多重未来のカルテット
2009年、セガグループがボーカロイド「初音ミク」とのコラボによって発表した音楽ゲーム「初音ミク-Project DIVA-」。
当初はPSP用のゲームとして発売されましたが、プレイ画面がニコニコ動画などで発表されたことにより、ネットを中心に人気に火がつきました。
好評につき、その後も続編がアーケード、プレイステーションVita、プレイステーション3でも発売されています。
そんな「初音ミク-Project DIVA-」に、セガのレトロゲームから抜擢された一曲が収録されていました。
「多重未来のカルテット」は人気曲のようで、多くの派生動画がアップされています。
さらに、こんな動画も。
実は、レトロゲームのBGMが元ネタなんです!
【カルテット】は、1986年にセガが発表したアーケード用のアクションゲームです。
4人同時プレイが可能、選べるキャラクターの性能にそれぞれ個性がある、女の子キャラが存在する、グラフィックの綺麗さ、林克洋(ファンキーK.H)氏の手がけたBGMの素晴らしさなどで、ファンの間では話題となりました。

発売当時のチラシ
【多重未来のカルテット】は、このゲーム【カルテット】のBGMの一曲を編曲したものでした。
とはいえ、初音ミクを今プレイしている若い人にとっては、【カルテット】が稼働していたのは生まれる前の話。
しかもファンには愛されながら、当時はマイナーだったセガのゲームということもあり、時代に埋もれてしまった「隠れた名作」とも言えます。
そこで今回、ゲームとしての【カルテット】の触りについて解説していきます。
【カルテット】を見て、触れたことのある世代の責務として…
ゲームの概要
■ ゲーム内容

全32ステージ。各ステージのボスを倒してステージの出口の鍵を奪い返し、出口にたどり着くとステージクリアとなります。
ただしエンディングはなく、32面をクリアすると1面に再度ループします。
タイマーとHPを兼ねたエネルギー値が設定されており、0になるとゲームオーバー。
同時プレイの場合、ボスを倒す、扉を開ける、一番最初に脱出する等で、クリア後にもらえるエネルギー値が大きく異なるため、味方の間での駆け引きやアイテム争奪戦が必須となります。

4人の特徴について
当時は、国道沿いなどの面積の広いゲームセンターにはアメリカ・アタリ社製の4人同時プレイアクションゲーム「ガントレット」が導入されていることが多く、「カルテット」もたいていガントレットの筐体に入っていました。
(ゲーム内容も、俯瞰型視点でファンタジー風の「ガントレット」を、横スクロールでSF風に置き換えたともいえ、共通点が多かったです)
ただ、小学生には「ガントレット」の筐体は背が高すぎ、かといって大人4人がプレイするには窮屈すぎ、といった感じだったのを覚えています。
■ 家庭用移植版「ダブルターゲット シンシアの眠り」(1987)

セガ・マークⅢ版「ダブルターゲット」パッケージ
翌1987年には、家庭用ゲーム機「セガ・マークⅢ」に移植されました。
ただし、ハード上の制限から4人プレイが不可能なこともあってか、タイトルは「ダブルターゲット」に変更されています。(ただし海外版は『QUARTET』のタイトルで販売)
ゲーム内容も、全6ステージでエンディングがある、残機制の導入、スコアによるパワーアップ制など、かなり変更されています。
実は筆者自身は、友人宅で遊んだ「ダブルターゲット」から入ったクチです。
説明書か何かに、「『カルテット』の興奮をご家庭でも!」といった煽り文句があり、それで『カルテット』というゲームを意識していました。
ショッピングセンター内のゲームセンターで『カルテット』を発見したときは興奮したものです。
そして、オリジナルのBGM「カルテットのテーマ」を初めて聴いた瞬間は、今でも忘れられないです…
BGMの評価
『カルテット』のBGMは、この時代まだ知られていなかったラップを導入するなど、当時としては斬新で人気が高かったようです。
作曲者は「ファンキーK.H.」こと、林克洋氏。
「カルテット」の他、「スーパーハングオン」「ギャラクシーフォース」「SDI」「サンダー
ブレード」などを手がけています。
(余談ですが、「ファンタジーゾーン」「スペースハリアー」「アウトラン」「アフターバーナー」等のBGMは、Hiro師匠こと川口博史氏が担当しています。)
明日への風|カルテット編 ギタースコア/TAB譜(タブ譜)
最後に
1986年といえば、横スクロールアクションゲームとしては既に『スーパーマリオブラザーズ』が大人気の頃で、『カルテット』は知る人もそれほど多くないとは思います。
ただ、そんなマイナーな『カルテット』に、30年近い時を経てこんな展開があるとは!ということで、元ネタを知る者の義務(!?)として執筆しました。
これがミドルエッジ世代と、若い人の架け橋となれば幸いです…