら、独立した名曲に仕上げてしまう玉置浩二はやはり天才か。