【天使なんかじゃない】とは

りぼんの伝説タイトル
【天使なんかじゃない】は矢沢あいさんが1991年9月号から1994年11月号までりぼんで掲載されていた漫画です。伝説とも呼べる大ヒットで、矢沢あいさんの出世作とも呼ばれています。単行本は全8巻ですが
、完全版コミックスは全4巻です。文庫本も出版されており全6巻です。
大ヒット作ですが、巻数が少ないので気軽に読める長さと言えます。

巻頭カラー、表紙の常連

運動会はやんちゃスタイルで♡
その人気ぶりから、連載期間はほとんど巻頭カラーまたは表紙を飾りました。
誰もが『天ない』に憧れ、りぼんを手にしていた事が想像できます。
作者は少女マンガの神様【矢沢あい】

おしゃれでかわいい、そして美人と揃った少女漫画家の先駆けでした
矢沢あい - Wikipedia
矢沢あいの魅力その1 男性心理、脇役も丁寧に描く
矢沢あいさんは少女マンガながら男性の心理描写に長けている為、読者をときめかせつつも、きちんと『どうして男性がそう思ったのか』を描く漫画家さんです。つい少女マンガでは主人公の都合のいい様に男性キャラが動く傾向がありますが、矢沢漫画は違います。
矢沢あいの魅力2 ファッションがお洒落

90年代当時、少女マンガのファッションといえば『制服』か『ファンタジー』または『現実離れした女性らしい服装』がトレンドでした。しかしデザイナーを目指していた矢沢あいさんによって少女マンガ界に革命が起こります。それは、読者が『少女マンガなのに服がお洒落で実際に着てみたいと思った』ことです。天使なんかじゃないでも制服の着こなしからワンレン、パッチワークのスカートなど当時のトレンドをふんだんに盛り込んでいます。
『天使なんかじゃない』あらすじ
創立されたばかりの私立聖学園。第一期生の冴島翠は人気者の為生徒会役員候補に推薦される。
生徒会立候補者の中に、以前捨て猫を拾っている所を見かけたリーゼント頭の男子生徒、須藤晃を見つける。
くじ引きで演説トップバターになった翠だったがマイクコードに足を引っ掛けて赤チェックのパンツが全校生徒に見られてしまう。
混乱する会場を『あんな奴の下着がなんだ』と大声で叫び助けてくれたのは須藤晃だった。
投票の結果、翠と晃、麻宮裕子、瀧川秀一、河野文太の5人が第一期生徒会役員に就任。翠は晃たちと生徒会活動を行いながら、3年間の高校生活を送ることになる。

生徒会副会長になった翠ちゃん
『天使なんかじゃない』登場人物
冴島 翠(さえじまみどり)

選挙の結果、第一期生徒会副会長になった翠ちゃんです。
まさに『人気者』と呼ぶにふさわしいキャラクターで、明るく友達思いで、恋にも真っ直ぐ。
誰かが傷ついたり、悲しんだりするのをほおっておけない性格。周りの皆が翠ちゃんを通して幸せを見つけていきます。
クチの大きさを晃を始め皆に指摘されますが、本人は気に入ってる様子。当時ドリカムが流行っていて作者の矢沢あいさんも吉田美和さんのファンだったせいか翠ちゃんには吉田美和の物まねをしているシーンがあったりとイメージがかぶります。モデルは吉田美和さんではないでしょうか。
須藤 晃(すどうあきら)

晃は第一期生徒会長です。リーゼント頭でコワモテな容姿から皆に恐れられていますが、雨の中捨て猫を拾う優しい一面も。
腹違いの兄に将志がおり、マキちゃんと将志が付き合う前はマキちゃんが好きでした。クールな面と甘える面が共存している男性像は、全国のりぼんっ子のハートを鷲掴みにした張本人でもあります。
家庭環境からか、明るい翠に惹かれており、ピンチになったとき翠を思い出した事も。
また、父と離婚した母親に手を振り払われた事がトラウマになっている様子。
麻宮裕子

