
生まれるべくして生まれた秀作
さて、NHKアニメ枠3作目は、、
未来少年コナンで始まった夜のNHKアニメ枠。キャプテン・フューチャーが継ぎ、続く3作目が今回ご紹介する「ニルスのふしぎな旅」です。
原作付きとはいえ大幅に改変を行いほぼオリジナルの1作目、誰もが知る古典SFの2作目のあとにきたのは、本国スウェーデンでは有名ですが日本ではあまり知られていないと思われる(もしかしたら本よりアニメが先で、全編日本語訳の書籍は82年出版のものが最初かも知れません。もちろん当時の筆者もニルスは知らなかったと思います)児童文学でした。
「子どもが冒険の旅に出て成長して還ってくる」というかたちのアニメは既に、フジテレビの世界名作劇場2作目「母をたずねて三千里」が、当時子どもだった筆者のような視聴者の脳裏に名作として刻まれておりましたが、「ああまたあのパターンね」などと掏れた子どもではまだありませんでした。
それどころか、先行する児童文学の名作ものに比べても、決して引けを取らない秀作ではないですか!
あのスタジオ、あの名匠たちの!
ごく子どもの頃に観たアニメなので忘れていましたが、そうです、その後「うる星やつら」など数多くの秀作を送り出したスタジオぴえろの、これがデビュー作だったのでした!(というか、この「ニルスのふしぎな旅」をつくるためにぴえろが立ち上げられたのですね^^)
ぴえろ - Wikipedia
そこには押井守氏の「師匠」鳥海永行氏らとともに、彼を慕って押井氏も参加しているのでした。
「演出家が集まって作られたため、演出家の力が強い」。ふむふむ、子どもの筆者には知る由もなかったのですが、ニルスのしっかりした物語と演出にはこういった流れがあったのですね。
ニルスの旅のはじまり
さて知らない方、忘れてしまった方のために。どういったおハナシかと言いますと、、
ええもうそりゃそのクソ悪ガキぶりったら、、
旅に出て内面が成長した、優しく頼もしいニルスしか覚えていないオッサンの筆者が、第一話を今回何十年ぶりに観直してみたら、おどろきましたよその悪たれぶりに。いたずらの銃が暴発してこんな子死んでしまえばいいのにっf^^;

小さくされたニルスは動物たちの言葉がわかるようになります。とうぜん、いままでいじめていた家の動物たちから仕返しをされます。巻き添えで一緒に小さくされてしまったハムスターのキャロットと逃げ回るニルス。
一方、飛来してきた雁の群れに、自分も飛びたいと焦がれる、鵞鳥のモルテン。必死の思いで雁の群れについで空へと舞い上がるモルテンに、逃げ惑うニルスとキャロットがつかまります。
こうして、ニルスとキャロットとモルテンは、雁の群れとラプランドへ向けての旅に出ます。

ニルスと旅の仲間たち

ハムスターのキャロットは、アニメオリジナルで付け足されたキャラクターです。
母をたずねて三千里のアメデオの好評を見てだと思うんですけれども、
少年少女のときに孤独になりがちな成長の旅には、マスコット的というか相棒的な小動物が居てくれるとよいですよねえ、、ニルスのふしぎな冒険ではニルスとキャロットは喋れますから、相棒度はさらに増します。

今回の記事を書くにあたって、同じくニルスを賞賛されている方の一文にあたるまで、自然なんで当時気にもしていなかったことなのですが、
アッカ隊長は雌雁、グンナーは雄雁なんですね。
リーダーにふさわしいアッカ隊長の指導力と包容力、その下で忠実にサポートして群れの安全を保つグンナー副隊長、適材適所です。
さすがスウェーデン(?)、野蛮国の悲惨な社会現状とは雲泥です、、T^T

成長の旅と旅のおわり
長旅に備えての体力テストの結果は散々なモルテンも、身を挺して雁たちを救おうとする姿に、雁たちに仲間として迎え入れられます。
最初はとうぜんニルスを嫌っていたモルテンですが、母リスが人間につかまった子どもリスを励ます優しさをみせたり、動物たちを助けるために知恵を発揮したりと、ニルスの行動に彼を見直してきます。
ニルスの旅は自然の厳しさを知るだけではありません。
踏み入ってくる人間たちに困った動物たちをその知恵で助けたり、土地々々の不思議な話を聞いたり、ときには実際に魔女に遭ったり、レックスの奸計を撃退したり、、
漁師に狙われモルテンの背から落ちてしまい、一時はニルスとキャロットの二人だけでアッカ隊との合流を目指したりもします。
渡り鳥の雁たちにも、ラプランドでは恋の物語があったり、雁の奥さんをもらったモルテンが父親になったり。

目的地ラプランドの短い夏も終わると、帰路は早いのが常。我が家へ帰るのはいいが、元の姿に戻してもらえるのか、ニルスは心配になってきます。
妖精の使いで来た鴉の話を、ニルスは立ち聞きしてしまいます。ニルスが元の大きさに戻るためには、仲良くしている鵞鳥の命が必要だというのです。
ニルスは、モルテンを犠牲にするくらいならば元に戻れずいまの姿のまま、アッカたちと旅を続けるという決心をし、ひそかに我が家に別れを告げに行きます。
すると、家族を連れニルスの家に戻ることにしたモルテン一家が来てしまいます。
ニルスが居なくなって不幸続きで、家の動物たちもお金も乏しくなってしまったニルスの家、父はわずかでも現金を得ようと、明日の聖マルタン祭に売るためにモルテンを料理してしまおうとします。
小さな身体を両親に晒すことも厭わず、夢中で止めさせようとするニルス。
すると妖精も予期しなかったことに、魔法は解けてニルスとキャロットは元の姿に戻ったのでした。
ニルスの帰りを喜び、もちろんモルテンを殺してしまうことは止めて、一家の立て直しを胸に決める両親。
ニルスは翌日、アッカ隊長たちとの別れに。大地を慈しみ、緑でいっぱいにすることを誓います。

こうして書いてるだけで泣きそうですT^T また観たら、きっとまた泣きますねT_T
押井守氏も、衒学的な冗長さやアクの強い作品世界だけではないのです。その若かりし日の仕事と、
その師匠たちの的確な演出で、しっかりつくられたアニメ。
懐かしさだけでなく、新しい観客にも観てほしい作品です。
、、で。伝説は続きもあった^^
で、今回調べていて、こんなニュースに気が付きました.
こんなんありましたか、、! これは(も)ぜひ観なければですね!^^ DVDにもなっているようですし。
劇場版は押井氏がチーフ演出であるかのような勢いの見出しの引用記事ですが、
もちろん鳥海永行作品です^^ もちろん、押井氏も参加しておりますが。
いやあ、おかげさまで、望外に筆者にも愉しみが増えました^^
