ファミコン初期の作品

ナッツ&ミルク
ファミリーコンピュータのデビューから1年後の作品
1983年7月のファミコン発売からちょうど1年。1984年7月、のちにファミコン界きってのヒットソフトメーカーとなる「ハドソン」より発売。ハドソンは、ファミコン発売年の1983年にパソコン用ゲームソフトとして発売しているものを次の年にファミコン用にリメイクした。
知られざる、ファミコン史上初の「社外品」を生み出した「ハドソン」
発売元の「ハドソン」。ハドソンと言えば、この年代の人はわかると思うが「ロードランナー」でヒットしたイメージが強い。でもひそかにこの「ロードランナー」の3日前に発売しているのが「ナッツ&ミルク」だ。任天堂以外のメーカーから発売されたソフトはこれが初めて。ファミコン発売以来、発売されるソフトは全て「任天堂」製。いわば「純正品」だ。ファミコン史上初の「社外品」となるのがこの「ナッツ&ミルク」なのである。ファミコンがヒットする事を予見したハドソンがいち早く任天堂に接触し、初のサードパーティーとしての地位を確立した。ファミコン人気の立役者といっても過言ではない。
ハドソン - Wikipedia
まず知っておきたいのが「ナッツ」と「ミルク」の関係性

タイトル画面
ナッツとミルクは主人公?
違うんです、これが。ソフト名とソフトのパッケージ画像から、中心のピンクの塊(?)がナッツで、恋人(塊)のミルクと結ばれるための冒険ゲームだと想像すると思うんですよ、普通。もう完全に予想の斜め上を行きましたね。
中心のピンクは「ミルク♂」。左のリボンのピンクがミルクの恋人「ヨーグル♀」。ミルクはヨーグルのもとへ行きたいのだが、邪魔をしてくるのが右の水色「ナッツ♂」だ。ナッツはえげつなくミルクをつぶしに来る。ナッツと接触したらゲームオーバー。ミルクはナッツの襲撃を交わしながらステージ上に配置されたフルーツを獲得。すべてのフルーツを獲得するとヨーグルが出現するので、様々な経路でヨーグルの下へ向かう。ヨーグルトの下にたどり着くとステージクリア。

ゲーム画面
タイトルは間違っていないよね?
「ナッツ&ミルク」。登場キャラの関係性を整理すると、「敵&俺」。恋人のヨーグルはどこへ行った?ネーミングに若干の疑問を持ちつつも、プレイ。
ナッツに対しては、終始逃げの姿勢

逃げの一手。
ナッツに勝つ=ヨーグルに辿り着く
ファミコンのコントローラには十字キーとA・Bボタンしかない。そしてこのソフトではゲーム中A・Bボタンはどちらも「ジャンプ」。邪魔をしてくるナッツとは戦う事すらできない。触れた瞬間にゲームオーバー(ライフ1減)だから。ナッツからは逃げる事しかできないのだ。唯一使えるジャンプボタンも、ナッツをかわす為にしか使えない。それにナッツをジャンプで飛び越えてかわすのは、慣れないうちはタイミングがなかなか難しい。それというのもミルクのジャンプ力は、それはもうゲームとは思えないくらい貧弱だからだ。だから基本的には逃げ回りながらヨーグルを目指す形になる。ドンキーコングでも、ハンマーを取って樽を壊せる場面がある。マリオブラザーズでも階下からの攻撃で気絶させて蹴り飛ばすという攻撃がある。ポパイでもほうれん草を取ればブルータスを吹っ飛ばすことができる。ミルクにはナッツに反撃する手段は全く存在しない。ナッツに勝利するという事は、ヨーグルに辿り着くという事のみ。

ヨーグルに辿り着く
ミルクよ、もっと体を鍛えろ! なんてね。
ミルクは、様々な手でナッツの襲撃をかわす。ステージを構成するのは、地面(レンガ模様)・土管・ロープ・海だ。海に落ちればミス(1機喪失)になるし、ロープ上ではジャンプができない。土管もくぐれるわけではなく、地面と同様足場としてしか使用しない。なかなか移動に難があるのだ。
ステージによってはジャンプ台が出てくるが、これに至っては高くジャンプするにはボタンのタイミングがものすごく難しい。そして高くジャンプできたとしても、足場への乗り移りに失敗して地面に着地するとミルクは「気絶」する。ジャンプ台に限らず、少し高い所から飛び降りると、すぐに「気絶」してしまうのだ。気絶すると一定時間動けなくなる。
ミルクよ。体弱すぎないか?ナッツと争ってヨーグルを勝ち取るのなら、逃げ回るよりもっと体を鍛えろ、と思う。そういうツッコミもしながらほんわか楽しめるゲームなのだ。

割と簡単に「気絶」!
ボーナスステージで1UP!
下1桁が3か8のステージはボーナスステージ。ナッツは出てこないが、両端から火の玉(マリオのファイヤーボール)が出現する。当たるとライフは減らないがノーボーナスとなる。フルーツは取らなくてもクリア可能。ヨーグルに辿り着くと1UP。