男女問わず一番人気のマミリンこと麻宮裕子。第一期生徒会では書記になります。
当初かなりクールな女の子でしたが、ずっと滝川マンに恋焦がれていた事がわかります。
滝川マンに志乃ちゃんという彼女がいると判明しトイレにこもってしまったマミリンを翠が強引に説得した事から親友となり、のちの名言でも出ますが『私は冴島翠になりたい』の言葉が出るほど親友として絆を深めていきます。
瀧川秀一

第一期生徒会会計に当選した滝川君。通称タキガワマンは長髪で優しくイケメンなので女子から絶大な人気を誇るアイドルです。中学の時から志乃ちゃんと付き合っていましたが、志乃ちゃんとの関係に悩みます。
本当はちょっと優柔不断で、男性的。
河野文太

第一期生徒会書記で通称・文ちゃんと呼ばれています。生徒会におけるムードメーカーで翠とは中学時代の同級生で友人。重たい問題が多々発生する生徒会で、いつも明るく問題を解決するめちゃめちゃいいやつです。がっちりした体格でラグビー部にも所属しています。
原田志乃

第二期生徒会長を務める志乃ちゃんはタキガワマンの彼女です。
誰もが振り返るほどの美少女ですが、中学時代ぶりっ子な性格が災いしていじめにあっていました。(実はマミリンが助けています)
女性から最も嫌われるタイプの女子ですが、さすが矢沢あいさん。志乃ちゃんの心情をしっかり描いたことで人気のキャラクターになりました。
谷口マコ

第二期生徒会書記のマコちゃんは、文ちゃんの事が好きな女の子です。志乃ちゃんの従妹でとてもよき理解者。明るい性格で文ちゃんと共に生徒会室のムードメーカーです。
江ノ本真一郎

通称セブンは第二期生徒副会長です。美男子なのですが、ちょっと口が悪いのが玉にきず。志乃ちゃんにだんだん惹かれていきます。
陣内稔

第二期生徒会初期の陣内くん。通称ジミー。カラオケ店でバイトしていて、かわいい他校の彼女がいます。
金髪リーゼントで晃を慕っています。物語後半でジミーが歌ったスタンドバイミーが涙を誘う展開に。
鈴木正夫

第二期生徒会会計の鈴木くん。小柄で七三分けでメガネできっちりとしているので生徒会にはないキャラなのですが、真面目の中にもお茶目が見え隠れしとってもいいキャラです。
牧博子

通称マキちゃん。翠の通う高校の美術部顧問をしていることから、翠とはとても仲良しです。
晃の兄、将志とは高校時代から恋人同士。母親に捨てられた晃の母親的存在、かつ恋の相手でした。
とても美人で優しく生徒からの人気も高いマキちゃんですが、自由人の政志に振り回され涙を流すことも多いです。
最後は将志と結婚。生まれる子供に翠と書いてアキラと読む名前をつけます。
柴田広子

晃より7歳下の妹ですが、両親が離婚して母親に引き取られているので晃と名字が違います。
翠や政志とは仲良しですが、晃がマキちゃんを好きだったせいもありマキちゃんには長い間心を開きませんでした。ヒロコという名前がマキちゃんと同じため、翠が混乱した事も。
坂本将志

晃より7歳上の兄ですが、晃の父親が愛人に産ませた子供の為晃と政志は異母兄弟にあたります。グレていた晃の父親的存在。料理上手。
画家を目指しておりマキちゃんと付き合ったままパリに飛んでマキちゃんを不安にさせます。本人はいつも明るくライトな性格をしていますが長い間父親と確執がありました。
中川ケン

通称ケンちゃん。翠と文太とは中学時代の同級生で親友ですが、実は中学時代から翠に片想いしていました。晃と別れた翠と一時付き合いましたがうまくいかず別れてしまいます。
バンドのボーカルをしていて、矢沢あいの別作品『ご近所物語』ではマンボ―のボーカルとしてブレイクしている様が描かれています。
彼の作った『おいらのあの子天使のほほえみ』は翠の事を歌った歌詞。
号泣必須の名場面を振り返りましょう
『踊ろーぜ』

