「パイロットフィルム」とは?

「パイロットフィルム」とは、実際の放送前にスポンサーや広告代理店、放送局へ向けて先行制作されたフィルムのこと。
作品をセールスするための仮動画のようなもので、放送が確定次第、それを元に作りこんでいく作品の「大元」。
そのため、キャラクターデザインや声優が変更となることも多い。
私がはじめてパイロットフィルムという存在を知ったのは「ルパン展」に行った時です。
パイロットフィルムが会場で公開されており、パイロットフィルムならではの映像に感動しました。
「ルパン三世」で観るパイロットフィルム
原作者モンキー・パンチを納得させたパイロット版!
1969年に制作された「ルパン三世」のパイロットフィルム。
パイロットフィルムの中でも最も有名なもので13分弱のアニメーション。
1969年に作られたシネマスコープ版、1971年にテレビ用に作り直されたものの2種類存在するが、内容はほぼ同じで声優が一部異なる。
当時放送されていたアニメをよく思っていなかった原作者のモンキー・パンチ氏はアニメ化を反対していたが、このパイロット版を観て感動し、アニメ化を承諾したという。
その後、より原作の雰囲気に近づける為、全体的にデザインは見直され、声優陣の一部に変更もあったが映像の一部はオープニング等に流用された。
パイロット版で世界観は出来ており、やや説明っぽいのは仕方ないにしても完成度は高く十分1つの作品として楽しめるようになっていますね。
パイロット版の声優陣
ルパン三世/野沢那智(広川太一郎)
次元大介 / 小林清志
峰不二子 / 増山江威子
石川五右ヱ門 /納谷悟朗(小林修)
銭形警部/ 近石真介(大塚周夫)
明智小五郎 / 北村弘一(高木均)
ナレーション/田中信夫
※( )はテレビ版キャスト
ルパン三世第一シリーズから長くルパン三世を演じたのは「山田康雄」であるが、パイロット版では野沢那智、広川太一郎が演じた。
知的なイメージのルパンが楽しめるのはパイロット版のみ。
また、パイロット版からテレビ放送版で五エ門と銭形警部の声優が入れ替わっている。
パイロット版で不二子役を演じた増山江威子はその後、三代目から実際に不二子役を務めた。
ルパン三世【第1シリーズ】との比較

1971年にアニメ放送がはじまった「ルパン三世」。
その第一シリーズとパイロット版を比較すると、キャラクターはより人間らしく等身が伸びた印象。
顔つきもやや劇画に近づいた感じです。

また、パイロット版では赤ジャケットだったルパンが緑ジャケットとなっている。
当時のブラウン管では赤の発色がそこまで良くなかったこともあり緑となった…と聞いたことがあります。
緑に黒シャツのルパン…かっこいいですよねえ。
不二子ちゃんの変貌!


パイロット版で「峰不二子は女である」と説明されているくらい不二子はお色気ポジションとして重要なキャラクターですが、パイロット版から顔つきも髪型も色っぽく可愛らしくなりました。
華麗なるアバンチュールを彩る峰ルックのアラカルト…不二子ちゃんは今も昔もファッションリーダーであり、男女とものあこがれです。

元々作品によって大きくデザインが変わる不二子ちゃん。
個人的にはこのファーストシリーズのデザインが可愛くて好きですね…!
くりんくりんした髪型がレトロっぽくてキュート!
「どろろ」ではカラー版からモノクロ版に
アニメ「どろろ」のパイロット版はカラーだった!
1968年に制作された手塚治虫の「どろろ」のパイロット版。
実際放映されたアニメはモノクロアニメだったが、パイロット版はカラーで制作されていた。
これは内容がおどろおどろしく「血が生々しすぎる」とスポンサーからクレームが入ったため。
確かに…生々しくて子供にはキツいかな…という印象。
【パイロット版キャスト】
どろろ/鈴木弘子
百鬼丸/野沢那智
醍醐景光・ナレーター/納谷悟朗
こちらは実際に放映されたアニメ「どろろ」のオープニング。
モノクロならではの味がありますし、確かにこれをカラーでやられたら怖いかな(笑)


