プラモデル×プロレス!『プラレス3四郎』
『プラレス3四郎』は神矢みのる氏(作画)、牛次郎氏(原作)のコンビで、1982年から1985年にかけて週刊少年チャンピオン(秋田書店)にに連載された漫画である。
3年足らずの連載期間ながら、他に類を見ない先進的なアイデアと、神矢みのるによる美麗で印象的なキャラクターは多くのファンを生み、アニメ化によって漫画読者以外にも認知が広まったこともあり、30年の歳月を超えて今もなお様々なコラボがなされているほど根強い人気を誇っている。
『プラレス3四郎』
間違われがちであるがタイトルの「さんしろう」は「三四郎」ではなく「3四郎」が正しい表記である。
「3四郎」というのは牛次郎先生のネーミングで、3四郎が柔道家の家に生まれている設定なので、姿三四郎をもじって命名したという。
作画の神矢みのる先生は「そのまま『三四郎』にせず『三』を算用数字の『3』にして『3四郎』にすることで古臭いイメージを払拭しているところが、牛先生らしい…。」と語っている。
『プラレス3四郎』(漫画)のあらすじ
中堅玩具メーカー、ナカマプラモによる開発を皮切りに、一大ブームとなっていく新格闘プラモレスリング「プラレス」の世界で、主人公・素形3四郎は自分の分身といえるプラレスラー柔王丸をコンピューターで操作し、仲間たちとともに、数々の強敵と戦い抜いていく。
『プラレス3四郎』主要キャラクター
素形3四郎
吹雪今日子(ふぶき きょうこ)
成田シノグ(なりた しのぐ)
マッドハリケーンのオーナーで、プラモデルの業界では名の知れた天才モデラー。
オネエ言葉で話し成田を追い掛け回すなど、男色傾向も見られた。
第1回プラレス選手権大会決勝で3四郎の柔王丸と死闘を演じ、以後、打倒柔王丸に執念を燃やすが、途中からギャグキャラになった。
『プラレス3四郎』主要プラレスラー
柔王丸(じゅうおうまる)
桜姫(さくらひめ)
リキオー
ロボットたちが戦う!憧れた近未来的な世界観
マイコンとは元々「マイクロコンピュータ」の略称で、文字通り超小型のコンピュータを意味するのものだった。
「パソコン」の用語が広まる以前は、個人レベルで使用するコンピュータシステムを指してマイコンと呼んでおり、炊飯器に「マイコンジャー」などと名付けられていた。
その「マイコン」をプラモデルに組み込むことで人間のように動いて格闘するという世界は少年たちにとって憧れの近未来であった。
Windowsやファミコンすら発表されていない時期にこの世界観を漫画で表現していたのは驚きである。
※『プラレス3四郎』の連載開始は1982年、ファミコンの発売は1983年、Windows1.0の発売は1985年。
プラレスラーの操作方法はパソコン
「プラレス3四郎」の神矢みのる先生と対談 - ねとらぼ
プラモデルがベースなのに人間みたいなプラレスラー
原作の『プラレス3四郎』では、人型プラモデルにマイコンを組み込んだというプラレスラーは、オーナーの分身のように描かれている。
これについて、プラレスラーを生身の人間のように描くというのは、最初から意図してやってたと作画の神矢みのる先生は後に明かしている。
生身の人間みたいなプラレスラーたち
「プラレス3四郎」の神矢みのる先生と対談 - ねとらぼ
登場するプロレス技も充実していた。
柔王丸が得意なローリングソバットの他にも、延髄切り、ベアハッグ。
さらに毒霧やヌンチャクによる反則ワザなど現実のプロレスに忠実な描写も多い。
アントニオ猪木をモチーフにした『アントニー猪本』が登場して解説してくれるシーンも出てくる。
超高等プロレス技も登場
少年たちをドキドキさせた今日子ちゃんのセクシーシーン♪
豪快にパンチラ!