生徒会初のイベント『第1回聖祭』が終わり、生徒会室で二人きりになった翠と晃。校庭ではラストを飾るダンスパーティーが始まっていました。翠が冗談半分で相手がいなくて寂しいと言ってもあくびをする晃。
しかし校内放送で流れたスタンド・バイ・ミーの曲に晃が『俺、この曲好き』といい、『踊ろーぜ』と翠に手を差し伸べます。
生徒会室でダンスをし、見つめ合うことでふたりの距離がぐっと縮まる名場面。
『会いたかったの』

終業式を迎え冬休みに入りますが、クリスマスもお正月の約束もしないままだったので思い切って晃の家まで突撃する翠。
雪が降る中、じっと晃を待ち続けます。晃はケーキを売るサンタのバイトをしていたため、遅くなり翠にプレゼントを渡そうと家に電話を架けますがまだ帰っていないと聞かされます。
アパートに帰った晃の目に映ったのは、ずっと待っていた翠の姿でした。
『会いたかったの ただそれだけなの 何回も帰ろうとしたんだけど どうしても会える気がして 帰れなくて よかった…待ってて…』と泣き出す翠。はっきりと告白をした瞬間でした。
晃はプレゼントを落としながら翠を抱きしめてキスをします。
『あんたがあたしを嫌いでも あたしは好きよマミリン!』

翠とマミリンが親友になるきっかけとなった名場面。
マミリンがタキガワマンの事を中学時代から好きだったと知った翠は、新入生歓迎会生徒会初の出し物として『しらけた姫と7人分の大男』を提案します。物語のラストは白雪姫役のマミリンと王子役のタキガワマンがキスをして終わるという二人をくっつけるためのシナリオでした。
しかし芝居の直前、タキガワマンの恋人、志乃ちゃんが観覧に来ている事を知ったマミリンは『彼女の前でキスシーンなんてみじめだ』と女子トイレにこもり泣いてしまいます。
マミリンを励ますつもりの翠はドア越しに呼びかけますが、マミリンには届きません。
そしてマミリンはつい『そういうとこ大っきらい!』と叫んでしまいます。
ひどいことを言ってしまったとハッとするマミリン。翠が行ってしまう…と思ったことでしょう。
しかし、翠はトイレの壁をよじ登り、この名言を吐きます。
マミリンはトイレを出て、お芝居をきちんとやりとげました。
『マーブルチョコの味』

ここがファーストキスと勘違いするほどの名場面です。
翠は晃の用意していたヒロコと言う相手への誕生日カードが気になっていました。最初は妹の広子ちゃんだと安心していたのですが、実は美術部の顧問であるマキちゃんの事だと気づいてしまいます。
気まずい雰囲気の中遊園地デートをする二人。晃は様子のおかしい翠を観覧車に呼び出し、マキちゃんが原因だとわかるとマキちゃんの事を説明します。
ほっとした翠は思わず食べていた蓋の空いたマーブルチョコをこぼしてしまいます。拾い終わった二人はふっと笑いキスをするのですが、晃がひとこと『マーブルチョコの味』と笑います。
こんなふうにずっと一緒にいようと翠が幸せを噛み締める素敵なシーンです。
『あたしは 冴島翠みたいになりたい』

翠と図書館に行ったマミリン。緑が絵本を読みながら笑ったり涙ぐんだりする顔をみてくすくすと笑ってしまいます。帰り道、絵本作家やイラストレーター、漫画家になりたいと語る翠に『あんただったら何にだってなれるわよ』とマミリン。翠が『マミリンは?なりたいもの ある?』と聞くと、この名言が飛び出します。
『うれしい時はちゃんと喜んで悲しいときはちゃんと泣けるような そんな当たり前のことがみんな意外と出来なかったりするのよ』『あんたが みんなに好かれる理由がわかるわ 須藤君があんたを選んだ気持ちがわかるわ』と友人としてこれ以上ない賛辞をもらった翠は、この言葉を額に入れて胸の真ん中に一生置いておきたいと感動します。
素直になれず苦しんでいたマミリンだからこそ、翠が眩しく、そして憧れたのでしょう。
待たないって 言ってるのに

