ミラノの恋人

ミラノの恋人
メインキャスト

ヌッロ・ブランツィを演じるジュリアーノ・ジェンマ

カルメーラ・サントーロを演じるステファニア・サンドレッリ
あらすじ(ネタばれ)

ヌッロ(ジュリアーノ・ジェンマ)が、同じ工場に働くカルメーラ(ステファニア・サンドレッリ)と知り合ったのはふとした偶然からだった。終業後、カルメーラを見かけたヌッロは、彼女をアパートまで送っていった。

カルメーラはシチリア生まれで、父亡きあと出稼ぎにやってきたのだった。うんとお金をためて、太陽に輝く故郷シチリアに帰って土地の人と結婚しよう。それがカルメーラの夢だった。

ヌッロに送られて古びたアパートの前に立ちどまったカルメーラは、突然脅えたようにあたりを見廻した。“シチリア人の女は、よそ者の男と絶対つき合ってはならない。もしそんな男が現れたら俺が殺してやる”。常にこういっている兄パスクワーレ(ブリツィオ・モンティナーロ)の言葉を、思い出したのだ。

しかし、カルメーラは今、その言葉を忘れるかのような、胸のときめきを覚えていた。彼女は、誠実でやさしいヌッロに既に恋していたのだ。ヌッロもまた初々しいカルメーラを愛し始めていた。ヌッロは毎日、勤務が終るとオートバイでカルメーラを待った。だが人眼を気にするカルメーラは彼を避けた。カルメーラの心には、ヌッロへの愛がつのればつのるほど、兄の言葉が強迫観念となってくるのだ。

そうしたある日、カルメーラは家族の留守を見計らい、ヌッロを家に呼んだ。兄に防げられ日曜日でさえ外出できないカルメーラが恋人に逢うための、非常手段だった。二人は激しく抱き合い、唇を合わせた。その夜、ヌッロは家族にカルメーラと結婚することを告げた。

しかし翌日、カルメーラの顔面に無惨にも痛々しいアザが残っていた。ヌッロとの関係を知ったパスクワーレに殴られたのだ。

数日後、カルメーラが勤務中、突然倒れた。ヌッロは不吉な予感に襲われた。もしやこの工場のガスが……。事実工場では病人があいついだ。彼の予感は的中した。カルメーラの身を案じるヌッロを、なぜかカルメーラが避ける日が続いた。

そしてある日、一通の手紙がヌッロに届いた。「明日、故郷に帰ります カルメーラ」。驚いたヌッロは駅に走った。ホームにカルメーラが淋しげに列車を待っていた。

その夜、二人はうらぶれた安ホテルのベットで無言で向き合った。ヌッロは自分たちの愛を許そうとせぬシチリア人のあまりの無知な観念を怒り、カルメーラは彼を愛しながらも老いた父母、弟たち、そして兄さえも見棄てるわけにはいかない運命に涙した。その日以来、彼女の姿は工場から消えた。

探し求めるヌッロの前に、パスクワーレが立ちはだかった。ヌッロは彼女に会わせてくれるよう懇願したが無駄だった。

やっとのことで再会すると、カルメーラの病状は進み、立ち上ることも出来ない状態でアパートの隅に横たわっていた。ヌッロは彼女をやさしく毛布に包むと自分の家に向かった。もちろん花嫁としてだ。その夜、駆けつけた市長の前で二人は結婚式を挙げた。式が終わると、やがてカルメーラは永遠の眠りについた。

翌朝、工場の広場には労働者たちのシュプレヒコールが響いていた。「殺人者は誰だ!」。群集の中をヌッロは、会社の入口に向かった。

黒いサングラスの社長が出てくると、ヌッロはピストルの引き金を引いた。
勤務先で起きた悲劇
ヌッロは、工場で倒れたカルメーラの体を心配しながら原因が気になっていました。

ヌッロは、カルメーラと同じ部署で働くアダルジーザがマスクをしているのに気づきます。

そして工場医に話を聞くと、充満している排気ガスが原因でした。
カルメーラは、そのガスによって体がむしばまれ体を壊しました。

ヌッロは、カルメーラに医者の診断を受けさせますが、どんどん衰弱して行きました。
切ない運命を辿ったカルメーラ
カルメーラは、想像を絶する貧困とシチリアの因習に縛られていました。

貧しい環境の中、伝統的な信仰ありの厳しい家庭で育ったカルメーラ。

カルメーラの自宅は、崩れそうな壁にペンキを塗りたくったような建物で、前方にあるのがトイレで、雨の日は住居から傘を指して行き、トイレのドアに掛かっている南京錠を開けて中に入ります。
兄はすぐ手をあげ、暴力を振るう。また、工場の衛生管理の怠慢があり、カルメーラは劣悪な労働環境の中で有毒なガスを吸い続けていました。
〈第98回〉追憶 ジュリアーノ・ジェンマ 2 - ルイジ・コメンチーニ監督『ミラノの恋人』: ヴォロンテ映画館 Il Cinema Volonte'

スズメの死骸を埋めるカルメーラ

カルメーラにとってヌッロと出会い、愛し合った時が一番の幸せでした。
映画解説
'10/06/09 ゴミ箱から拾ってきた映画、ジュリアーノ・ジェンマ主演『ミラノの恋人』(伊74年)Delitto d'amore: ノートブック

イタリアの西部劇で活躍し、甘いマスクで魅了させたジェンマ。
テーマ曲
映画の音楽は、1940年代から50年間にわたって250本以上の作品を手がけてきた映画音楽作曲家のカルロ・ルスティケッリが担当しています。