数ステージごとにあるボーナスステージ

ボーナスステージをクリアすると・・・
「ナッツ&ミルク」でファミコン初期のゲームに思いを馳せてみるのはいかが? | クコシャカクドットコム
ファミコン初の新機能
ステージスキップという機能
このゲームでは、他のゲームと比べて「SELECTボタン」を押す回数が多かった。というのも、SELECTボタンを押すことで現在のステージをとばして次のステージに進むことができたからだ。絶体絶命の状況になった場合、ライフが1つ減るよりは…とステージを飛ばすことが多かった。全部で50ステージあったが、この機能を使ってしまうと50ステージまでクリアしてもエンディングは見られなかった。便利ではあるが、ちゃんとクリアする為には使ってはいけない機能だったのだ。
SELECTボタンとSTARTボタンを同時に押すと、ミルクが1人減るがそのステージの最初から始める事ができる。一度落ちたら戻れない場所に落ちてしまった時などに使った機能だ。

オールクリア画面
ステージエディット機能が楽しい
自分がプレイするステージを自分で作れるというエディター機能が初めて搭載された。
具体的には、レンガ・土管・ジャンプ台・ロープ・ミルク・ナッツを画面上の好きな位置に配置して自分だけのステージを作成できる。簡単にクリアできるステージを作ってみたり、難易度の高いステージを作ってみたりして大いに楽しんだ。ナッツを足場のない場所に配置(ゲーム開始後すぐにナッツは海に落ちて死亡)などという精神的逆襲のステージを作ったりもしたものだ。
ステージを作成すると、全てのゲームモードの1面に設定される。自分のステージをクリアすると通常の2面に進むようになっていた。

エディット画面
ナッツ&ミルク ~げーむのせつめいしょ(仮)~ (ファミコン編)
ナッツをかわすテクニック
まずナッツの動きを分析し、法則を見つける
ナッツは常にミルクに向かってくる習性がある。ならばその移動ルートを分析し、何かしらの法則を見出せないか?・・・法則はあったのだ。
まずナッツの動きを、「上下移動」と「左右移動」で考える。基本的には上下移動優先。つまり上下左右どこにでも移動ができる場所であれば、まずミルクと同じ高さまで上下に移動しようとし、同じ高さになるかそれ以上移動できなくなると左右移動に切り替えるのだ。この法則がわかれば、後は動きを予測するなり、おびき寄せるなり、うまく操って自爆させるなり自由自在。
画面の左右ループを利用
このゲームは左右ループ型(画面を左に突き抜けると右端から現れる)だが、ナッツはループを使わないので、左右どちらかでナッツを引き付けておいて逆から攻略するのは常套手段だった。どんなに近くまで迫っていても、ループ移動した瞬間にクルッと振り向くナッツを見てアホだなーと思ったものだ。

左から右にループ!
ナッツ&ミルク 攻略編 Stage06,07,08 | ゆりゅりとげーむで暇つぶし - 楽天ブログ
おいでおいで~、ドボーン!
ナッツはミルクの方に向かってくる習性があるのは述べたが、それを利用して海に落とすのはなかなか爽快だった。こちらを見つめたまま、悲しそうな顔で海に消えていくナッツはかわいかった。まぁ、3秒くらいで復活するんだけど。

ナッツが海へ
慣れないと難しい「ナッツ飛び越え」
ナッツをジャンプで飛び越える事も出来る。ただしジャンプ力に難のあるミルクでは、慣れないとなかなか難しいテクニックだった。ナッツを飛び越えると100点が加算される。飛び越してもナッツはすぐに方向転換して追いかけてくるので、かわした後も気が抜けない。

飛び越したる!
ナッツ&ミルク ~げーむのせつめいしょ(仮)~ (ファミコン編)
ナッツが追ってこれない、「2ブロックジャンプ」
ミルクはジャンプ力が貧弱だと書いたが、ぎりぎり縦1ブロック、横2ブロックまではジャンプできる。2マス隔てた場所なら跳べるという事。しかしそのジャンプボタンのタイミングはかなりシビア。ジャンプが早ければ向こう岸に引っかかって落下、遅ければ歩いてそのまま落下だ。ナッツのポジションによってはジャンプ失敗は痛恨だ。下が海であればなおさら。
ナッツを飛び越すより難しかった。
しかしナッツは1ブロックしかジャンプできない為、追って来れなくなるので成功させたいところだ。
この2ブロックジャンプを使わないとクリアできないステージも存在する。

タイミングが命!
「ナッツ&ミルク 攻略編 基本テクニック1」の写真
総合して・・・
プレイできるステージの数がとにかく多い!
50ステージ全てクリアすると、ステージ1へとループ。Aモードでプレイしていた場合はBモードに突入。Bモードは、Aモードに比べ難易度が少し高くなっている。触れるとボーナス加算されるヘリコプターや、触れるとミスになる気球が出現する。若干の違いを含めれば、100種類のステージが遊べるというわけだ。いや、エディット機能も含めればもっと多くのステージになるだろう。
ミスをしてもなぜか頭に来ない
普通のゲームで、なかなかクリアできない難しいステージがあったり、そんなステージで惜しい所でクリアできなかったりするとイラッとしてしまうものだ。このソフトは、キャラクターが人間離れしたシルエットだからなのか、パステルカラーの可愛い色のせいもあるのか、不思議とあまり頭に来ない。ステージスキップ可能だから何度でも同じステージに挑戦できるというのも大きいかもしれない。失敗して「あぁ~っ!!」とならないソフトもめずらしい。