やっぱり晃はマキちゃんのことを今でも好きなのではないか、自分よりマキちゃんの方に行きたいのではないかと悩む翠。
悩みに気づいた晃は二人で北海道に旅行することを提案します。
しかし、その日はマキちゃんがお見合いをする日でした。お見合いのことを晃に伝えられないまま旅行当日を迎えた翠。晃は翠に愛想をつかされたと思い、不安な気持ちを告げます。思わず翠はマキちゃんのお見合い話を話しました。
晃は一緒にマキちゃんの所に行こうと走り出しますが、翠は限界でした。
『もうマキちゃんでムキになるところを見たくない』と言ってしまった翠。『そこで待ってろ』と言われ『待たない』といいます。行かないでという気持ちと裏腹に行ってしまった晃。
翠はケンちゃんに助けを求め、晃と別れて友達になります。

『翠…今度こそ幸せになれるよね?』
マミリンとタキガワマンが結ばれる名シーン。体育祭、晃の手を振りほどいてしまった翠。それが原因か学校も休学し、行方不明になってしまった晃に傷心してしまう翠を見かねて、マミリンが思いついたのが『翠が失くした天使の羽のネックレス』でした。晃にプレゼントされたネックレスを体育祭の後から失くした翠。マミリンは障害物競走のネットを思いつき、タキガワマンと体育倉庫へ行くとネットに引っかかったネックレスが見つかります。
涙を流すひたむきなマミリンに思わずキスするタキガワマン。
『死ぬかと思った瞬間 あいつの顔だけが見えたんだ』

将志を追ってインドに来ていた晃。車にひかれそうになった時、翠の顔が思い浮かびます。
『死ぬのがいっぺんも怖いと思ったことがない』と言っていた晃が死んで悔いが残る相手として翠のことを話します。
インドから翠に電話し、お前じゃないとダメだという晃。翠は号泣し、私も晃じゃないとダメだといいます。
二人の絆が何者にも代え難いことを示す重要なシーンです。
『俺が俺の手で幸せにしてやりたいと思うのは お前だけだ』

2人のわだかまりが消えるシーン。晃がWヒロコ(マキちゃんと妹の広子)の事は大事だし、絶対幸せになって欲しいと思ってると言った後の名台詞。晃自身が幸せにしてやりたいのは翠だけと告白する事で、翠はマキちゃんのことが気にならなくなり、応援できるようになりました。
なつかしの付録、全プレ
看板作品だけあって、付録も多数制作されました。懐かしいですね!

レターセットもかわいいです

全員プレゼントのトートバック

すくーるのーと
りぼんの付録さんのツイート: "矢沢あい 天使なんかじゃない 翠ちゃんすく~るのーと #りぼんの付録 #矢沢あい付録 http://t.co/Q8WQ6Zdj4T"
ひっそりOVAでアニメ化も…
OVAでアニメ化されていますが、正直あまりクオリティは高くありません。原作ファンに不評だったせいか、あまり知名度もありません…。
このことが教訓となって、自作ご近所物語ではキャラ設定や声優などを矢沢あい自身がチェックしたという逸話もあります。
天ないはずっと名作である
いかがでしたか?天使なんかじゃないは、青春だけでなく不遇の家庭に生まれ育った葛藤や一見天使と呼ばれるほど明るく周りを魅了する女の子にも隠して笑っている悩みがあるのだ、ということ。
色々なバックグラウンドがきちんとひとりひとりに用意された丁寧なラブストーリーだと思います。
懐かしい、と思ったら再読してみてくださいね。