パイロット版の百鬼丸とテレビアニメ版の百鬼丸。
原作に近いパイロット版に比べ、テレビアニメ版の百鬼丸はキリリと大人びた劇画タッチ。
かなり印象が変わっていますね!
たまたまですが、ルパンのパイロットフィルムと同じで野沢那智さんと納谷悟朗さんが出演されていました。
作品によって結末が違う…!手塚治虫「どろろ」漫画・映画・アニメにゲーム…未完の名作! - Middle Edge(ミドルエッジ)
貴重なパイロットフィルムの数々!
「アルプスの少女ハイジ」パイロット版はなんと芦田豊雄が…?!
エイケン制作の「アルプスの少女ハイジ」パイロット版。
全体的に全然違う!
わかりにくですが、新人の頃の芦田豊雄さん(魔神英雄伝ワタルやグランゾードで有名)が作画を担当。


ここまで変更があるのも珍しいですね…!
ハイジもおじいさんも別物になりました!
国民的アニメ「ちびまるこちゃん」のパイロット版

国民的アニメ「ちびまるこちゃん」のパイロット版画像。
このパイロット版は音声なしで字幕のもの。
お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんが特に違いますね〜。
まるちゃんもリボンつけてちょっといいとこの子みたいな印象です。
DVD【ちびまる子ちゃん全集1992年「花輪クンに恋人が!」の巻】に収録されており、アニマックスでも紹介されたようです。
「タイガーマスク」ちょっと可愛いパイロット版!

なんかちょっと絵が可愛い…?丸め?
ファンによると原作の絵に近いようですね。
実際のレスラーを登場させながら(ジャイアント馬場、アントニオ猪木等)短い映像に凝縮したパイロットフィルムらしい作品ですね。
実際放映されたアニメのオープニング。
「虎だ!虎だ!お前は虎になるのだ…!」素敵なオープニングですね。
パイロット版と比べるとやっぱり絵柄が変わってますね。
日本テレビ版「ドラえもん」パイロット版
今は暗黙の了解で闇に葬られつつある日本テレビ版の「ドラえもん」の1話の元となったパイロットフィルム。
う〜ん貴重!原作に近い絵柄ですね。
実際放送された日本テレビ版「ドラえもん」のオープニング。
ハア〜ドラドラ♪ハア〜ドラドラ♪
映像はほとんど残されていないそうですね。
同じ作品でも解釈や作り方で印象って変わるものですねえ。
「マグマ大使」のパイロット版は色々凄い!
1966年に制作された「マグマ大使」のパイロット版。
ヤバイ…予想外の内容に食べてたせんべい吹いた(笑)
これは…面白い!


演者の顔に金箔塗ったバージョンのパイロット版「マグマ大使」。
まさかの素顔…!
50年前ですから…色々仕方がありません…!

本放送版では仮面に切り替わったようです。
当時とはいえさすがにNG入ったんでしょうか…。
マグマ大使の奥さん「モル」が顔出しちゃってるんである意味パイロット版のままの方が違和感なかったのかもしれません…。

「王立宇宙軍 オネアミスの翼」パイロット版
1985年に制作された「王立宇宙軍 オネアミスの翼」のパイロット版。
「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の劇場アニメは1987年に公開された。
まさにガイナックス!という感じの予告編とも言えるパイロットフィルム。
貞本義行、庵野秀明も参加した映画で音楽は坂本龍一。
リイクニがかなりデザインチェンジですね。
主人公、その他キャラも微妙な違いを感じます。
隠された魅力満載の「パイロットフィルム」
放送されないものとは言え、企画され構成されアニメーターが絵を描き声優が演じる「パイロットフィルム」。
短い映像に情熱を感じずにはいられません。
よくDVDBOXの特典映像なんかで収録されています。
また、アニメだけではなく映画やドラマにもパイロットフィルムは存在します。
本編と比べながら色々と楽しんでみたいものですね。