大胆な行動も…
作者の想像を超えて人気キャラとなった桜姫
吹雪今日子のプラレスラー桜姫。
柔術道場の師範代である今日子だがプラレスに関しては素人同然だったため、当初は弱小キャラであった。
しかし、弱くでも頑張る健気な姿やプラレスなのにお色気シーンがあることから徐々に注目を浴び、作者の想像をはるかに超える人気キャラクターとなった。
セクハラされる桜姫
お色気作戦を敢行
作者本人もビックリした桜姫の人気
作画の神矢みのる先生によると、桜姫は作り込んだキャラクターではなく、間が持たないから出したようなキャラであったという。
「初期のデザインも、来週まで出さなきゃならないどうしようかな、3四郎が柔道着だから、プロテクターっぽくしようかな?っと考えたぐらいで特に時間もかけていません。」と語っている。
連載当時はそれほど人気が無かったそうだが、今は『プラレス3四郎』の話となると桜姫の話題ばかりになり、描いた本人が「これはいったいどういうことか?」と戸惑っているとのこと。
ゲームにも登場
1983~1984年に放送された『プラレス3四郎』のアニメ版
東宝と旭通信社の共同製作により『プラレス3四郎』テレビアニメ版が、1983年6月5日から1984年2月26日まで、TBS系にて放送された。
放送枠:毎週日曜日17:00~17:30
全37話。
キャラクターデザインは、『さすがの猿飛』、『うる星やつら』、『シティーハンター』の作画監督としても有名な「いのまたむつみ」。
原作連載中のアニメ化という理由もあり、アニメオリジナル要素が多く盛り込まれている。
漫画版ではイメージ表現として主要プラレスラーを表情のある人間として、衣装も着こむ形で描いているが、アニメ版はあくまで無機的な機械としてデザインされていた。
原作は闘いの世界の雰囲気が主流だが、アニメ版ではギャグを混ぜたりして、男の闘いだけでなく、アットホームな雰囲気を織り交ぜた感じのほのぼのした内容の作品に仕上がっている。
テレビアニメ『プラレス3四郎』
アニメ版では桜姫が登場せず、吹雪今日子はラストまで3四郎のサポーター的存在として描写された。
しかし、姉的な存在としてだけではなく、きちっと3四郎との恋愛模様も描かれている。
3四郎とのラブシーン
アニメ版でもサービスする今日子
アニメ版のみに登場するキャラクターも存在
シーラ・ミスティ
シーラ・ミスティは、過激なボンテージファッションに身を包みバイクを乗り回し、さらには過激なシャワーシーンを見せて話題をさらった。
この人なしではアニメ版『プラレス3四郎』を語れない。
シーラ・ミスティのシャワーシーン
原作のストックが少ない状態でアニメ企画が立ち上がった為、中盤以降は原作漫画とは全く異なるストーリー展開になっている。
また、吹雪今日子の実家が寿司屋であることなど、アニメ版から原作に反映された設定もある。
このテレビアニメ版『プラレス3四郎』は2002年にDVD化されている。
『プラレス3四郎』(漫画)の結末
単発の決闘とトーナメント大会をストーリーの2本軸に展開していた。
タッグトーナメント編の途中から、ストーリーが迷走し連載終了時まで人気は持続しつつも、プラリンピア編の途中で打ち切りとなった。
原作コミックには「何か世界規模で起こっている闇のプロジェクト」を予感させる伏線が端々に張られており、軍事技術としてのプラレス、黒幕“御前”の出現、宇宙開発プロジェクトなどがストーリーに盛り込まれていたが、結局どれも中途半端な形となってしまった。
原作者は牛次郎であるが、多くのアイデアを当時10代だった長男が提供したといわれている。
牛次郎は長男が当時いじめに遭っていたこと、その対応に追われたことを自著「苛虐教室」にて告白している。
単行本は少年チャンピオン・コミックス版が全14巻で刊行。
その後、2001年に秋田文庫版が全7巻で刊行された。
ともに絶版となり中古本としてしか手に入らない状態が続いていたが、2015年に小学館〈My First BIG〉から発売されている。
途中で打ち切りになってしまったが、「自分のプラモを思い通りに操作できたら」という少年たちの夢を漫画上で実現させた画期的な設定と、プラモの世界ならではの自由な戦闘シーンは後の多くの漫画家にも影響を与えたと言われています。
大人になった今だからこそ、改めて読みたい。
『プラレス3四郎』の続編となる『プラレスラーVAN』
『プラレスラーVAN』は『チャンピオンRED』(秋田書店)にて2003年4月号から2005年1月号まで連載された。
全22話。単行本は全4巻。
『プラレス3四郎』の続編であり、物語後半では同作品のキャラクター達が登場している。
吹雪今日子は「素形今日子」として登場しており、3四郎と結婚していることが判明した。
現在も大人気の『プラレス3四郎』登場キャラクターのフィギュア
2010年には『プラレス3四郎』作中に登場したマッドハリケーンの実物ともいうべきホビーロボットが限定発売されていた。
実物化されたマッド・ハリケーン